西日本皮膚科
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82 巻, 4 号
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目次
図説
  • 片山 栞, 柴山 慶継, 青木 光希子, 古賀 佳織, 今福 信一, 国場 尚志
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 249-250
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    症例:47 歳,女性

    主訴:右第 3 指基部掌側の結節

    現病歴:2017 年 7 月頃,右第 3 指基部に自覚症状のない結節に気付いた。経過観察するも改善なく,2018 年 7 月に前医を受診し,精査加療目的に当科紹介受診した。

    現症:右第 3 指基部掌側に,淡紅色調~常色の弾性硬で径 6 mm の結節を認めた。自発痛,圧痛は認めなかった(図 1 )。ダーモスコピーでは,血管拡張を認めた。

    病理組織学的所見:結節中央部を 3 mm トレパンで生検した。真皮内に,硝子化を伴う膠原線維が増加した間質を背景に紡錘形細胞が索状構造を呈して増殖している。増殖する細胞は類円形の核と,弱好酸性の細胞質を有している。核異型や分裂像はみられない(図 2 )。免疫組織化学染色で,腫瘍細胞は EMA 陽性,GLUT-1 陽性,S-100 蛋白陰性であった(図 3 )。

    診断:硬化性神経周膜腫(Sclerosing perineurioma)

  • 末永 亜紗子, 江藤 綾桂, 谷口 知与, 和田 尚子, 内 博史
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 251-252
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    症例:62 歳,女性

    主訴:右第 2 指の皮下腫瘤

    現病歴:初診 3 年前より右第 2 指に皮下腫瘤が出現し,徐々に増大するため受診した。

    現症:右第 2 指 IP 関節尺側に掌側から背側にかけて可動性不良の皮下腫瘤を認めた(図 1 ab)。

    治療:腫瘍のため屈曲制限を伴っており指ブロック下に摘出した。皮下に 2.3×1.7 cm の黄色腫瘍を認め(図 1 c),腫瘍は中節骨から基節骨上に存在していた。腱鞘および PIP 関節の関節包と連続しており,腱鞘と関節包を一部含めて切除した(図 1 d)。

    病理組織学的所見:腫瘍は線維性被膜に覆われ,内部には線維化した間質と破骨細胞様の多核巨細胞(osteoclast-like giant cell)を多数認めた(図 2 )。

    診断:腱鞘巨細胞腫(giant cell tumor of tendon sheath, GCTTS)

綜説
  • 江川 清文
    原稿種別: 総説
    2020 年 82 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり
  • 仲 弥, 中野 眞
    原稿種別: 総説
    2020 年 82 巻 4 号 p. 260-266
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    爪白癬は高齢者での罹患率が高く,自覚症状が乏しいために未受診患者も多い。爪白癬の診療においては診断技術に習熟した皮膚科医が真菌検査で確定診断した患者にのみ抗真菌薬を投与することが望ましいが,実際には,患者が皮膚科以外の診療科を受診し,視診のみで爪白癬と診断されるケースは多く,その場合には誤診率が高い。近年,新たに外用薬と経口薬が登場して爪白癬の治療選択肢が増えたが,治療効果を左右する完全治癒率やアドヒアランスの良さは各薬剤により異なるため,これらを考慮した薬剤選択が必要とされている。爪白癬の治療においては自己判断で治療を中断する患者や漫然と抗真菌薬を処方する医師が多い。また最近は安易な薬剤選択により治癒に至らない症例や治療後再発する症例が多いことが問題となっている。再発には,軽快しても治療が不十分なために残った菌が再増殖する「再燃」と一度治癒した後に新たな菌に感染する「再感染」があり,爪白癬の再発の多くは再燃であるとされる。治療により臨床的に混濁部が消失し,かつ真菌検査にて菌陰性の「完全治癒」に至れば,再発の可能性は低くなる。従って,爪白癬の治療では完全治癒を目指す薬剤選択が望まれる。爪白癬治療薬の完全治癒率は経口薬の方が外用薬より高いことから,ガイドラインに従い表在型や軽症例を除く爪白癬に対してはまず経口薬の使用を検討して,それが難しい場合に限り外用薬を考慮すべきと思われる。

