西日本皮膚科
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図説
色素線条を呈した HPV56 型陽性の爪甲下 Bowen 病
福井 香苗塩入 瑞恵梅田 整
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2018 年 80 巻 6 号 p. 509-510

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抄録

症例:66 歳,男性

主訴:右示指の爪甲色素線条と変形

現病歴:初診の 3 年前より右示指爪甲に自覚症状の乏しい褐色の色素線条が出現し,同部位が徐々に隆起した。増大傾向であり,本人が悪性腫瘍の可能性を疑い受診した。

現症:右示指に幅の不整な褐色色素線条と,その色素線条に一致して爪甲下の角質増殖がみられた。指尖部や側爪郭に Hutchinson 徴候は認めなかった(図1)。また,外陰部や肛門部に病変はみられなかった。

ダーモスコピー所見:爪甲外側に濃淡不均一な褐色色素線条を認めた。異常な血管増生はなかった。

家族歴:家族内に HPV 保有者はいなかった。

経過:爪縁より角質が増殖している部分を,爪床を含め皮膚生検を行った。

病理組織学的所見:爪床および爪母を構成する基底細胞層および有棘層は全層性に異型細胞に置換されていた(図2 a)。異型細胞の中には single cell keratinization を呈する異常角化細胞,dyskeratosis,clumping cell や mytosis も散見されたが,間質内への浸潤はみられなかった(図2 b,c)。また,組織より HPV56 型(PCR-rSSO 法)が検出された。Ki-67 陽性細胞は1%未満であった。

診断:HPV56 型陽性の爪甲下 Bowen 病と診断した。

治療および経過:皮膚生検後,爪母を含め褐色色素線条の辺縁部より 3 mm 離して骨膜上で腫瘍を切除し人工真皮植皮術を施行した。術後 36 カ月の経過にて再発はない。

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