整形外科と災害外科
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THA術中の側臥位による骨盤傾斜の変化
牛島 貴宏中島 康晴藤井 政徳山本 卓明馬渡 太郎本村 悟朗佐藤 太志岩本 幸英
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2010 年 59 巻 4 号 p. 773-777

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抄録

【目的】人工股関節全置換術(THA)症例において側臥位による骨盤傾斜角(PIA)の変化を調査し,さらにその変化が術後の臼蓋コンポーネントの設置角に与える影響を検討した.【対象】初回THAを行った変形性股関節症(OA)84例84関節(男性12関節,女性72関節,平均年齢63.7歳)を対象とした.術前後(仰臥位)および術中(側臥位)の両股正面像を用いて矢状面と前額面のPIAを測定し,臼蓋コンポーネントではその前捻角および外転角を測定した.【結果】術前仰臥位より5°以上後傾した例は26.2%,5°以上前傾した例は9.5%であった.それらを後傾群,不変群,前傾群と分けた場合,臼蓋コンポーネントの前捻角は各群でそれぞれ6.3°減少,3.9°減少,1.7°減少した.同様に外転角は0.9°減少,2.0°増加,5.5°増加した.前額面で患側が頭側に5°以上傾斜した例は17.9%,5°以上尾側に傾斜した例は4.7%認めた.PIAの変化に影響を与える因子として,矢状面の変化には術前仰臥位から立位でのPIAの変化が,前額面のPIAの変化には術前内転拘縮の程度が有意に影響した.【まとめ】側臥位にすることによって骨盤傾斜が5°以上変化した症例は矢状面で35.7%,前額面で22.6%であった.これらの変化はインプラントの設置角へ大きく影響するため,術中の骨盤傾斜の把握が重要である.

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© 2010 西日本整形・災害外科学会
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