抄録
全身性エリテマトーデス(SLE)に合併したJaccoud関節炎に伴い,右肘に二つの球形滑液包炎を生じたため,橈骨神経麻痺を呈した稀な症例を経験したので報告する.症例は59歳女性,27歳時にSLEを発症した.2006年6月下旬より右肘の重だるさが出現,次第に手関節,指の伸展が困難となり7月7日当科を受診した.右肘前外側に腫脹を認め,下垂手を呈していた.X線検査では橈骨頭の関節破壊を伴わない変形,いわゆるJaccoud関節炎を認めた.MRIでは橈骨頭の周囲に2つの嚢胞様炎症性病変を認めた.この病変による橈骨神経麻痺と診断し手術を施行した.橈骨頭の前面および外側に直径約2cmの球形滑液包が2個存在し橈骨神経を圧迫,伸展していた.これらを摘出し,橈骨神経麻痺は改善した.本症例はJaccoud関節炎に伴う多発性滑液包炎により橈骨神経麻痺を呈したものと考えられた.