2014 年 76 巻 4 号 p. 357-360
43 歳,女性。初診の 10 年前に左前額の褐色斑,1 年前に斑内の痂皮を自覚し,近医で生検を受け基底細胞癌 (BCC) と診断された。左前額に10 ×15 mm の境界不明瞭な青黒色斑を認め,耳前部,頚部リンパ節は触知しなかった。斑より 5 mm 離し筋膜上で切除,全層植皮を行った。組織学的に微小結節型 (micronodular pattern) で,脈管,神経浸潤はなかったが切除断端頭側に残存が疑われた。1 年 4 カ月後に再発したため,拡大切除,全層植皮を行った。組織学的に辺縁,底面に腫瘍の残存はなかった。その後 1 年 3 カ月で再発,転移はなかったが以後未受診で,2 回目術後 6 年目に左頰部腫瘍で再診した。左耳下腺部に 40 × 45 mm で弾性硬の皮下腫瘍を認め,生検で BCC 転移と診断した。腫瘍を咬筋,下顎骨膜,耳下腺と一塊に切除したが,組織学的に顎関節周囲に腫瘍残存が疑われ放射線治療を追加した。組織学的に micronodular pattern は infiltrative subtype に分類される aggressive BCC で,高再発率で予後不良とされる。BCC においても予後不良因子を含む症例では,再発のみならず転移も念頭において経過観察する必要があると考え,教訓的症例として報告する。