2016 年 65 巻 4 号 p. 662-664
【はじめに】腱鞘線維腫は手指に好発するとされるが,今回足底部に発症した腱鞘線維腫を経験したので報告する.【症例】67歳男性,2ヶ月前より特に誘因なく右足底部に腫瘤を認め,歩行時に違和感あるため当院受診となった.局所所見では右母趾MTP関節底側に約3×3 cmの弾性硬の腫瘤を認めた.MRI上はT1強調像で低信号,T2強調像で低信号と高信号が混在し,造影では腫瘍の辺縁が造影された.術中所見において,腫瘤は長母趾屈筋腱の腱鞘直上に存在していた.病理組織像は紡錘状の線維芽細胞の増生が膠原線維を伴って増加していた.以上より長母趾屈筋腱より発生した腱鞘線維腫と診断した.術後6ヶ月の現在再発は認めていない.【考察】腱鞘線維腫の好発部位は一般的に手指とされている.本症例は足部発生例であり,渉猟し得た範囲で2報告しかなく,珍しい症例と考える.鑑別疾患としては腱鞘巨細胞腫が挙げられる.【結語】当院で経験した比較的稀とされる足底部に発生した腱鞘線維腫の1例を報告した.