西日本皮膚科
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77 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
図説
綜説
症例
  • 和田 尚子, 前原 恵里子, 大野 文嵩, 高松 紘子, 原田 佳代, 占部 和敬
    2015 年 77 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    45 歳,男性。10 代の頃より顔面痤瘡,左膝関節痛,胸鎖関節痛,左足関節痛が認められていた。また,健診の際には炎症反応を指摘されていた。1カ月前より両上肢,手背に有痛性紅斑が出現し,当院を受診した。初診時,右手背に浸潤性紅斑,顔面痤瘡,左足関節の発赤,腫脹が認められ,右手背の浸潤性紅斑より生検を施行した。病理組織所見では真皮全層に密な好中球浸潤が認められた。ステロイド内服治療が奏効し Sweet 病と診断した。また,顔面痤瘡があり,関節痛を繰り返していたことより SAPHO 症候群の可能性が考えられた。骨シンチグラフィーを施行し,胸鎖関節,第 2~3 腰椎に集積亢進が認められ SAPHO 症候群と診断した。SAPHO 症候群に Sweet 病を合併した症例はこれまでに数例の報告がある。 両者の発症機序や関連性ははっきりとわかっていないが,好中球を介する機序が関与するのではないかと考えた。
  • 河野 美己, 執行 あかり, 豊田 美都, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 4 号 p. 349-353
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    54 歳,女性。2010年夏頃より右上眼瞼の腫脹が持続するため,眼科を受診したが異常なく,2011 年4 月に当科に紹介された。右上眼瞼にゴム様硬の腫脹があり,瘙痒や疼痛はなく,また両頰から下顎にかけてび漫性紅斑が認められた。右上眼瞼の病理組織所見では,真皮から皮下組織にかけて非乾酪性肉芽腫が多数認められ,リンパ管拡張とその内腔に組織球の集簇を伴っていたことから,intralymphatic histiocytosis を伴う肉芽腫性眼瞼炎と診断した。トラニラスト,ミノサイクリン,ロキシスロマイシン内服で発赤は改善したが,右上眼瞼腫脹が持続していたため,トリアムシノロンアセトニドの局注を行ったところ症状は軽快した。これまで肉芽腫性眼瞼炎において intralymphatic histiocytosis が認められた報告は本邦ではなく,まれであると考えた。
  • 中村 優佑, 生野 知子, 石川 一志, 甲斐 宜貴, 島田 浩光, 上原 幸, 佐藤 精一, 清水 史明, 高田 彰子, 島田 隆一, 清 ...
    2015 年 77 巻 4 号 p. 354-358
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    91 歳,女性。23 歳時に長崎で被爆。43 歳時に左乳癌を発症し,手術および放射線治療を受けた。56 歳頃より左前胸部に放射線皮膚炎を発症し,その後,左前胸部瘢痕からの出血を認め,2003 年 10 月から慢性放射線性潰瘍の診断で当科にて加療を開始された。定期的経過観察中に数度潰瘍からの出血を認めた。 2013年 6 月中旬に自宅にて出血を認めたため,翌日当科を受診した。来院時に動脈性出血あり,貧血の進行を認めたため緊急入院となった。CT と transcatheter arterial embolization(以下 TAE)にて潰瘍直下の仮性動脈瘤からの出血と診断した。患者は外科的加療を希望しなかったため,TAE 施行後は圧迫止血と輸血療法にて適宜対応した。入退院を繰り返し,長期療養目的で転院となったが,転院先で潰瘍部からの大量出血により永眠された。本例のような外科的治療が困難な症例では微量出血の段階で血管造影を行い,動脈性出血等の重篤な合併症を未然に防止することで侵襲のより少ない根治的治療へと導いていく必要性があると考えた。また,外科的および保存的標準治療で創傷治癒が困難な症例には,低エネルギーレーザー照射および EGF(epidermal growth factor)のような非標準的治療も将来選択肢の一つとして考慮しうると考えた。
  • 米須 麻美, 新城 憲
    2015 年 77 巻 4 号 p. 359-363
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は 7 歳,女児。生下時から右側頭部に境界明瞭な 20×15 mm の卵円形の脱毛斑を認め,軟毛が生えていた。病理組織学的所見は毛包数の減少があり,毛包と脂腺の形成は未熟であった。ダーモスコピー所見では折れ毛・黒点・漸減毛はみられなかった。以上のことから側頭部三角形脱毛症(temporal triangular alopecia : TTA)と診断した。治療は局麻下で病変部を切除し,菱形皮弁により縫合した。本邦における 1979 年から 2014 年までに報告された側頭部三角形脱毛症 21 症例の集計では,性差はなく,7 割の症例で生下時あるいは生後間まもなく脱毛斑に気づいており,成人例はなかった。約半数の症例が三角形を呈しているが,楕円形や円形を示す症例も半数を占めた。脱毛斑部の毛髪の性状は記載のない 1 例を除き,本症例を含めすべての症例に軟毛がみられ,TTA の最も重要な臨床的特徴であり,診断的価値のある所見であった。
