西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
76 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
図説
綜説
症例
  • 松木 真吾, 草竹 兼司, 林 忍, 石川 典由, 森田 栄伸
    2014 年 76 巻 4 号 p. 317-323
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    80 歳,女性。初診の約 2 年前,排尿障害を主訴に泌尿器科開業医を受診。陰唇の部分的癒着を認め,近くの総合病院皮膚科を紹介された。癒着部位の生検で組織学的に液状変性を認めた。ステロイドの外用を 2 年間続けたが改善がなく癒着も高度になったため,精査加療目的に当科紹介となった。初診時陰唇は完全に癒着しピンホール大の小孔が開いている状態であり,陰唇癒着症と診断した。治療は単純外陰切除術を施行した。陰唇癒着症はこれまで不潔・感染・炎症によるびらんから 2 次的に癒着する疾患と考えられてきた。自験例の初回生検結果から,陰唇癒着症に苔癬化反応が関与する可能性が示唆された。これまでの報告例をまとめ,組織学的検討と考察を加えて報告する。
  • 北 和代, 武下 泰三, 松石 英城, 古江 増隆
    2014 年 76 巻 4 号 p. 324-329
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    16 歳,男性。双極性感情障害に対し近医精神科通院中に希死念慮が強まったためラモトリギンを追加された。内服開始 2 週間後に皮疹が出現したため内服は中止され,バルプロ酸ナトリウムを開始された。 開始 5 日後には皮疹が増強し顔面に浮腫が出現した。11 病日に当科に紹介され,13 病日より入院治療を開始した。プレドニゾロン 30 mg/day の内服を開始するも改善なく,16 病日にプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム 60 mg/day の点滴へ増量した。しかし 39~40℃の発熱が持続し,22 病日には体表面積 20~30%のびらんを生じ中毒性表皮壊死症様の臨床像を呈した。ステロイドパルス療法,血漿交換,免疫グロブリン療法を施行し,また血液培養よりブドウ球菌,緑膿菌が検出されたため菌血症,敗血症に対し適宜抗生剤の投与を行った。炎症所見は改善したものの発熱は持続し 41 病日には好中球の著明な減少が出現した。血球貪食症候群 (HPS) の鑑別のため骨髄穿刺を施行したところ網内系の活性化,高度の血球貪食所見を認め,HPS と診断した。HPS は重傷感染症に類似した所見をとり,治療が遅れれば死に至る重篤な疾患である。薬剤性過敏症症候群の経過中に重症感染症様の臨床像を呈した際は HPS の鑑別を要すると考える。
  • 前田 学, 守屋 智枝 , 高橋 智子, 脇田 賢治
    2014 年 76 巻 4 号 p. 330-334
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    65 歳,男性 (無職) 。ツーバイフォー築 10~11 年の居間床中央に 2013 年 6 月初旬から 3 カ月用カートリッジ交換後の電池式殺虫剤 (ピレスロイド系) を必要時に作動させた。同月下旬昼,腋窩に浮腫性紅斑が出現し,翌日未明,身体痛,1 分間意識消失,下痢・脱糞のため,翌朝 3 時,当院救急部に搬送された。 各種検査で異常がなかったため,一時帰宅した。同室で朝 6 時過ぎに同様の意識消失が出現し,7 時過ぎに再度救急部に搬送・入院した。同日 16 時,皮膚科診察時,全身に蕁麻疹様紅斑が出現し,手足の冷感と著明なチアノーゼと共に 3 回目の発作 (収縮期血圧 95 mmHg) が出現した。皮疹は初診の翌日に寛解し,救急搬送時からの肝機能異常は著明に改善したが,CRP は一時的に 4.76 mg/dl 上昇後,入院 4 日で検査値もほぼ正常化し,退院した。ピレスロイド剤は,中毒症状出現時,軽症では全身倦怠感や筋攣縮,運動失調,中等度症では興奮,手足の振戦,唾液分泌過多,重症では間代性痙攣,呼吸困難,失禁の出現が報告されているので,今回の発作はてんかんや食物アレルギーおよび末梢循環不全や冷え性の既往なく,各種検査でも直接的な原因の見当らないことより,密閉した居間で使用した電池式殺虫剤による中毒を疑った。
