抄録
菌状息肉症(mycosis fungoides : MF)には,限局性病変を示す pagetoid reticulosis(PR)という亜型がある。さらに pagetoid reticulosis(PR)には,過去に播種型 pagetoid reticulosis(disseminated PR : DPR)という細分類があった。2008 年の WHO 分類第 4 版では,MF の亜型として PR は残ったが DPR は除外された。現在 DPR は,古典的 MF もしくは他のリンパ腫(aggressive epidermotropic CD8 positive cytotoxic T-cell lymphoma,γδ-T cell lymphoma,extranodal NK/T cell lymphoma,nasal type)に帰属すると成書に記載がある。今回我々は,病理組織学的に MF に類似した組織像であったが,多発限局性の病変を呈し,peripheral T-cell lymphoma,not otherwise specified(PTCL-NOS)と診断した 1 例を経験した。42 歳,男性,初診の 8 カ月前より左腋窩,右膝窩に限局した自覚症状のない皮疹が出現し徐々に拡大した。初診時,左腋窩,右下肢,臀部右側に限局して不整形な浸潤性褐色斑がみられ,左腋窩および右鼠径部に腫大するリンパ節を触知した。左腋窩病変部位,ならびに所属リンパ節より採取した病理組織像は,核異型を伴うリンパ球様単核球が表皮内,および真皮,付属器に強く浸潤し MF 様であった。しかしながら臨床像が限局多発性病変を示し,古典的 MF と異なっていた。成書に記載がある他のリンパ腫も否定し,最終的に PTCL-NOS と診断した。自験例は MF との類似点が多く,過去の限局多発性病変を示す DPR の報告を参考に診断ならびに臨床学的特徴について考察を行い,報告した。