2017 年 66 巻 3 号 p. 664-666
【目的】月状骨周囲脱臼を含んだ月状骨脱臼は,手関節部の重度外傷として有名であるが,全手根部外傷の約7%と比較的まれな疾患であり,その25%が初診時に見逃されているとの報告がある.今回,我々は受傷後約40年経過した後に神経症状が出現した症例を経験したため,文献的考察を加え報告する.【症例】66歳男性(右利き).20才代にラグビーの試合中に左手関節脱臼・左小指PIP関節脱臼を指摘されていたが疼痛ないため放置していた.受傷から40年後,特に誘引なく左手指から手掌全体にしびれ感を自覚し,症状軽快しないため当科受診.月状骨掌側脱臼に伴う正中神経障害と診断し,手術加療目的で入院となった.横手根靭帯切離と月状骨摘出を行った.術後正中神経領域の痺れ,疼痛は改善した.【考察】月状骨脱臼に対する手術療法には種々あるが,術前より不安定性が認められない症例に対しては,月状骨全切除術と手根管解放術が効果的である.渉猟した報告と文献的考察を含めて報告する.