抄録
症例は71歳女性で,腰痛と左下肢痛を主訴に当科受診し,MRIでL5/S1椎間レベルに脊柱管内の嚢腫様陰影を認めた.椎間関節造影は行わなかった.手術はL5椎弓を両側切除し,嚢腫を摘出した.嚢腫内には少量の漿液性の成分と凝血塊を伴っていた.病理組織像で嚢腫壁は黄色靭帯を含む膠原繊維が豊富な硝子化線維組織からなり,lining cellは認めなかった.嚢胞腔形成や粘液変性のようなガングリオンに特徴的所見はなく,椎間関節から発生した滑膜嚢腫と診断した.椎間関節近傍の嚢腫はlining cellの有無や椎間関節との連続性の有無で滑膜嚢腫かガングリオンか診断されていたが,術中所見や病理所見だけでは鑑別困難な例もある.本症例のように椎間関節造影が行われていないことが多く,嚢腫と椎間関節が連続性のないというまとまった報告はなく,滑膜嚢腫もガングリオンも椎間関節から発生するものと考えられた.