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木村 裕美, 永瀬 浩太郎, 井上 卓也, 三砂 範幸, 成澤 寛
2017 年 79 巻 2 号 p.
128-131
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
37歳,男性。初診の約 1 年前より左足背に疼痛を伴う索状硬結が出現し,2 カ月ほどの経過で出現と消退を繰り返した。病理組織学的には皮下組織内に結合組織性に壁が肥厚し内腔の閉塞した静脈を認め,臨床経過とあわせ遊走性血栓性静脈炎と診断した。その後も類似した病変を繰り返し形成し,安静時にも疼痛を伴うようになり,足趾に冷感,Raynaud 現象も出現した。下肢の造影 CT 検査にて四肢末梢主幹動脈の多発性分節的閉塞を認めたことから,最終的に Buerger 病と診断し,本症例の索状硬結は Buerger 病に併発する遊走性血栓性静脈炎と考えた。遊走性血栓性静脈炎は Buerger 病の 2~4 割にみられ,しばしば先行することがある。Buerger 病は四肢の中小動脈を侵す閉塞性疾患と定義されており,静脈炎の臨床像や病理組織像のみから同疾患を想定することは困難な場合がある。遊走性血栓性静脈炎を生じる基礎疾患として,Mondor 病のように自然消退が期待できる疾患もあるが,Buerger 病は禁煙や寒冷刺激の回避,内服加療,場合によっては血管外科との連携が必要であり,治療の開始時期が遅れることで四肢切断に至る危険性がある。そのため,遊走性血栓性静脈炎を生じた際には基礎疾患の鑑別が重要である。下肢に索状硬結を認めた際は,静脈性病変だけでなく動脈性病変の存在にも留意し,一定期間の観察と画像検査,さらに喫煙歴の問診が有用と考えられた。
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陣内 駿一, 一木 稔生, 中川 理恵子, 幸田 太, 古江 増隆
2017 年 79 巻 2 号 p.
132-135
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
75 歳,男性。18 歳時に右第二趾を切断し,その後右足背に潰瘍が出現した。20 歳時には左肘に化膿性病変があり近医で切除,植皮術を行った。その後,約 40 年間近医外科にて左上肢,右下肢の潰瘍治療を行っていたが改善せず 59 歳時に当院を紹介され受診した。初診時左前腕,右下腿伸側から右足背にかけて不整形で境界明瞭な褐色の萎縮性局面を認め,中央部には毛細血管の拡張,痂皮を伴う潰瘍を多数認めた。血液検査では炎症反応の軽度上昇を認めた。画像検査では特に大きな異常は認めなかった。細菌培養検査では MSSA を検出した。真菌,抗酸菌培養検査では陰性であった。病理検査では真皮から皮下組織にかけて膠原線維の変性を認め,その周囲には palisading granuloma が認められた。以上のことより,リポイド類壊死症と診断した。現在,保存的治療で経過をみているが症状の改善は殆どみられていない。
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森岡 友佳, 辻 学, 河原 紗穂, 溝手 政博, 中原 剛士, 内 博史, 古江 増隆
2017 年 79 巻 2 号 p.
136-139
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
44 歳,男性。生来健康であった。左下腿後面に痤瘡様皮疹が出現し,搔破後より疼痛が増強した。発症より 4 カ月後当院に入院した。入院時,左大腿後面に膿疱を伴い中心部に潰瘍形成した堤防状の硬結が多発していた。検査にて白血球数 (13610/mm3),好中球 (93.2%) の増加および CRP (4.35 mg/dl) の上昇を認めた。臨床像と病理組織学的所見から unilateral pustular pyoderma gangrenosum と診断した。入院後 1 日目よりステロイドセミパルス (mPSL 500 mg/日) 3 日間施行後にベタメタゾン 6 mg/日内服,クロベタゾールプロピオン酸エステル外用を継続した。症状は経時的に改善を認めたため,入院後 18 日目よりベタメタゾンを 1 週間毎に 5 mg/日ずつ漸減した。以前ステロイド漸減中に再発したこともあり,入院後 25 日目にシクロスポリン 175 mg/日の内服を併用した。病変は徐々に平坦化し,肉芽形成も良好であった。入院後 66 日目より持続陰圧閉鎖療法 (RENASYS®) を 3 週間継続し,多発性の潰瘍が上皮化した。
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中家 理紗, 中原 剛士, 中原 真希子, 内 博史, 塚本 浩, 古江 増隆
2017 年 79 巻 2 号 p.
