西日本皮膚科
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図説
爪疥癬
江川 清文
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2021 年 83 巻 2 号 p. 97-98

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抄録

症例:74 歳,男性。

初診:昭和 56 年

家族歴・他:家族歴は不明。入所中の高齢者施設内に通常疥癬患者あり。

現病歴:介護人が両足の爪病変に気づき,爪白癬が疑われて受診。いつから爪病変が存在したかは不明。

現症:左第 1 趾爪甲下と爪甲周囲に黄白色の著明な角質肥厚を(図 1 ),右第 3,4,5 趾爪に角質が堆積したような爪甲肥厚を認めた(図 2 )。他に疥癬を疑う皮疹を認めず,瘙痒の訴えも無かった。

全身状態:るい痩あり。寝たきりに近い状態であるが,簡単な問診には応答可能な意識レベル。

検査:直接鏡検法により,肥厚した角質に無数の疥癬虫体と卵を認めた(図 3 )。真菌要素陰性。

診断:爪疥癬

治療および経過:肥厚した角質をニッパー型爪切り等で除去し,0.5% γBHC 軟膏と 10%サリチル酸ワセリン(以下 SV)を重層塗布して密封療法(以下 ODT)を行うとともに,週 1 回受診時に浸軟した角質をメス等で削り取る処置を繰り返した。約 1 カ月後には左 1 趾の角質塊は消失し(図 4 ),右足の爪甲肥厚もほぼ除去でき,直接鏡検法も陰性となった。
経過中の患者管理は,病変が爪に限局していたこと,病変部を ODT で被ってしまうことや行動制限があったことなどから,処置時の手袋操作,入浴を最後にする,洗濯物の熱湯処理等以外は通常疥癬に準じて行い,個室管理は行わなかった。

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