2020 年 69 巻 2 号 p. 268-270
比較的稀とされる踵骨の脆弱性骨折を2例経験したため報告する.1例目は88歳女性,歩行中に誘引なく右踵部の疼痛が出現し,10日後に当院初診,MRIにて右踵骨脆弱性骨折と診断された.疼痛内歩行にて保存加療を行い,初診から約8週で疼痛の消失を認めた.2例目は66歳女性,誘引なく左足関節痛を認め,2週後に当院初診,MRIにて左踵骨脆弱性骨折と診断された.T字杖での疼痛内歩行とし,初診から約8週で疼痛の消失を認めた.踵骨の脆弱性骨折は,明らかな外傷歴がなく歩行可能であること,また初期のX線では骨折線を認めないことから,足底腱膜炎やアキレス腱付着部症,捻挫と診断されることがある.診断には踵骨体部の把握痛が重要であり,骨脆弱性を有している患者においては本骨折を疑い,早期のMRIもしくはX線での経時的なフォローが必要である.治療に関しては,高齢者で免荷が困難な症例も多く,個々に応じた安静度を決めることが重要である.