西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
臨床的に Chronic Expanding Hematoma の所見を伴った Giant Vascular Eccrine Spiradenoma の 1 例
髙木 萌大賀 保範佐藤 絵美山口 和記古賀 佳織青木 光希子今福 信一
著者情報
ジャーナル 認証あり

2022 年 84 巻 6 号 p. 541-546

詳細
抄録

73 歳,女性。10 年前から右側胸部の腫瘤を自覚し,徐々に増大したため精査加療目的に当科を受診した。右側胸部に約 20 cm の表面平滑で常色の軟らかい波動を触れる懸垂性の腫瘤が認められ,造影CT で同部位に血液成分を含む囊胞性領域があり,MRI T2 強調画像では高低信号域が不均一に混在していた。Chronic expanding hematoma(CEH)を疑い,全切除を行った。病理組織像では,腫瘤の大部分は線維性被膜内に血液成分,壊死組織を認め,CEH の所見であった。しかし,腫瘤の一部では小型の濃染核とわずかな細胞質からなる基底細胞様細胞と比較的豊富な好酸性細胞質からなる扁平上皮様細胞により構成される腫瘍成分が認められ,出血と血管の増生を伴っており,らせん腺腫の亜型である giant vascular eccrine spiradenoma(GVES)の所見であった。GVES の部分は CEH の部分と連続性を持っていたことから,自験例は GVES の血管が破綻し,出血を繰り返したことにより増大したものと考え,CEH 様の所見を伴った GVES の診断とした。GVES は報告が少なく,巨大化した稀な例を経験したので報告する。

著者関連情報
© 2022 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top