西日本皮膚科
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治療
上皮成長因子受容体 (EGFR) 阻害薬における皮膚障害に関する皮膚生理学的変化と保湿剤の有用性の検討
中原 剛士師井 洋一高山 浩一中西 洋一古江 増隆
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2014 年 76 巻 3 号 p. 242-247

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抄録

近年,手術不能な非小細胞肺癌に対して上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬が使用されるようになり,その有用性が示されている。しかし,EGFR 阻害薬使用により皮膚障害が高頻度で発現し,患者の QOL 低下を来すことが知られている。一方,皮膚障害の出現が治療効果と相関するとの報告もあり,皮膚障害をコントロールしながら継続治療することが重要であるといえる。しかし,現在皮膚障害の病態はほとんどわかっていない。そこで今回我々は,非小細胞肺癌患者で EGFR 阻害薬を投与した 8 症例を対象に,皮膚障害のひとつである皮膚乾燥の程度を客観的に評価するため,他覚所見に加え角層水分量の変化を経時的に測定した。さらに,保湿剤塗布群と無塗布群に分け,皮膚乾燥に対する保湿剤の有用性を臨床試験で評価した。その結果,EGFR 阻害薬投与直後より,角層水分量は経時的に減少し,乾燥スコアは経時的に増加した。EGFR 阻害薬投与開始 2 週後に保湿剤塗布群と無塗布群に分けたところ,無塗布群では角層水分量は引き続き減少したが,塗布群においては減少しなかった。以上より,皮膚乾燥は EGFR 阻害薬投与直後から発現すること,そして保湿剤は乾燥症状の改善に有効であることが明らかになった。

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© 2014 日本皮膚科学会西部支部
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