西日本皮膚科
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症例
下肢の血栓性静脈炎を主病変とした Buerger 病の 1 例
木村 裕美永瀬 浩太郎井上 卓也三砂 範幸成澤 寛
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2017 年 79 巻 2 号 p. 128-131

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抄録

37歳,男性。初診の約 1 年前より左足背に疼痛を伴う索状硬結が出現し,2 カ月ほどの経過で出現と消退を繰り返した。病理組織学的には皮下組織内に結合組織性に壁が肥厚し内腔の閉塞した静脈を認め,臨床経過とあわせ遊走性血栓性静脈炎と診断した。その後も類似した病変を繰り返し形成し,安静時にも疼痛を伴うようになり,足趾に冷感,Raynaud 現象も出現した。下肢の造影 CT 検査にて四肢末梢主幹動脈の多発性分節的閉塞を認めたことから,最終的に Buerger 病と診断し,本症例の索状硬結は Buerger 病に併発する遊走性血栓性静脈炎と考えた。遊走性血栓性静脈炎は Buerger 病の 2~4 割にみられ,しばしば先行することがある。Buerger 病は四肢の中小動脈を侵す閉塞性疾患と定義されており,静脈炎の臨床像や病理組織像のみから同疾患を想定することは困難な場合がある。遊走性血栓性静脈炎を生じる基礎疾患として,Mondor 病のように自然消退が期待できる疾患もあるが,Buerger 病は禁煙や寒冷刺激の回避,内服加療,場合によっては血管外科との連携が必要であり,治療の開始時期が遅れることで四肢切断に至る危険性がある。そのため,遊走性血栓性静脈炎を生じた際には基礎疾患の鑑別が重要である。下肢に索状硬結を認めた際は,静脈性病変だけでなく動脈性病変の存在にも留意し,一定期間の観察と画像検査,さらに喫煙歴の問診が有用と考えられた。

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© 2017 日本皮膚科学会西部支部
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