2013 年 75 巻 3 号 p. 224-226
96 歳,女性。約 7 年前に生じ徐々に増大した右鼠径部の皮膚結節を主訴に受診した。初診時,右鼠径部に 4.5×3.5 cm のゴム様硬,淡紅色の有茎性腫瘤がみられた。腫瘍の切除標本では真皮全層にわたり腫瘍胞巣がみられ,多くの部分では胞巣は基底細胞様の異型細胞からなり,最外層では細胞の柵状配列がみられ,周囲の間質との間に裂隙を形成していた。腫瘍胞巣の一部は明澄な細胞からなり,辺縁部では明瞭な基底膜に沿って柵状に配列しており,外毛根鞘下部に似ていた。以上の所見より有茎性の clear cell basal cell carcinoma と診断した。有茎性基底細胞癌は体幹に生じ色素を欠くことがあり,体幹の有茎性腫瘤をみた場合,基底細胞癌も念頭におく必要がある。