2018 年 67 巻 4 号 p. 693-696
高齢者の大腿骨近位部骨折は,その治療方針はほぼ確立し,安定した成績を示すが,稀に術後経過不良で再手術となることがある.今回,当院で2013年~2017年までに大腿骨近位部骨折320例に対して手術をおこなった症例のうち,再手術となった症例の原因及び再手術術式の選択に関して,考察を踏まえて報告する.再手術になったものは3例で,骨頭内screwのcutoutを1例,インプラントの折損2例を経験した.cutout症例は再受傷機転による大腿骨頭から頸部にかけての骨折があることから,重なる外傷が原因として考えられた.再手術術式はセメントステムでの人工骨頭換術をおこない,歩行器歩行まで歩行能力は改善した.ネイル折損の2例は遷延癒合を認めており,遷延癒合により金属疲労からネイル折損に至ったと考えられた.同症例の電子顕微鏡検査において折損部の断面は金属疲労による破断を示すストライエーションが認められた.再手術術式は,1例は骨幹部で遷延癒合による再骨折を認めたため,ネイルの入れ替えによる再骨接合術をおこなった.他1例はセメントステムでの人工骨頭置換術をおこなった.2例とも片手杖歩行まで歩行能力は改善した.初回手術後の経過不良の原因と受傷機転などを踏まえ,症例毎の状況を考慮し再手術術式を選択することが重要で,また手術後の確実なフォローアップの必要性を痛感した.