  • 田中 摩弥, 下田 雅子, 古江 増隆
    2014 年 76 巻 4 号 p. 335-339
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    74 歳,女性。糖尿病,高血圧による慢性心不全,末梢動脈疾患を有しており,脳梗塞,静脈うっ滞性下腿潰瘍の既往がある。日常生活はほぼ車椅子上で下肢下垂の状態で過ごしている。左足趾および足背に皮膚潰瘍を認め,末梢動脈疾患に対する治療と局所処置にて治癒したが再発を繰り返し,同様の所見で 3 回入院治療を行った。入院中は食事時間のみ車椅子座位とし良好な経過であったため,第 3 回目の退院後,仰臥位・下肢挙上を指示し徹底したところ再発を認めなかった。肢位の工夫が重要と考えられた症例であった。
  • 片野 あずさ, 屋宜 宣武, 宮里 肇
    2014 年 76 巻 4 号 p. 340-344
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    72 歳,男性。1999 年から糖尿病性腎不全で維持透析中であり,2007 年 5 月の大動脈弁置換術後よりワルファリンを内服していた。2008 年 11 月より左下腿に疼痛を伴う潰瘍が出現し,半年かけて瘢痕治癒したが,両下腿に潰瘍が再燃し拡大した。2009 年 11 月に潰瘍部の皮膚病理検査を行い,真皮全層に多数の好中球の浸潤を伴う壊死と深部血管周囲や脂肪織の軽度の石灰沈着を認めた。壊疽性膿皮症を疑いステロイド剤の内服を開始したが潰瘍は急速に増大し,シクロスポリン,ジフェニルスルホンを追加投与するも無効であった。3 カ 月後に再度行った皮膚生検では,皮下の血管周囲のみならず真皮や脂肪織内での広範な石灰沈着が存在し,画像検査でも全身の小動脈の石灰化による高度狭窄と閉塞所見を確認した。最終的に calciphylaxis と診断した。ステロイド剤,免疫抑制剤,ワルファリンの内服を中止し,高リン血症への対応を行った。潰瘍に対しては外用療法とデブリードマンを継続するも紫斑や皮膚の壊死は拡大し体幹にも及び,患者は 2010 年 3 月に敗血症のため死亡した。本邦では 2009 年度から厚生労働省難治性疾患克服研究事業の一環として calciphylaxis の全国調査が行われ,その疾患認知度の低さが明らかとなった。 本症は稀な疾患ではあるが致死率が極めて高いため,疾患を周知させ,早期の診断・治療開始と予後の改善に努めていく必要がある。
  • 面高 俊和, 宇原 久, 内山 龍平, 佐野 佑, 久保 仁美, 石井 文人, 橋本 隆, 奥山 隆平
    2014 年 76 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    66 歳,男性。初診 3 年前より咽頭痛と鼻出血が認められた。その後,口腔内,眼瞼結膜,陰部,食道粘膜にびらんが出現した。病理組織像では表皮真皮境界部に裂隙を認め,真皮浅層から中層にリンパ球と形質細胞が主体で,一部に好中球を混じた細胞浸潤を認めた。蛍光抗体直接法では表皮基底膜部に C3,IgG,IgA の線状の沈着を認めた。蛍光抗体間接法では IgA 抗基底膜部抗体が陽性であった。ELISA 法では抗デスモグレイン (Dsg) 1 抗体,抗 Dsg3 抗体,抗 BP180 抗体-NC16a 部位抗体は全て陰性であった。 BP180 の C 末端部のリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法で IgG が陽性であった。BP180-NC16a 部位のリコンビナント蛋白や,HaCaT 細胞培養上清,真皮抽出液,精製ラミニン 332 を用いた免疫ブロット法はすべて陰性であった。以上の所見より,抗 BP180 型粘膜類天疱瘡と診断した。プレドニゾロン 25mg/日とアザチオプリン 100 mg/日の内服で治療を開始し,プレドニゾロンを 60 mg/日まで増量した。しかし効果が乏しいためステロイドパルス療法を施行したところ,症状は徐々に改善した。抗 BP180 型粘膜類天疱瘡は通常,病変が口腔内に限局し,ステロイドの内服で軽快する症例が多い。本症例は口腔以外にも広範囲に粘膜病変を認め,治療にステロイドパルス療法を要した症例であった。