140-143
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
65 歳,女性。高安動脈炎,MALT リンパ腫の既往があり,高安動脈炎に対して当院膠原病内科でプレドニゾロン(PSL)5 mg/日内服中であった。初診の8 カ月前より背部や前胸部に皮疹が出現し,近医皮膚科でステロイド外用薬により加療されていたが皮疹が改善しないため,当院膠原病内科より当科を紹介され受診した。初診時,前胸部,背部中央に自覚症状を伴わない大小の紫紅色斑が散在し,毛細血管拡張を認め,一部は網状を呈していた。病理組織学的に真皮浅層の血管周囲にリンパ球を中心とした炎症細胞の浸潤とムチンの沈着が認められた。以上より reticular erythematous mucinosis(REM)と診断した。ステロイド外用薬で治療を開始し,2 カ月後に皮疹は軽快傾向であった。その後,膠原病内科にて,PSL 10 mg/日に増量され,4 カ月後には皮疹はほぼ消失した。REM には悪性疾患や自己免疫疾患との関連の報告があるが,高安動脈炎を合併した例は報告されていない。また多くの報告ではステロイド内服や外用に抵抗性であり,自験例はプレドニゾロン内服とステロイド外用の効果を認めた点が特異であると考えた。
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山内 瑛, 小池 真美, 林 周次郎, 濱崎 洋一郎, 天谷 健二, 籏持 淳
2017 年 79 巻 2 号 p.
144-146
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
45 歳,女性。小児期よりアトピー性皮膚炎(AD)と診断され,現在も上肢に左右対称性に慢性湿疹病変がある。数年前より両手指背,手背に黒子様の黒色斑が出現し,初診時,両手指背,手背の苔癬化を伴う紅斑上に 3∼7 mm 程の黒色斑が散在していた。口唇や口腔粘膜には色素斑は認めなかった。RAST でスギ,ハウスダスト,ヤケヒョウヒダニが陽性で,表皮基底層におけるメラニンの増加と真皮上層でのメラノファージを認めた。慢性刺激により生じる,アトピー性皮膚炎患者にみられる色素沈着と診断した。
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久保 秀通, 久保 秀徳, 山村 健太郎, 青木 恵美, 松下 茂人
2017 年 79 巻 2 号 p.
147-149
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
70 歳,女性。3 年程前より腹部右側に結節を認めており,時折排膿があった。初診時,腫瘍は径 10 mm,弾性硬,紅褐色調の一部潰瘍形成を伴うドーム状結節だった。臨床的に粉瘤を考え,全摘した。組織学的には,真皮から皮下組織にかけて境界明瞭な腫瘍塊が存在し,一部では好塩基性細胞から移行細胞を経て陰影細胞へ変化する像を認め,毛母腫と診断した。毛母腫は若年者の頭部,顔面,上肢に好発し,正常皮膚に覆われて硬く触れる皮内もしくは皮下結節であるが,腫瘤を形成したり,皮膚潰瘍を形成したりと多彩な臨床像を呈することもある。我々は,高齢者の腹部に生じた毛母腫を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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梅原 かおり, 永井 伸幸, 中野 純二
2017 年 79 巻 2 号 p.
150-152
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
71 歳,女性。約 40 年前に左乳癌に対し,乳房切除術後に放射線療法を受けた。初診の 2∼3 年前より,左腋窩に腫瘤が出現し,徐々に増大した。初診時,左腋窩内側に 20×8 mm の辺縁不整の黒褐色腫瘤を認めた。腫瘤周囲の皮膚には萎縮や色素脱失や沈着は認められなかった。ダーモスコピー所見,および病理組織学的所見より基底細胞癌と診断した。放射線治療後に生じる悪性腫瘍として,近年,基底細胞癌の報告が増加している。非露光部の基底細胞癌を認めた場合,過去の放射線療法の有無を確認し,他に照射部位がないかを確かめる必要がある。
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馬場 まゆみ
2017 年 79 巻 2 号 p.
153-156
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
症例 1:86 歳,女性。右鼻唇溝に 8×6 mm の淡褐色斑があった。結節型 basal cell carcinoma(BCC) と診断し,2 mm の surgical margin で単純切除した。症例 2:72 歳,男性。左大腿外側に 10×10 mm の隆起性黒色結節があった。結節型 BCC と診断し,2 mm の surgical margin で単純切除した。症例 3:87 歳,女性。左上口唇に 8×8 mm の軽度隆起性黒色結節があった。結節型 BCC と診断し,3 mm の surgical margin で切除し,rectangular advancement flap で再建した。BCC は,転移することはまれだが局所破壊性が強いため,surgical margin は低リスクの病変でも 4 mm が推奨されている。しかし,約 80%は顔面に発生することから,整容的に十分な surgical margin を確保することが難しい場合も多い。確実な切除において最も大切なことは腫瘍の境界を見極めることであり,病変部位,臨床型,病理組織像などから総合的に surgical margin を決定することで,確実で,整容的にも満足の得られる結果となると思われる。
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和田 尚子, 内 博史, 伊東 孝通, 桐生 美麿, 古江 増隆
2017 年 79 巻 2 号 p.