症例
  • 西原 春奈, 加藤 裕史, 中村 元樹, 森田 明理
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 267-270
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    80 歳,男性。前頭部原発悪性黒色腫の多発皮膚転移に対してニボルマブの投与を開始したところ,投与開始より 2 カ月後,四肢に強い瘙痒と鱗屑を伴った紅色局面が出現した。前腕の紅色局面より皮膚生検を行い,皮膚病理組織学的所見より扁平苔癬と診断した。パッチテストは陰性であったが,薬剤リンパ球幼若化試験(Drug-induced Lymphocyte Stimulation Test:DLST)では Stimulation Index 226%と陽性所見を得た。ニボルマブによる扁平苔癬型薬疹(grade 1)と診断し,ステロイド外用と抗アレルギー薬内服で治療を行い,ニボルマブの投与は継続した。その後新規の肺転移が出現し,ニボルマブの投与を中止,ダブラフェニブ・トラメチニブを投与開始したところ皮疹は速やかに改善した。ニボルマブによる扁平苔癬型薬疹は過去にも報告があるが,DLST が施行された報告はない。我々は検証のためニボルマブ投与歴のない健常人 6 名に対してニボルマブを用いた DLST を施行し,6 名中 2 名に陽性所見を得た。ニボルマブによる DLST 検査の意義についての検討には,さらなる症例の蓄積が必要である。

  • 安富 陽平, 川上 佳夫, 篠倉 美理, 神野 泰輔, 藤本 裕子, 三宅 智子, 山﨑 修, 森実 真
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 271-275
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    58 歳,男性。右外耳道有棘細胞癌に対して epidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤のセツキシマブとパクリタキセルの併用療法を 6 カ月間,合計 14 回施行した。最終投与日から 13 日後に四肢に一部血疱や浸潤を伴う点状紫斑が多発し,腎機能障害も認めた。皮膚病理所見では真皮全層の血管周囲に好中球や好酸球の浸潤と核塵を認め,真皮浅層から中層の毛細血管に血管壁のフィブリノイド変性があり,leukocytoclastic vasculitis(LCV)に矛盾しない所見であった。蛍光抗体直接法では真皮上層の血管周囲に C3 の沈着が認められたが,IgA の沈着は認めなかった。セツキシマブ・パクリタキセルを休薬し,プレドニゾロン(PSL) 20 mg/日内服と細胞外液の補液を開始したところ,皮疹,腎機能ともに速やかに改善した。しかし,蛋白尿と尿潜血が持続して検出されたため,PSL 8.0 mg/日を維持量として継続した。 その後外耳道癌が再び増大し,4 カ月後にセツキシマブ・パクリタキセルを再投与したが皮疹の再燃は認めなかった。EGFR 阻害剤投与中に,血管周囲に C3 の沈着を伴う LCV の報告が本症例以外にも 3 例ある。そのうち 1 例では潰瘍化や壊死を伴う臨床像を呈し,1 例では下血を合併していた。本症例では EGFR 阻害剤が LCV 発症の直接の誘因になったかどうかは不明だが,EGFR 阻害剤により LCV が重症化した可能性が考えられる。

  • 末永 亜紗子, 江藤 綾桂, 中原 真希子, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 276-279
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    73 歳,女性。初診の 8 年前に左上眼瞼の腫脹を自覚し,増悪と軽快を繰り返していた。初診の 1 年前に左視力の低下を自覚し,頭部 MRI で眼窩内の腫瘤を指摘された。精査の結果,IgG4 関連疾患疑診群の診断となり,プレドニゾロン(PSL)30 mg/日の内服を開始された。その後視力は徐々に改善し,PSL は漸減後中止された。初診 4 カ月前に左頬部に紅斑が出現し,当科を受診した。初診時,左頬部から下顎にかけ瘙痒と浸潤を伴う類円形の紅斑局面を認めた。病理組織学的には,真皮に斑状のリンパ球と形質細胞の浸潤を認め,ムチンの沈着と好酸球浸潤を認めた。免疫組織化学染色では,CD138 陽性形質細胞の 50%が IgG4 染色陽性であり,血清の IgG4 は 300 mg/dl と上昇しており,IgG4 関連疾患と診断した。全身 CT 検査では,明らかな異常所見は認めなかった。局所療法としてエキシマライトによる紫外線療法を開始し,照射1 カ月で紅斑は残存しているが浸潤は消失した。IgG4 関連疾患に伴う複数の臓器病変は必ずしも同時期に発現するとは限らない。自験例は IgG4 関連疾患疑診群の診断となり 1 年後に原発疹と考えられる皮疹が出現し確定診断に至ることができた。治療はエキシマライトによる局所療法が奏効している。これまでの本邦報告例をみても,エキシマライトでの改善例の報告はなかった。 IgG4 関連皮膚疾患の報告は増えてきているが未だ診断基準,治療法に確立されたものはなく,今後の症例の蓄積と検討が期待される。

