2022 年 84 巻 6 号 p. 512-516
88 歳,男性。2 型糖尿病,高血圧症,脂質異常症,高尿酸血症などがある。当科初診の半月前に,頭皮全体に強い痛みを伴う皮疹を自覚し,近医皮膚科を受診した。皮疹部から皮膚生検を行うも,診断には至らなかった。痛みと共に病変の壊死が著明となり進行するため当科を紹介され受診した。当科初診時,前頭部から頭頂部を中心に,頭皮全体にわたり強い疼痛を伴う暗紅色斑から紫斑,壊死へと進行する皮疹を認めた。頭皮以外には皮疹はみられなかった。発熱および明らかな全身症状はなかった。血液検査では proteinase 3(PR3)-ANCA が 14.2 U/ml と軽度高値であった。病変部からの皮膚生検病理検査で肉芽腫性血管炎の所見を認めた。多発血管炎性肉芽腫症 granulomatosis with polyangiitis(GPA)を疑い,画像検査,他科コンサルトを行ったが,頭皮以外に特記すべき異常所見は認めなかった。プレドニゾロン 20 mg/日内服を主とした治療を開始したところ,皮疹および疼痛は比較的速やかに改善した。自験例は頭皮に生じた皮膚限局性 GPA ではないかと考えた。皮膚限局性 GPA は比較的稀な病態と思われるため,報告する。