  • 増田 香奈, 宮脇 さおり, 花川 靖, 白方 裕司 , 村上 信司, 佐山 浩二, 南 満芳
    2014 年 76 巻 4 号 p. 349-352
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    45 歳,男性。左頰部に瘙痒を伴う紅斑が出現し,近医で尋常性乾癬との診断でステロイド外用加療されるも難治のため前医を受診した。シクロスポリン,エトレチナート,プレドニゾロン内服などで加療されるも皮疹改善しないため,抗 TNF-α 製剤投与目的で当科を紹介され受診した。当院初診時,体幹四肢に著明な角化性紅色局面,掌蹠に著明な角化を伴う紅斑を認めた。前医からのシクロスポリン,エトレチナートを中止し,infliximab を単独で 3 回投与したが効果は無く,島嶼状に正常皮膚を残して紅皮症化した。肩の紅斑の病理組織像では不全角化と正常角化の交互配列および,棘融解性水疱を認め,臨床経過と病理組織像より毛孔性紅色粃糠疹と診断した。最終的に再度エトレチナート 50 mg/day の内服をしたことで皮疹は軽快した。毛孔性紅色粃糠疹は尋常性乾癬の類縁疾患であることから近年,治療薬として抗 TNF-α 製剤が使用され,中でも infliximab の有効例の報告が散見されるようになった。しかしながら本症例のように,過去の報告において無効例も存在する。効果の有無に関与する要因などはいまだ明らかでなく,今後の症例の蓄積が待たれる。
  • 大久保 優子, 内海 大介, 苅谷 嘉之, 林 健太郎, 粟沢 剛, 眞鳥 繁隆, 高橋 健造, 上里 博
    2014 年 76 巻 4 号 p. 353-356
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    61 歳,男性。26 歳時に筋緊張性ジストロフィーを発症した。4 人の同胞が同症と診断されている。初診 2 年前に他院で頭部毛母腫を切除した後,頭部の別部位に新たに結節が出現し徐々に増大した。初診時,左後頭部に 45 × 45 × 10 mm の表面に潰瘍形成を伴う有茎性腫瘤を認めた。有棘細胞癌を疑い生検を行ったが,病理組織像から良性の毛母腫と診断された。CT 画像検査では頭蓋骨の溶骨性変化や明らかなリンパ節腫大はなかった。腫瘍を全切除し切除腫瘍全体に悪性所見がないことを確認した後に,皮弁形成術により閉創した。筋緊張性ジストロフィー患者はしばしば毛母腫を合併し,その多くが多発性であり比較的大きいなど通常の毛母腫とは異なる臨床症状を示す。自験例は外観から有棘細胞癌が疑われるなど,通常の毛母腫の典型像とは異なる臨床像を呈した症例であったので報告した。
  • 中岡 啓喜, 寶道 麻由, 森 秀樹, 戸澤 麻美
    2014 年 76 巻 4 号 p. 357-360
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    43 歳,女性。初診の 10 年前に左前額の褐色斑,1 年前に斑内の痂皮を自覚し,近医で生検を受け基底細胞癌 (BCC) と診断された。左前額に10 ×15 mm の境界不明瞭な青黒色斑を認め,耳前部,頚部リンパ節は触知しなかった。斑より 5 mm 離し筋膜上で切除,全層植皮を行った。組織学的に微小結節型 (micronodular pattern) で,脈管,神経浸潤はなかったが切除断端頭側に残存が疑われた。1 年 4 カ月後に再発したため,拡大切除,全層植皮を行った。組織学的に辺縁,底面に腫瘍の残存はなかった。その後 1 年 3 カ月で再発,転移はなかったが以後未受診で,2 回目術後 6 年目に左頰部腫瘍で再診した。左耳下腺部に 40 × 45 mm で弾性硬の皮下腫瘍を認め,生検で BCC 転移と診断した。腫瘍を咬筋,下顎骨膜,耳下腺と一塊に切除したが,組織学的に顎関節周囲に腫瘍残存が疑われ放射線治療を追加した。組織学的に micronodular pattern は infiltrative subtype に分類される aggressive BCC で,高再発率で予後不良とされる。BCC においても予後不良因子を含む症例では,再発のみならず転移も念頭において経過観察する必要があると考え,教訓的症例として報告する。
