2013 年 62 巻 4 号 p. 829-834
2000~2011年まで手の非結核性抗酸菌症で菌同定できた9例(10~78歳)を対象として診断,治療法について検討した.誘因,発症時期,受診までの期間,治療歴,炎症所見,手術所見,病理所見,細菌検査,薬剤感受性,副作用について調査した.
起因菌はM. marinum 4例,M. intracellulare 2例,M. nonchromogenicum 2例,M. chelonae 1例であった.誘因ではM. marinumは4例とも魚介類と関連した外傷や職業であった.M. chelonaeは透析歴20年の患者であった.病理組織検査では肉芽腫性病変を8例,Langhans巨細胞を6例で認めた.培養による同定に要した日数は遅発育菌8例で7~56日(平均26.6日)であった.
非結核性抗酸菌症が疑われた場合は組織損傷を防ぐためにも診断を兼ねた早急な外科的介入が必要と考える.病理組織で認めた肉芽腫性病変は抗菌薬開始の参考とすべきであり,病巣郭清後にリファンピシン,エタンブトール,サイクロセリンから2剤併用で開始して菌種,感受性を参考にして修正するのがよい.