2017 年 66 巻 4 号 p. 768-772
手術室入室における一足制が手術室環境,脊椎術後感染(SSI)の発生率に与える影響を調査した.当科で脊椎手術を施行した1376例中,一足制導入前の675例(前期群)と一足制導入後の701例(後期群)で手術室の環境と脊椎術後感染の発生率を比較した.手術室の環境は洗浄度測定,浮遊菌と落下菌の培養を行った.手術室の環境は洗浄度,浮遊菌とも有意な増加はなかった.しかし落下菌はバイオクリーンルームの一室で細菌数の増加を認めたが,基準を超える菌の発生はなかった.脊椎SSIは前期群で28例(4.1%),後期群は24例(3.4%)で,2群間に有意差はなかった(P=0.556, Fisherの正確検定).両群のSSIの起因菌は主にブドウ球菌であり,明らかな起因菌の変化は認めなかった.本研究では手術室環境の変化や術後感染の発生率の有意な悪化は認めなかったが,引き続き継続して調査を行っていく必要がある.