西日本皮膚科
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75 巻, 3 号
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図説
綜説
症例
  • 中村 友果, 根本 圭, 山口 道也, 一宮 誠, 武藤 正彦
    2013 年 75 巻 3 号 p. 200-203
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    75 歳,男性。初診 4ヵ月前より頭痛を自覚するようになり,1 ヵ月前には両側頭部から前額部にかけて圧痛を伴う索状皮下硬結が出現し,同時に開口時の下顎痛も自覚するようになった。CRP 9.30 mg/dl, 赤沈 87 mm/hr,血中 IL-6 20.0 pg/ml と高値であり,カラードプラ超音波検査で罹患側頭動脈の halo signを認めた。実際に右浅側頭動脈より生検を施行したところ,多核巨細胞を混じた肉芽腫性血管炎で,Elastica van Gieson 染色にて内弾性板の断裂を認め,側頭動脈炎と診断した。プレドニゾロン 40 mg/日の内服にて治療開始したところ,頭痛・下顎痛および皮下硬結は速やかに消失し,治療開始より 10 日目には CRP・赤沈値ともに正常域に復した。側頭動脈炎はステロイド治療に反応がよく,生命予後は比較的良好とされる。しかし眼症状を伴う場合は未治療で経過すると失明に至ることもあり,早期の診断・治療開始が望まれる。カラードプラ超音波検査法は,側頭動脈炎の診断に試みてよい有用な侵襲の少ない検査法であると考えられる。
  • 林 宏明, 牧野 英一, 北野 悦子, 畑中 道代, 北村 肇, 藤本 亘
    2013 年 75 巻 3 号 p. 204-207
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    69 歳,男性。2007 年 9 月,両手背,顔面に紅斑が出現し,生検を施行したところ全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus : 以下 SLE) が疑われ当科を受診した。抗核抗体 (ELISA) : 21.2(+), 抗 dsDNA 抗体陽性,抗 SS-A 抗体陽性,C3 は正常,C4 は 2.0 mg/dl 以下,CH50 は 10.0 U/ml以下と著明に低値であった。プレドニゾロン内服および遮光で加療し皮疹は軽快したが全経過を通じて C4 の著明な低値は持続していたことより,当初自験例は C4 欠損症を伴った SLE と考えた。しかし,さらなる溶血活性による補体の精査を施行したところ C4 のみではなく,古典的経路の補体成分である C1 および C2 活性の著明な低値も認めた。また,EDTA 血漿を用いて補体を測定したところ C4,CH50 ともに著明に低値のままであり cold activation 現象による補体の低下はみられなかった。これらの結果により自験例の C4 低値は遺伝的 C4 欠損症によるものではなく,免疫複合体による古典的経路の活性化のために C4 が著しく消費されたことによると考えた。
  • 原 真由, 新田 悠紀子, 秋山 真志
    2013 年 75 巻 3 号 p. 208-210
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    71 歳,男性。15 年前より関節リウマチ (RA) に罹患した。2007 年 5 月に左前腕に浮腫と淡紅色丘疹が出現し,近医で抗生剤投与により治癒した。11 月中旬より,再度同症状が出現し,抗生剤で治らないため,12 月中旬,当院を紹介され受診した。左前腕に限局性の浮腫と丘疹を認め,病理にてリンパ管拡張と膠原線維の変性,その周辺の好中球・組織球の浸潤,血管周囲の密なリンパ球と形質細胞の浸潤を認め,Rheumatoid neutrophilic dermatitis (RND) と診断した。プレドニゾロン 20 mg/日にて治癒した。本症例は,RA の関節炎悪化により,腫脹関節包が周囲を圧迫し,局所的循環障害によりリンパ浮腫が生じたものに RND が合併したものと推測した。限局性の浮腫に RND の皮疹が合併したものは,我々の調べ得た限り,報告が他になく,貴重な症例であると考えた。
  • 冬野 洋子, 竹下 弘道, 師井 洋一, 佐藤 恵実子, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 3 号 p. 211-214
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    29 歳,男性。初診 6 ヵ月前よりフットサルを始めた。1 ヵ月前より両前腕と両下腿に腫脹が出現し,近医受診後,精査加療目的に当科紹介受診した。初診時,手指,足趾を除く,両側の前腕,下腿に,対称性に疼痛を伴う浮腫と皮膚硬化を認め,四肢に軽度の関節痛を伴っていた。レイノー現象,爪上皮出血点は認めなかった。末梢血好酸球増多とアルドラーゼ上昇があり,MRI にて有痛部に一致して下腿筋群に異常信号を認めた。病理組織学的検査にて,真皮中層から下層にかけて膠原線維の膨化,増生を認め,真皮浅層~深層,脂肪織に軽度~中等度のリンパ球と好酸球の浸潤を認めた。総合的に判断し,好酸球性筋膜炎を疑った。プレドニゾロン 20 mg/日内服で治療開始し,軽快した。好酸球性筋膜炎による筋膜の線維化は,一度完成すると基本的に不可逆と考えられ,関節可動制限や,手・足根管症候群の併発の恐れがあるため,速やかな治療開始が望ましい。自験例では,早期の診断と治療開始が治療成功の要因であったと思われた。
