2020 年 82 巻 6 号 p. 446-450
56 歳,男性。当科初診の約 1 カ月前に左下腿に紅色結節を自覚した。結節部からの皮膚生検組織のヘマトキシリン・エオジン染色で,真皮に大型の核を持つ好塩基性の腫瘍細胞の地図状増生が認められた。 さらに,免疫組織化学染色で,腫瘍細胞はサイトケラチン 20 とクロモグラニン A が陽性だったため, メルケル細胞癌と診断した。また,腫瘍組織内に Merkel cell polyomavirus(MCPyV)が検出された。CT では,所属リンパ節転移や遠隔転移は認められなかった。生検後より結節は徐々に縮小し,1 カ月でほぼ消退し瘢痕化したが,瘢痕部の辺縁から 2 cm マージンで拡大切除術および全層植皮術を施行した。切除後の病理組織学的所見では腫瘍細胞は完全に消失しており,自然消退したと考えた。過去の自然消退した報告例で MCPyV を検索した症例は 2 例しかなく,自然消退との関連は言及できない。今後も再発・転移の可能性を考慮しながら注意深い経過観察を要する。