西日本皮膚科
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症例
アスピリンの組み合わせ負荷試験により診断し得たヤリイカによる食物依存性運動誘発アナフィラキシーの 1 例
中元 健太岡 大五田中 了青山 裕美
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2022 年 84 巻 6 号 p. 499-502

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抄録

16 歳,男性。夕食時にヤリイカを含む寿司を摂取した約 1 時間後,歩行帰宅途中に眼瞼浮腫,全身に蕁麻疹が出現した。前医を受診し,収縮期血圧低下を認めアナフィラキシーショックと診断され加療された。食物アレルギー精査目的に当科に紹介受診となり,食物依存性運動誘発アナフィラキシー(fooddependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)を疑い精査を行った。イカを含む数種の魚介類の特異的 IgE 抗体が陽性であった。Prick-prick test ではヤリイカのみ陽性となった。ヤリイカを原因食物として疑い,入院下で運動負荷誘発試験を施行した。運動とヤリイカの摂取のみでは症状誘発はされなかったが,アスピリン 1.5 g を内服しヤリイカ 50 g の摂取と 30 分間の運動との組み合わせで眼瞼浮腫を生じた。以上よりヤリイカによる FDEIA と診断した。本症は診断のために詳細な問診と特異的 IgE 抗体の測定,プリックテスト,食物負荷試験が重要であるが必ずしも再現性は高くない。食物負荷試験と運動の組み合わせでは偽陰性となることがあり,自験例の結果より増強因子であるアスピリンを投与することも重要であることが示唆された。

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