整形外科と災害外科
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人工股関節置換術後の腸腰筋腱炎の1例
新垣 薫大湾 一郎砂川 憲政大嶺 啓山口 健城間 隆史池間 康成金谷 文則
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2007 年 56 巻 2 号 p. 228-232

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抄録
人工股関節置換術後の股関節部痛の鑑別疾患として人工関節の感染,臼蓋コンポーネントのloosening,恥骨の不顕性骨折,腰椎疾患,腹部疾患などがある.今回,人工股関節置換術後に鼠径部痛を来たし,腸腰筋腱炎の診断にて腸腰筋腱切離術を施行し,疼痛が消失した症例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.平成11年右THA,平成12年左THAを施行し,右THA術後4カ月頃より右鼠径部痛を自覚.血液検査所見,骨シンチ,関節穿刺液の培養検査より感染は否定的で,鎮痛剤により経過観察したが疼痛改善を認めなかった.関節内への局麻剤の注入にて一時的に症状が改善し,関節造影にて臼蓋カップの前方に腱性索状物が造影され,身体所見と併せて腸腰筋腱炎と診断.手術にて腸腰筋腱の切離を行ったところ術後は鼠径部痛が消失し,現在は疼痛なく経過.人工股関節置換術後の腸腰筋腱炎は臼蓋カップ辺縁が前方に突出する場合に生じることがあり,術後疼痛の鑑別疾患として念頭におく必要がある.
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© 2007 西日本整形・災害外科学会
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