2010 年 59 巻 3 号 p. 631-634
大腿骨近位部骨折受傷例に対して入院時に全例,下肢静脈超音波検査を実施し,患者背景における下肢静脈血栓症(以下DVT)の有無について比較,検討を行った.2008年5月~2009年8月の期間に大腿骨近位部骨折にて入院した60例(男性12名 女性48名)を対象とし,年齢,性別,既往歴,抗凝固薬内服歴について,DVT発生の危険性を比較,検討した.DVT陽性例においてD-dimer測定の有用性についても検討を行った.入院時平均年齢は82.2歳,60例中DVT陽性所見は19例(男性5例 女性14例)31.6%,基礎疾患を有する症例は63.2%,抗凝固薬内服症例は21.0%であった.DVT陽性例においてD-dimer高値(>10μg/ml)を示したものは70.0%であった.入院時の下肢静脈超音波検査は大腿骨近位部骨折のDVTスクリーニングとして非侵襲的な診断法であり,肺塞栓症の早期予防に有用であると考えた.