2008 年 57 巻 2 号 p. 200-204
脊椎病変が初症状であった稀な成人T細胞性白血病(ATL)の症例を経験したので報告する.
症例は58歳,男性.頚部痛と右上肢筋力低下を主訴に入院となった.頚椎X線像でC5椎体の融解,また胸部X線像で右下肺野の陰影を認めた.MRIでC5椎体はT1低信号,T2高信号,Gdで造影され,脊髄は前方より圧迫されていた.血液検査で腫瘍マーカーは陰性,炎症所見も乏しかったが,HTLV-1抗体は陽性で,末血にATL cellを認めた.2日後には四肢不全麻痺へ進行したため,その翌日に前方徐圧固定術を行った.病理所見は異型リンパ球細胞浸潤であった.麻痺は改善したが,次第に椎体母床の圧壊,移植骨の脱転を生じた.カンジダ肺炎に対し抗生剤投与を行い,ATLに対し化学療法を開始したが,術後1カ月でほぼ完全な四肢麻痺となり,発症10カ月後に死亡した.