2015 年 77 巻 4 号 p. 370-373
症例は 87 歳,男性。初診の約 4 カ月前に頭頂部に結節が出現し,中心治癒傾向を示しながら徐々に外方性に増大してきた。初診時,頭頂部に,周堤を有し中央に白色の巨大な角栓をいれる径 8 cm の低ドーム状の紅色腫瘤性病変を認めた。その後,腫瘍中央部の角栓は自然脱落した。病理組織学的に,腫瘍辺縁の堤防状に隆起した部分では,淡い好酸性で大型のすりガラス状の細胞質を有する腫瘍細胞の増殖と高度の炎症細胞浸潤を認めた。一方,病変の中央部では萎縮した表皮と真皮の線維化を認め,腫瘍辺縁でみられた腫瘍細胞や著明な炎症細胞浸潤はみられなかった。以上の臨床病理所見から,自験例を keratoacanthoma(KA)の特殊型である keratoacanthoma centrifugum merginatum(KCM)と診断した。巨大であるという特徴を有する KA には,KCM の他に,giant KA と multinodular KA が存在するが,三者の相違点について議論した。