研究
  • 中園 亜矢子, 増田 禎一, 松尾 美希, 古江 増隆, 吉家 弘
    2014 年 76 巻 4 号 p. 361-365
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    苺状血管腫に対する早期レーザー治療を積極的に勧めるべきかどうかについてはいまだ議論があるところである。我々は生後 3 カ月以内にロングパルス色素レーザー治療を行った 31 例,計 36 カ所の苺状血管腫について検討した。臨床分類は皮下病変の有無で superficial type と mixed type の 2 群に分類し,治療回数,治療期間,治療効果,合併症等について検討した。治療回数は superficial type では 1~18 回 (平均 6.6 回),mixed type では 7~25 回 (平均 15 回),治療期間は superficial type では 0~18 カ月 (平均 5.2 カ月),mixed type では 7~37 カ月 (平均 20.3 カ月) であり,mixed type は superficial type と比較して有意に治療回数が多く,長い治療期間を要した。治療効果は完全消退 44%,わずかな残存 44%,明らかな残存 11%であった。Superficial type では紅色調,表面のしわ,隆起の改善効果が認められたが,mixed type では隆起の改善効果には限界があると考えられた。合併症は色素沈着が 22%,色素脱失が 6%に認められた。感染,出血,潰瘍形成,皮膚萎縮,瘢痕形成は認められなかった。苺状血管腫に対する生後 3 カ月以内のロングパルス色素レーザー治療は腫瘍の消退を促進し,苺状血管腫に伴う合併症を抑制する効果があると考えられた。
講座
治療
  • 森田 栄伸, 高橋 仁, 金子 栄, 千貫 祐子, 東儀 君子, 髙垣 謙二, 辻野 佳雄, 三原 祐子, 石飛 朋子, 福代 新治, ...
    2014 年 76 巻 4 号 p. 372-380
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2014/10/09
    ジャーナル 認証あり
    島根県下 5 医療施設を受診した慢性蕁麻疹患者のうち,フェキソフェナジン塩酸塩の通常量 (120 mg/day) の服用にて効果不十分であった 24 例の患者を対象に,フェキソフェナジン塩酸塩の増量 (240 mg/day) 群 (フェキソフェナジン増量群 :12 例) あるいはオロパタジン塩酸塩の通常量 (10 mg/day) への変更群 (オロパタジン変更群 :12 例) の 2 群に無作為に割付,その後 4 週間の臨床症状を蕁麻疹重症度スコア,蕁麻疹活動性スコア (Urticaria Activity Score : UAS) により解析した。蕁麻疹重症度スコアは,フェキソフェナジン増量群では最終評価時に有意なスコア低下を認め,オロパタジン変更群では割付 4週後および最終評価時に有意な低下を認めた。UAS は,フェキソフェナジン増量群で 0~1 週,2~3 週,3~4 週,最終評価時において有意な低下を認め,オロパタジン変更群で 1~2 週においてのみ有意な低下を認めた。以上の結果からフェキソフェナジン通常量投与で効果不十分な慢性蕁麻疹に対してフェキソフェナジン倍量の増量投与は症状の改善に有効であり,さらにオロパタジン通常量への変更も効果はやや劣るものの有効であると結論した。フェキソフェナジンの倍量投与に要する費用の観点からは,抗ヒスタミン作用の高いオロパタジンへの変更も選択肢となり得ることが示唆される。
世界の皮膚科学者
feedback
Top