  • 呉竹 景介, 小田 真理, 竹内 聡, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    32 歳,女性。初診 3 日前に左上口唇の有痛性の小水疱をつぶしたところ,翌日に同部が発赤,腫脹したため近医皮膚科を受診し,同部蜂窩織炎の診断でアジスロマイシン内服を開始した。また,同日に左前胸部痛も自覚し近医整形外科にて肋骨骨折疑いでバストバンド固定開始されていたが,左口囲の疼痛増悪,39℃台の発熱,開口障害,食思不振があり,近医救急外来受診し当科紹介入院となった。初診時に CRP 15.58 mg/dl で胸痛を伴い,胸部 CT 検査で両肺野に末梢性多発結節影がみられたため,口唇ヘルペス二次感染からの敗血症性肺塞栓症を疑い,抗ウイルス薬と抗菌薬を開始した。第 4 病日には左口囲の創部,血液,喀痰培養の全てで Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が検出されたため,速やかに適切な抗菌薬に変更し,奏効したため第 19 病日に退院となった。調べた限り他の感染源はなく,口囲蜂窩織炎を契機に MRSA による敗血症性肺塞栓症をきたした比較的稀な症例と考えた。

  • 加藤 裕史, 小田 隆夫, 中村 元樹, 森田 明理
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 285-288
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    58 歳,女性。子宮頚癌に対して広範子宮全摘術を施行後,術後放射線,化学療法を施行された。投与終了 1 カ月後に急激な両下腿の疼痛が出現し,当院救急外来へ受診された。初診時にはショックバイタルであり,汎血球減少を認めたが,この時点では下肢には淡い紫斑がみられる程度であり,敗血症による DIC と考え,抗菌薬の投与および ICU 管理を開始した。発症 3 日後に皮膚切開術を施行。同時期に血液培養および皮下組織からの細菌培養にて緑膿菌が検出されたことから緑膿菌による壊死性筋膜炎と診断した。第 28 病日に全身麻酔下で広範囲のデブリードマンおよび分層植皮術を施行した。緑膿菌による壊死性筋膜炎の発症は稀であり,文献的考察を含め報告する。

  • 谷口 知与, 辻 学, 竹井 賢二郎, 高原 正和, 安澤 数史, 松田 哲男, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 289-293
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    77 歳,女性。初診 1 カ月前に右大腿基部の紅斑を指摘された。近医皮膚科を受診し,肉芽腫性病変として皮膚生検を施行された。病理組織学的に真菌要素が認められたため,当科を紹介された。初診時,右大腿基部に中央部に鱗屑と痂皮を伴う 35×34 mm の境界明瞭な不整形の紅色角化性局面と周囲の散在性の褐色斑を認めた。当院で皮膚生検を施行し,病理組織学的に Hematoxylin-Eosin(H.&E.)染色で真皮上層の間質や巨細胞内に褐色の厚い 2 ~ 3 の隔壁を持つ円形の菌要素が数カ所で集簇していた。鱗屑部の苛性カリウムによる直接鏡検で褐色の円形の菌要素や褐色の菌糸性菌要素を観察した。病変から採取した鱗屑や生検標本から得られた分離菌は均一な外観を呈する黒色絨毛状集落を形成した。光学顕微鏡レベルでは連続するシンポジオ型分生子を形成していた。分子生物学的手法を用いて,分離菌を Fonsecaea monophora と同定した。以上より,本症例を Fonsecaea monophora による黒色分芽菌症と診断した。高齢で,併存疾患に対して多剤内服中であったため,抗真菌薬の長期投与は行わない方針とした。全身麻酔下に病巣をマージン 2 cm で切除し,術後 30 日間のイトラコナゾール(イトリゾール®)の内服を投与した。 術後 2 年時点で臨床的に再発はない。

