西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
図説
節外性 NK/T 細胞リンパ腫,鼻型を併発した慢性活動性 EB ウイルス病
柳瀬 海騎齊藤 華奈実角沖 史野梅木 真由子糸永 知代末延 聡一平野 直樹井原 健二西田 陽登駄阿 勉波多野 豊
著者情報
ジャーナル 認証あり

2024 年 86 巻 6 号 p. 555-557

詳細
抄録

症例:16 歳,男性

主訴:不明熱,左大腿の有痛性血疱

現病歴:15 歳時に,繰り返す不明熱と顔面の腫れを主訴に当院耳鼻科から皮膚科に紹介され受診した(初発時,図 1 a)。耳鼻科にて左頰部の皮下硬結部から連続する左上顎洞内腫瘤の生検にて節外性 NK/T 細胞リンパ腫,鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma,nasal type:ENKL,StageⅡ)と診断した。当院小児科にて放射線化学療法(50.4 Gy/28 fr,2/3DeVIC 療法)を完遂し,完全奏効(CR)となった。小児科での CR 判定から 4 カ月後,39℃の発熱と共に左大腿に有痛性の紫斑を伴う血疱が出現し,再度皮膚科へ紹介となった(再発時,図 1 b)。

既往歴:熱性けいれん

現症:左大腿伸側に,紫斑を伴い 30×26×高さ 5 mm の有痛性の血疱を認めた(図 1 b)。

臨床検査所見(下線は異常値を示す)

初発時EBV DNA 定量(全血):9.3×104 IU/ml(慢性活動性 EB ウイルス病診断時の目安:1.0×104 IU/ml 以上),EB-VCA IgG 抗体価(FA 法):1280 倍(慢性活動性 EB ウイルス病診断時の目安:640 倍以上),sIL-2R:635 U/ml(204~587)

再発時EBV DNA 定量(全血):2.9×104 IU/mlEB-VCA IgG 抗体価(FA 法):1280 倍,sIL-2R:444 U/ml

PET-CT 検査:左上顎洞,右下顎骨,左大腿に FDG の異常集積があった

病理組織学的所見(初発時の頰部皮下硬結部):顔面筋や皮下脂肪織にかけて,広範に出血と壊死が認められた。そのなかに血管の分布に一致して異型細胞が密に増殖し浸潤していた(図 2 a)。浸潤する異型リンパ球は CD2 弱陽性,CD3 陽性,CD4 陽性,CD8 陽性,CD30 部分陽性,TIA-1 陽性,Granzyme B 陽性,EBER-ISH 陽性(図 2 b),CD20 陰性,CD56 陰性。

病理組織学的所見(再発時の大腿の血疱):表皮は壊死を来し,表皮下に血疱を形成していた。真皮は血疱直下からびまん性・広範に壊死を呈していた。血管周囲性に多結節状に異型リンパ球が密に浸潤していた(図 3 a,b)。浸潤していた異型リンパ球は,EBER-ISH 陽性(図 3 c),CD2 弱陽性,CD3 陽性,CD4 陽性(図 3 d),CD8 陽性(図 3 e),CD30 部分陽性,TIA-1 陽性,Granzyme B 陽性,CD20 陰性,CD56 陰性。

遺伝子再構成検査(再発時の大腿の血疱,サザンブロット法):T 細胞受容体 β 鎖 Cβ 遺伝子の再構成があった。

診断:#1 節外性 NK/T 細胞リンパ腫,鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma,nasal type:ENKL)#2 慢性活動性 EB ウイルス病(Chronic active EBV disease;CAEBV)

著者関連情報
© 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top