  • 堤 碧, 三苫 千景, 伊東 孝通, 加来 裕美子, 伊藤 さおり, 中原 真希子, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 4 号 p. 364-369
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    症例 1 は 49 歳の男性。重度の起立性低血圧と慢性下痢が持続し,半年間で 23 kg の体重減少を認め,徐々に心不全,多発ニューロパチーの症状が出現した。内視鏡下生検にて胃・十二指腸と回腸・盲腸・大腸にアミロイド蛋白が沈着しており,全身精査にてリンパ形質細胞性リンパ腫と診断された。病理組織学的に,肩の紅色丘疹と腹部の無疹部の真皮乳頭層,真皮内の神経,皮下組織の血管周囲にアミロイド蛋白の沈着を認めた。免疫染色では,免疫グロブリン軽鎖が陽性で,免疫細胞性アミロイドーシスと診断した。症例 2 は 77 歳の女性。40 歳頃関節リウマチを発症した。61 歳時に腎不全と診断され,同時期に施行された上部消化管内視鏡下生検にて十二指腸組織にアミロイド蛋白の沈着を認めた。その 12 年後に血液透析療法が導入された。初診時に認めた前胸部の紅斑は,病理組織学的に,真皮内の汗腺周囲にアミロイド蛋白の沈着を認め,免疫染色ではアミロイド A と β2 ミクログロブリンが陽性だった。以上より反応性AA アミロイドーシスと透析アミロイドーシスの合併と考えた。全身性アミロイドーシスでは,全身のあらゆる皮膚にアミロイド沈着を認めることがあるため,他臓器と比べて侵襲性の低い皮膚生検を積極的に行うべきであると考えられた。
  • ―― 巨大なケラトアカントーマの特殊型に関する検討――
    橋本 安希, 三砂 範幸, 永瀬 浩太郎, 鶴田 紀子, 古場 慎一, 成澤 寛
    2015 年 77 巻 4 号 p. 370-373
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は 87 歳,男性。初診の約 4 カ月前に頭頂部に結節が出現し,中心治癒傾向を示しながら徐々に外方性に増大してきた。初診時,頭頂部に,周堤を有し中央に白色の巨大な角栓をいれる径 8 cm の低ドーム状の紅色腫瘤性病変を認めた。その後,腫瘍中央部の角栓は自然脱落した。病理組織学的に,腫瘍辺縁の堤防状に隆起した部分では,淡い好酸性で大型のすりガラス状の細胞質を有する腫瘍細胞の増殖と高度の炎症細胞浸潤を認めた。一方,病変の中央部では萎縮した表皮と真皮の線維化を認め,腫瘍辺縁でみられた腫瘍細胞や著明な炎症細胞浸潤はみられなかった。以上の臨床病理所見から,自験例を keratoacanthoma(KA)の特殊型である keratoacanthoma centrifugum merginatum(KCM)と診断した。巨大であるという特徴を有する KA には,KCM の他に,giant KA と multinodular KA が存在するが,三者の相違点について議論した。
  • 冨田 笑津子, 加藤 陽一 , 藤原 高, 鳥居 行雄
    2015 年 77 巻 4 号 p. 374-377
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    83 歳,男性。リウマチ性多発筋痛症にてプレドニゾロン 10 mg/日を内服している。当科初診の 4 カ月前には起炎菌不明の肺炎にて当院呼吸器内科に入院,また 2 カ月前には右下腿蜂窩織炎にて他院に入院していた。1 週間前より右下腿が腫脹し当科を受診した。採血にて炎症反応の上昇がみられ,蜂窩織炎を考えセファゾリンを投与したが悪化を認め,CT を撮影したところ右下腿に多数の皮下・筋膿瘍を認めた。 穿刺液のグラム染色から放射状のグラム陽性桿菌を認め,培養から Nocardia を検出した。右下腿の切開排膿術を行い,ST 合剤の内服へ変更したところ,臨床症状・検査所見ともに改善を得た。免疫不全患者に皮下膿瘍が生じた場合,ノカルジア症も念頭に置く必要があると考えられた。
  • 大平 葵, 山口 さやか, 大久保 優子, 佐久川 裕行, 高橋 健造, 上里 博
    2015 年 77 巻 4 号 p. 378-384
