西日本皮膚科
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症例
早期診断により救命しえた A 群 β 溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎の 1 例
砂川 文山城 充士粟澤 遼子粟澤 剛
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2019 年 81 巻 1 号 p. 31-34

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抄録

36 歳,女性。自宅の冷蔵庫で右足を打撲した後,同部の疼痛が次第に増強し発熱もみられた。翌日の当科初診時には右足全体に著しい疼痛を訴え,外果には発赤,腫脹,熱感を認めた。高熱と炎症反応の高値を伴っており,LRINEC(laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis)score は 4 点で,入院の上,蜂窩織炎として抗生剤加療を開始した。しかし,半日後にはショック状態となり,炎症反応の更なる上昇と腎機能の悪化,凝固系の延長を来たし,LRINEC score は 8 点に上昇した。患部には水疱が出現,試験切開所見から壊死性筋膜炎と診断し,緊急デブリードマンを施行した。起因菌は Streptococcus pyogenes であり,アンピシリン,クリンダマイシンの全身投与を 2 週間継続し,免疫グロブリン療法を併用した。 その後は感染の拡大を起こすことなく,第 47 病日に植皮術を施行,患肢は大きな後遺症を残すことなく,温存できた。A 群 β 溶血性連鎖球菌は,基礎疾患を持たない健常人に単独で壊死性筋膜炎をおこし得る。 また一部の症例では致死率の高い劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)へと発展する。自験例は,A 群 β 溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎からショック状態に至ったものの,早期診断と治療開始により,患肢の温存と救命に成功した。本疾患は迅速かつ注意深い対応を要するため,経験症例を共有する必要があると考え報告する。

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© 2019 日本皮膚科学会西部支部
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