西日本皮膚科
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症例
トニックウォーターに含まれるキニーネによる固定疹の 1 例
荒巻 ちひろ伊藤 宏太郎大賀 保範今福 信一
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2019 年 81 巻 5 号 p. 377-381

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抄録

30 歳,男性。5 日前から生じた口唇,硬口蓋,陰茎,亀頭の紅斑とびらん,左手背,右大腿後面の紅斑を主訴に当科を受診した。9 カ月前より同様の症状を繰り返しており,今回が 3 回目の発症であった。臨床像より固定疹を疑い左手背病変部から皮膚生検を行ったところ,表皮真皮間の液状変性,表皮顆粒層から角層にかけて necrotic keratinocyte を認め,固定疹に矛盾しない所見であった。詳細な問診から食物による固定疹を疑い,症状改善後に口唇の皮疹部でトニックウォーター,アボカド,パクチーの 3 種によるオープンテスト,左手背の皮疹部でキニーネ 1% aq(鳥居薬品)によるパッチテストを施行した。オープンテストは 3 種全て陰性であったが,キニーネ 1% aq によるパッチテストが陽性であり,トニックウォーターに含まれるキニーネによる固定疹と診断した。キニーネはトニックウォーターの苦み成分として用いられることのある添加物である。食物,食品添加物による固定疹は固定食物疹と呼ばれ,キニーネによるものもこれに含まれる。過去の症例を検討したところ,キニーネによる固定疹は他の食物による固定疹と比べ口唇に症状が出やすい特徴があった。固定疹を疑う臨床像で明らかな内服歴がない場合は,食物摂取歴も慎重に聴取し原因を探る必要がある。

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