西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
口囲の MRSA 蜂窩織炎から生じた敗血症性肺塞栓症の 1 例
呉竹 景介小田 真理竹内 聡古江 増隆
著者情報
ジャーナル 認証あり

2020 年 82 巻 4 号 p. 280-284

詳細
抄録

32 歳,女性。初診 3 日前に左上口唇の有痛性の小水疱をつぶしたところ,翌日に同部が発赤,腫脹したため近医皮膚科を受診し,同部蜂窩織炎の診断でアジスロマイシン内服を開始した。また,同日に左前胸部痛も自覚し近医整形外科にて肋骨骨折疑いでバストバンド固定開始されていたが,左口囲の疼痛増悪,39℃台の発熱,開口障害,食思不振があり,近医救急外来受診し当科紹介入院となった。初診時に CRP 15.58 mg/dl で胸痛を伴い,胸部 CT 検査で両肺野に末梢性多発結節影がみられたため,口唇ヘルペス二次感染からの敗血症性肺塞栓症を疑い,抗ウイルス薬と抗菌薬を開始した。第 4 病日には左口囲の創部,血液,喀痰培養の全てで Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が検出されたため,速やかに適切な抗菌薬に変更し,奏効したため第 19 病日に退院となった。調べた限り他の感染源はなく,口囲蜂窩織炎を契機に MRSA による敗血症性肺塞栓症をきたした比較的稀な症例と考えた。

著者関連情報
© 2020 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top