  • 米倉 直美, 古場 慎一, 森 槙子, 北山 明日香, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2013 年 75 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    73 歳,女性。両手掌,体幹にそう痒を伴う皮疹が出現し,全身倦怠感,体重減少,食欲低下,下肢の脱力も伴った。皮膚筋炎の診断基準を満たし,ベタメサゾン 3 mg/日内服を開始したが症状の改善に乏しく,4-4diaminodiaphenylsulfone (以下DDS) 100 mg/日内服を追加した。その後,一旦症状は改善しステロイドおよび DDS を漸減したところ,手指および肘関節に疼痛を伴う皮膚潰瘍を形成し,病理組織学的所見では壊死性血管炎を認めた。プレドニゾロン 30 mg/日および DDS 100 mg/日にそれぞれ増量し,疼痛および潰瘍は改善した。約2 年後に同様の皮膚潰瘍が再発したが,ステロイドの投与量は変更することなく DDS の増量のみで潰瘍の症状は軽快した。皮膚筋炎に生じる皮膚潰瘍は外的刺激をうけやすい部位に好発し,皮膚潰瘍を併発する皮膚筋炎はステロイド治療抵抗性を示すことが多い。自験例では DDS を併用することで症状の改善がみられ,自験例のように疼痛の強い皮膚潰瘍を伴うステロイド治療抵抗性の皮膚筋炎には,DDS を併用することも治療選択肢の一つであると考えた。
  • 森 槙子, 古場 慎一, 久富 万智子, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2013 年 75 巻 3 号 p. 220-223
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は 73 歳,女性。10 年前より右第 3 指間に紅斑が出現し,次第に隆起し皮角を形成した。病変は外科的に切除したが,病理組織学的に verrucous carcinoma の所見を呈していた。Verrucous carcinoma は慢性の機械的刺激を受けやすい部位に好発し,口唇を含む口腔,外陰部,足蹠の順に多く発生する。足趾間に生じた verrucous carcinoma の報告は存在するが,解剖学的に類似する指間に生じた症例は本邦では自験例を除いて 1 例のみと稀であった。また,HPV 抗体を用いた免疫染色は陰性であり,病変の発症の誘因としては何らかの慢性刺激が考えられた。
  • 竹内 明子, 西島 千博, 川島 篤弘, 稲沖 真
    2013 年 75 巻 3 号 p. 224-226
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    96 歳,女性。約 7 年前に生じ徐々に増大した右鼠径部の皮膚結節を主訴に受診した。初診時,右鼠径部に 4.5×3.5 cm のゴム様硬,淡紅色の有茎性腫瘤がみられた。腫瘍の切除標本では真皮全層にわたり腫瘍胞巣がみられ,多くの部分では胞巣は基底細胞様の異型細胞からなり,最外層では細胞の柵状配列がみられ,周囲の間質との間に裂隙を形成していた。腫瘍胞巣の一部は明澄な細胞からなり,辺縁部では明瞭な基底膜に沿って柵状に配列しており,外毛根鞘下部に似ていた。以上の所見より有茎性の clear cell basal cell carcinoma と診断した。有茎性基底細胞癌は体幹に生じ色素を欠くことがあり,体幹の有茎性腫瘤をみた場合,基底細胞癌も念頭におく必要がある。
  • 小野 泰伸, 鈴木 良夫, 外川 八英, 永山 博敏
    2013 年 75 巻 3 号 p. 227-229
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    37 歳,男性。3 年前より陰茎の小指頭大灰黒色斑を自覚した。初診時,陰茎包皮に 11×6 mm の表面が軽度隆起した軟らかく触れる灰黒色斑を認めた。ダーモスコピーでは,病変全体において gray to brown homogeneous pigmentation, blue-white structures をベースとし,辺縁には small blue-gray globules がみられた。皮膚生検では,表皮内で異型角化細胞が全層を置換し,異型核分裂像を認めた。組織所見と臨床像より色素性 Bowen 病と診断した。一般に陰茎に生じた色素斑は表在拡大型黒色腫と鑑別困難であるが,自験例ではダーモスコピーで悪性黒色腫を示唆する atypical pigment network や irregular dots/globules などを認めず否定的であった。さらに,規則的な small blue-gray globulesを認めた点から,色素性 Bowen 病を念頭に置くべきと思われた。以上より,陰茎部の色素性 Bowen 病においてダーモスコピーが診断に役立つ可能性が示唆された。
研究
  • 高原 正和, 北 和代, 永江 航之介, 八谷 顕子, 日高 らん, 磯谷 智世, 土井 和子, 竹井 賢二郎, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 3 号 p. 230-233
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル 認証あり
    民間療法として livedo vasculopathy の治療に用いられるようになったビデンス・ピローサエキスは抗酸化作用を有することが知られている。本研究では,培養ヒト表皮細胞にビデンス・ピローサエキスを添加し検討した。ビデンス・ピローサエキスを添加すると,表皮細胞質内に存在していた aryl hydrocarbon receptor(AhR) は核内に移動した。加えて抗酸化転写因子である nuclear factor-erythroid 2-related factor-2(Nrf-2) ならびに抗酸化酵素であるNAD(P)H: quinone oxidoreductase 1(Nqo1) の発現が亢進された。これらの現象が,ビデンス・ピローサエキスの抗酸化機序の一端を担っていると考えた。
治療
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