整形外科と災害外科
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多彩な臨床症状を呈したStreptococcus suisを起因菌とした化膿性膝関節炎の1例
力丸 悠山田 聖之吉村 鉄朗
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2018 年 67 巻 1 号 p. 172-174

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抄録

Streptococcus suis(ブタ連鎖球菌以下S.suis)は豚に髄膜炎,敗血症などを引き起こし,ヒトにも感染する人畜共通感染症の1つである.本感染症は髄膜炎や難聴などの合併症を来しDIC,敗血症を来した場合には死亡率は80%にも昇る.症例54歳女性.食肉加工業に従事し豚肉加工の際に手指の切創が度々あった.発熱・左股関節痛を主訴に受診.入院後7時間で右膝痛が出現.膝関節穿刺でGram陽性菌を検出しCEZ投与開始.炎症反応高値と意識障害,難聴,右膝関節著明腫脹を認めた為,化膿性膝関節炎の診断で鏡視下処置,灌流装置留置.第6病日膝関節培養検査でS.suis検出,臨床症状より化膿性髄膜炎の診断でMEPM,CTRX投与開始.第35病日,局所所見と血液検査の改善を認め,抗菌薬を内服に変更.第62病日,両側難聴は残存したが独歩で退院.結語S.suisによる化膿性膝関節炎を経験した.急速進行,多彩な症状を呈する為に,病歴聴取も含めた迅速な診断処置が肝要である.

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© 2018 西日本整形・災害外科学会
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