西日本皮膚科
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症例
右前腕の Pilomatrix Carcinoma の 1 例
松田 杏奈安野 秀一郎中野 純二下村 裕
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2020 年 82 巻 6 号 p. 442-445

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抄録

症例は 67 歳,男性。当科初診の約 1 年前から右前腕に隆起性病変が出現。腫瘤は徐々に増大した。当科初診の 1 カ月前に,右前腕を打撲後,病変部から出血が持続し,前医を受診した。悪性腫瘍が疑われ,当科を紹介され受診した。右上腕伸側に約 60 mm の弾性硬の広基性一部有茎性の腫瘤を認め,易出血性で内部に黄色石灰化様粒状物が露出していた。画像検査でリンパ節転移や遠隔転移を認めなかった。全身麻酔下で十分な切除マージンを確保し,腫瘍全摘切除術を施行し人工真皮を貼付した。切除断端陰性を確認した後に分層シート植皮術を行った。臨床および病理組織学的所見から pilomatrix carcinoma と診断した。Pilomatrix carcinoma は非常に稀な毛母分化を示す悪性腫瘍である。治療は拡大切除術が望ましいが,その標準的なマージンは決まっておらず,術後補助療法も確立されていない。再発や転移を起こすことがあるので,術後の慎重な経過観察が必要と考える。なお,切除標本から抽出した DNA を用いての遺伝子解析で β-catenin(CTNNB1)遺伝子にミスセンス変異が同定されたことから,pilomatricoma と同様に,pilomatrix carcinoma でも Wnt シグナルの過剰な活性化が起きていることが強く示唆された。

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