西日本皮膚科
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症例
慢性放射線性潰瘍から致死的な動脈性出血を来した 1 例
中村 優佑生野 知子石川 一志甲斐 宜貴島田 浩光上原 幸佐藤 精一清水 史明高田 彰子島田 隆一清末 一路波多野 豊藤原 作平
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2015 年 77 巻 4 号 p. 354-358

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抄録

91 歳,女性。23 歳時に長崎で被爆。43 歳時に左乳癌を発症し,手術および放射線治療を受けた。56 歳頃より左前胸部に放射線皮膚炎を発症し,その後,左前胸部瘢痕からの出血を認め,2003 年 10 月から慢性放射線性潰瘍の診断で当科にて加療を開始された。定期的経過観察中に数度潰瘍からの出血を認めた。 2013年 6 月中旬に自宅にて出血を認めたため,翌日当科を受診した。来院時に動脈性出血あり,貧血の進行を認めたため緊急入院となった。CT と transcatheter arterial embolization(以下 TAE)にて潰瘍直下の仮性動脈瘤からの出血と診断した。患者は外科的加療を希望しなかったため,TAE 施行後は圧迫止血と輸血療法にて適宜対応した。入退院を繰り返し,長期療養目的で転院となったが,転院先で潰瘍部からの大量出血により永眠された。本例のような外科的治療が困難な症例では微量出血の段階で血管造影を行い,動脈性出血等の重篤な合併症を未然に防止することで侵襲のより少ない根治的治療へと導いていく必要性があると考えた。また,外科的および保存的標準治療で創傷治癒が困難な症例には,低エネルギーレーザー照射および EGF(epidermal growth factor)のような非標準的治療も将来選択肢の一つとして考慮しうると考えた。

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© 2015 日本皮膚科学会西部支部
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