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は 82 歳,女性。初診 8 カ月前より右前腕に紅斑が出現した。近医にてステロイド剤による外用療法を受けていたが,皮疹は拡大し小潰瘍も生じた。病理組織学的所見は真皮から脂肪織にかけて好中球,リンパ球,組織球を主とする高度な炎症細胞浸潤を認め,多数の多核巨細胞も混在し膿瘍と肉芽腫像を示した。巨細胞内に PAS 染色陽性の桑実状・車軸状の胞子囊を認めた。皮膚組織片の培養では黄白色クリーム状の酵母様集落が形成され,ラクトフェノールコットンブルー染色では内部に車軸状の内生胞子を含む胞子囊が確認できた。分離株の糖利用試験と,プロトテカの 18S rRNA 領域のプライマーによる PCR でも,増幅された DNA 断片の塩基配列は Prototheca wickerhamii に一致した。以上の臨床症状および検査所見より本症例を Prototheca wickerhamii による皮膚・皮下型のプロトテコーシスと診断した。 イトラコナゾールの内服治療後約 8 カ月で紅斑は色素沈着を残して消失し,皮膚生検で病原菌培養,PCR 検査ともに陰性を確認して治癒と判断した。1983 年から 2014 年までの本邦におけるプロトテコーシスは 42 症例,皮膚・皮下型プロトテコーシスとしては本症例を含め 35 例が報告されている。本症例は皮膚・皮下型プロトテコーシスの典型的症例であり,ステロイド外用が症状を増悪させた一因と考えた。
講座
治療
  • エステル外用配合薬の第Ⅲ相臨床試験
    中川 秀己, 河井 雅彦, 伊藤 嘉奈子
    2015 年 77 巻 4 号 p. 390-398
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル 認証あり
    マキサカルシトールとベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルを配合成分とする外用軟膏剤(以下,外用配合薬)の 4 週間投与時の尋常性乾癬に対する有効性および安全性の評価を目的に,外用配合薬,マキサカルシトール軟膏(以下,MCT 軟膏)およびベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏(以下,BBP 軟膏)を対照としたランダム化,二重盲検,並行群間比較,多施設共同試験を実施した。 有効性の主要評価項目は 4 週後の評価皮疹の PSI(Psoriasis Severity Index)合計スコア,副次評価項目は 4 週後の mPASI(modified PASI)減少率とし,その他,各皮膚所見(紅斑,浸潤/肥厚,鱗屑)の PSI スコア,IGA(Investigator's Global Assessment)および DLQI(Dermatology Life Quality Index)を評価した。 安全性は,有害事象および臨床検査値で評価した。有効性では,MCT 軟膏および BBP 軟膏に対する外用配合薬の優越性が認められ,外用配合薬の DLQI は,MCT 軟膏および BBP 軟膏と比較して大きく改善した。さらに,外用配合薬の有害事象の発現割合および内容は,MCT 軟膏および BBP 軟膏と同程度であった。以上より,マキサカルシトールとベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルの外用配合薬の 1 日 1 回投与は,尋常性乾癬に対する有用な治療として期待できる。
  • 中原 剛士, 師井 洋一, 高山 浩一, 中西 洋一, 古江 増隆
    2015 年 77 巻 4 号 p. 399-405
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/11/25
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    近年,手術不能な非小細胞肺癌に対して上皮成長因子受容体(GFR) 阻害薬がひろく使用されるようになり,その有用性が示されている。EGFR 阻害薬は高頻度で皮膚障害を引き起こし,患者の QOL 低下を来すことが知られている。一方,皮膚障害の出現が治療効果と相関するとの報告もあり,皮膚障害をコントロールすることは治療継続に重要である。EGFR 阻害薬による皮膚障害の病態は,少しずつ明らかにされつつあるが,未だ不明な点も多い。そこで今回我々は,EGFR 阻害薬を投与した非小細胞肺癌の 8 症例を対象に,顔面,体幹および上腕のそれぞれの部位における角層水分量と皮膚乾燥,痤瘡様皮疹の発現を経時的に評価した。また,投与 2 週目より保湿剤塗布群と無塗布群に無作為割り付けし,保湿剤の効果についても検討した。角層水分量は,顔面では投与 3日目以降,体幹・上腕では投与 4 週目以降で有意に低下し,部位により低下が始まる時期が著しく異なっていた。保湿剤塗布後の体幹・上腕の角層水分量,上腕の乾燥スコアでは群間で有意差が認められたが,顔面では認められなかった。このため,角層水分量の低下前から保湿剤を塗布することが皮膚乾燥の軽減により効果的であると考えられた。また,角層水分量の変化と痤瘡様皮疹の発現には関連がみられず,皮膚乾燥と痤瘡様皮疹は異なる機序で出現することが示唆された。
世界の皮膚科学者
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