西日本皮膚科
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症例
右上肢麻痺を来した帯状疱疹性腕神経叢炎の 1 例
呉竹 景介小田 真理竹内 聡古江 増隆
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2019 年 81 巻 6 号 p. 509-512

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抄録

81 歳,女性。初診 5 日前に右肩から上肢の帯状疱疹と強い痛みを生じたため当科に入院して治療を開始した。入院時より右上肢の動きが悪かったが,疼痛が著しく評価困難であった。アシクロビル点滴 500 mg/日,アンピシリン/スルバクタム 1125 mg/日,アセトアミノフェン 1200 mg/日,プレガバリン 50 mg/日内服により第 5 病日には疼痛は改善したが,右上肢運動障害が残存していた。神経内科的精査で三角筋など皮疹分布と一致する C5,C6 領域の筋力低下,MRI で右腕神経叢に T2 高信号がみられ,帯状疱疹による右腕神経叢炎と診断された。水疱が痂疲化した後の第 9 病日に当院神経内科へ転科し,同日および 16 病日に 2 回のステロイドパルス療法およびプレドニゾロン(以下,PSL)45 mg/日内服を行ったが,上肢挙上に重要な三角筋麻痺は改善しなかった。第 28 病日に免疫グロブリン大量静注療法を施行した直後より同筋麻痺は改善に転じ,第 37 病日にステロイドパルス療法を追加して第 45 病日より PSL は漸減し,第 54 病日に退院した。帯状疱疹は日常よく遭遇する疾患の一つで近年増加傾向にある。2016 年 3 月から 50 歳以上で帯状疱疹生ワクチンが,さらに 2018 年 3 月には同サブユニットワクチンも承認されたが,さほど普及している印象はない。本例のような ADL 低下に直結する帯状疱疹の神経関連合併症を減らすためにも,より積極的に帯状疱疹ワクチンを推奨するなどの施策が重要と思われる。

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© 2019 日本皮膚科学会西部支部
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