157-160
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
50 歳,男性。初診 1 年前頃より自覚していた左拇指のしこりが徐々に増大し,潰瘍形成が認められた。 関節可動不能となり,腫瘍より出血したため当院を受診した。初診時,左拇指 IP 関節部に潰瘍を伴う径 2 cm のドーム状紅色結節が認められた。生検で hydradenocarcinoma が疑われ,骨膜上で全切除生検を行った。病理組織学的所見では,好酸性∼淡明な細胞質を持つ多形細胞や類上皮細胞が真皮内に管腔構造を形成し乳頭状に増殖し,核分裂像も認められた。免疫組織化学染色では腫瘍細胞は,AE1/AE3,CK14,EMA に陽性を示し,CEA に部分的に陽性を示した。Digital papillary adenocarcinoma と診断し,拡大切除を行った。Digital papillary adenocarcinoma は緩徐に進行する汗腺系悪性腫瘍であり,自験例は臨床像や病理組織像から典型例と考えられた。
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山本 佳子, 山本 剛伸, 牧野 英一, 藤本 亘
2017 年 79 巻 2 号 p.
161-166
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
皮膚平滑筋肉腫は稀な間葉系皮膚悪性腫瘍であり皮膚型と皮下型に分類される。60 代男性,13 年前から出現した左大転子部の結節が 1 年前より急速に増大した症例を報告する。初診時,左大転子部に径 6 cm のドーム状に隆起する腫瘤があり,その中央に径 3 cm で半球状に隆起し,表面に痂皮を伴う暗赤色の結節を認めた。全摘出標本では,腫瘍細胞が真皮から皮下組織に束状配列を示しながら増殖しており,境界は明瞭であった。それらの細胞は
α-smooth muscle actin (
α-SMA),desmin,calponin 陽性であり,皮膚平滑筋肉腫と診断し,臨床所見と病理組織学的所見より皮膚型と考えた。予後予測を考える上で,皮膚型・皮下型の分類とともに病理組織学的悪性度分類(French Federation Nationale des Centres de Lutte Contre le Cancer grading system)と臨床病期分類(American Joint Committe on Cancer staging system)が重要である。皮膚型の中でも皮下組織へ浸潤している例は再発・転移を認めやすいという報告があり,本症例も注意深い経過観察が必要である。
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佐々木 諒, 山口 和記, 今泉 敏史, 日浦 ゆかり, 鈴木 公子, 今福 信一
2017 年 79 巻 2 号 p.
167-170
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
58 歳,男性。2011 年に腰痛で発症し,第 3 腰椎脊索腫の診断であった。以来切除術,放射線療法を受けていたが局所再発を繰り返した。2015 年 2 月に右前腕に腫瘤を自覚し増大するため,2015 年 9 月に当科を受診した。右前腕に 40×20 mm の弾性硬の可動性不良な皮下腫瘤を認め,一部表面に淡紅色の腫瘤の隆起がみられた。MRI で境界明瞭な腫瘤性病変が認められ,局所麻酔で切除した。腫瘍は線維性の被膜を有し白色調,多房性であった。病理組織学的には索状に配列した空胞状の胞体を有する担空胞細胞 (physaliferous cell) がみられ,免疫組織化学的には AE1/AE3,vimentin,S-100,EMA,brachyury が陽性であり,脊索腫の皮膚転移と診断した。脊索腫は局所再発が多いものの転移は少ないとされてきたが近年では 24.7 %との報告もあり,診断された際は皮膚を含めた全身精査が必要である。
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北川 徳子, 三苫 千景, 安河内 由美, 佐々木 智成, 内 博史, 古江 増隆
2017 年 79 巻 2 号 p.
171-175
発行日: 2017/04/01
公開日: 2017/06/12
ジャーナル
認証あり
83 歳,女性。初診時に左耳に紅色腫瘤が多発していた。組織学的には,真皮全層にびまん性に稠密なリンパ球浸潤を認め,中から大型の核を有する異型リンパ球で構成されていた。免疫組織化学染色では,異型リンパ球は CD30 に強陽性,ALK (anaplastic lymphoma kinase) 陰性だった。皮膚外病変は認めず,皮膚原発性未分化大細胞リンパ腫 (primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma, PCALCL) と診断した。皮膚病変は多発するも左耳に限局していたため,左耳から側頚部にかけて電子線総量 40 Gy/20 Fr を照射した。個々の腫瘤は著明に縮小したが,照射終了後,腫瘤部位に一致して黄色結節が残存し,1,2 カ月して再度増大してきた。黄色結節は,組織学的に真皮全層に亘り無数の泡沫細胞がみられ,異型リンパ球は残存しなかった。以上より PCALCL が放射線療法にて消退する過程で形成された dystrophic xanthomatization と診断した。PCALCL 経過中に xanthomatization を来した症例について文献的考察を加え報告する。
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