  • 森㟢 仁美, 小池 雄太, 江原 大輔, 根井 悠里江, 浅井 幸, 岩永 聰, 室田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 4 号 p. 294-298
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    78 歳,女性。末期腎不全で血液維持透析を施行していた。初診 1 年 4 カ月前より両下腿に皮膚潰瘍が出現し,近医の皮膚生検で血管炎を疑われプレドニゾロンを内服していた。当科初診時,両下腿に紅色~暗紫色の皮下結節が散在し,皮膚潰瘍を伴っていた。皮膚生検で真皮内に膿瘍を認め,Ziehl-Neelsen 染色で膿瘍内に好酸性に染まる桿状の菌体が散在していた。抗酸菌培養(小川培地 30℃ )で発育を認め,質量分析法にて Mycobacterium chelonae(以下 M. chelonae)を検出し,M. chelonae 皮膚感染症と診断した。 切開排膿,温熱療法,抗菌薬投与を行ったが難治であり,治療中に徐々に全身状態が悪化し,一般細菌による敗血症で入院 6 カ月目に永眠した。M. chelonae 皮膚感染症には未だ確立した治療方法がなく,免疫抑制剤使用症例や透析症例は難治である。また透析患者であることは死亡リスクとなり得るため,診断早期より複数の抗菌薬投与や温熱療法などを組み合わせて積極的な治療を行うことが重要である。

治療
  • 中塚 万莉, 林 宏明, 田中 了, 青山 裕美
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 82 巻 4 号 p. 299-303
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    円形脱毛症は難治性の自己免疫疾患で,ステロイドパルス療法を選択しても難治例が存在する。当院におけるステロイドパルス療法の有効性に関連する因子と SADBE による非特異的免疫療法併用の有効性について検討する目的で, ステロイドパルス療法を施行した円形脱毛症 58 例中長期フォローした 39 例を対象に後ろ向きの観察研究を行った。臨床的有効率は多発型 9/13(69.3%),全頭型 8/14(57.1%),汎発型 7/11(63.6%),ophiasis 0/1(0%)であった。治療施行時の罹患期間別有効率は 1 カ月未満 7/12(58.3%),1~3 カ月 6/8(75%),3~6 カ月 3/4(75%),6~12 カ月 3/3(100%),12 カ月以上 5/12(41.7%)であった。 汎発型や ophiasis は治療抵抗性で,発症後 6 カ月以上 12 カ月未満でも有効であったが、再発もあり,リスクを説明の上治療を行ってもよいと考えられた。また,ステロイドパルス療法後治療効果がみられない場合に非特異的免疫療法を選択しても,ステロイドパルス療法単独群より高い効果が得られなかった。しかし,中には改善傾向を示す症例がみられたので 6 カ月を目安に併用してもよいと考えた。

世界の皮膚科学者
  • Gang Wang
    原稿種別: レター
    2020 年 82 巻 4 号 p. 307-308
    発行日: 2020/08/01
    公開日: 2020/09/17
    ジャーナル 認証あり

    Gang Wang, M.D., Ph.D., is the Chair and Professor of Department of Dermatology at Xijing Hospital, The Fourth Military Medical University. He obtained his M.D. and Ph.D. degrees in Dermatology and Venerology in 1993 and 2000 respectively from the Fourth Military University in Xi'an, China, and has been working for Xijing Hospital since 2002. He had post-doctoral training in the Department of Dermatology at Hokkaido University under the guidance of Dr. Hiroshi Shimizu, and worked as a visiting scholar in Department of Dermatology & Cutaneous Biology, Thomas Jefferson University, the United States. Dr. Wang is currently the President-elect of Chinese Dermatologist Association, Chair of Chinese Society for Investigative Dermatology, Vice President of Chinese Society of Dermatology, and Vice President of Asian Society for Psoriasis. He also serve as a co-editor for Eur J Dermatol, and reviewer for JAAD, JID, BJD, JEAD, JDS, and JACI, etc.

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