整形外科と災害外科
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術中に硬膜損傷を確認できなかった腰椎手術の一例
田中 哲也齊藤 太一糸川 高史入江 努中原 寛之青野 誠山手 智志
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キーワード: 腰椎手術, 硬膜損傷, 髄液漏
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2020 年 69 巻 3 号 p. 639-643

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抄録

症例は57歳女性.腰椎変性辷り症に対し,当科にて腰椎椎体間固定術を施行した.術中の硬膜損傷は明らかでなく術後の両下肢痛などは認めなかったが,手術当日の深夜に仙骨部や両臀部,大腿部の強い放散痛が出現した.MRIにて血腫が疑われた為,緊急で血腫除去を行い,2本の吸引ドレナージチューブを設置した.術後排液は淡血性で多く,血腫除去2日目より無圧とした後にチューブを抜去した.その後,低髄圧症状や創部の腫脹,波動が見られ徐々に増大してきた為,髄液漏の診断で再々手術を施行した.創内には脳脊髄液が多量に貯留し直接硬膜表層が確認できる状態であった.硬膜正中のやや右側で馬尾神経がとぐろを巻いた状態で噴出し硬膜と癒着していた.馬尾神経を還納し,硬膜欠損部は筋膜パッチなどを用いて閉鎖した.髄液漏に伴う低髄圧症状や下肢痛は軽快したが,術後から出現した尿閉が持続し自己導尿中である.若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2020 西日本整形・災害外科学会
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