整形外科と災害外科
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69 巻, 3 号
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  • 北出 一季, 藤原 稔史, 薛 宇孝, 遠藤 誠, 松本 嘉寛, 松延 知哉, 岩本 幸英, 中島 康晴
    2020 年 69 巻 3 号 p. 461-465
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景】腫瘍用人工膝関節置換術の術後成績と患肢機能に影響する因子を検討した.【方法】2000年から2017年に腫瘍用人工膝関節置換を行った56例のうちフォロー中断した3例を除く53例(大腿骨遠位38例,脛骨近位15例)を対象とした.平均年齢38.7歳,男性27例,女性26例で,平均経過観察期間は5年4ヶ月であった.治療予後,インプラント生存率,合併症,最終評価時のMSTS Scoreと骨・筋切除量の関連を調査した.【結果】5年生存率は77%,10年生存率は66%で,インプラント10年生存率は90%であった.合併症は計5例に生じ,うち3例に深部感染を生じていた.MSTS Scoreは平均23点と良好で,14㎝以上骨切りした例で有意に歩行と歩容が悪化しており,大腿四頭筋を2筋以上切除した例で有意に歩容が悪化していた.【結論】術後患肢機能温存の為に広範切除は必要最低限にすべきである.

  • 名取 孝弘, 中家 一寿, 吉田 裕俊, 福元 真一, 松原 弘和, 岡本 重敏, 吉武 孝次郎, 柴原 啓吾
    2020 年 69 巻 3 号 p. 466-468
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】骨折治療において術後創部感染症は大きな合併症であり,特に下肢骨折はリスクが高いといわれている.今回当院で行った下腿・足関節・足部の骨折手術症例を対象とし術後感染リスク因子と臨床的特徴を検討した.【方法】2013年4月から2019年3月までの当院で行った下腿から遠位の骨折観血的手術症例234例を対象に,感染例・非感染例に分けて患者背景,術前合併症,手術時間・出血量などについて比較・検討した.感染例は,術後感染が疑われ,かつ培養陽性のものと定義した.【結果】術後感染は234例中10例(4.3%)であった.有意差があったのは「男性」のみであった(P=0.0273).一般的に術後創部感染のリスクと言われる「糖尿病」などでは今回有意差が見られなかった.感染例では足関節骨折が最も多く,原因菌は黄色ブドウ球菌が最も多かった.【考察】有意差の出た術後感染リスク因子は「男性」のみであった.部位別では足関節が最も術後感染リスクが高かった.

  • 明島 直也, 古市 格, 村田 雅和, 小河 賢司, 藤井 由匡, 朝永 育, 重松 孝誠
    2020 年 69 巻 3 号 p. 469-472
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    整形外科領域ではしばしば手術部位感染症(Surgical site infection以下SSI)が問題となることが多い.当院における2016年4月から2019年7月までの四肢外傷骨折の総手術件数は1191例であり,術後に生じたSSIに対して何らかの外科的処置を要した症例は6例(発生率0.5%)であった.性別は男性3名,女性3名で,平均年齢は75歳であった.上肢は1例で,5例は下肢に生じた.感染までの期間は平均21日間で,6例中4例にMRSAの感染を認めた.SSIの危険因子としては開放骨折,糖尿病,ステロイド内服,K-wireの皮外への露出が挙げられた.治療は掻爬洗浄と抗菌薬投与が主体であり,6例中4例で抜釘,1例は下腿切断となった.MSSA感染の1例でインプラントの温存が可能であった.術後の抗菌薬使用期間は平均87日間であり,1例の悪性リンパ腫での死亡例を除き治癒した.

  • 高山 剛, 秋山 隆行, 北島 雄人
    2020 年 69 巻 3 号 p. 473-476
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    2012~18年に整形外科インプラント挿入後の手術部位感染を生じた61~90歳の4症例において掻爬洗浄後の術創内にリン酸カルシウム骨ペーストを充填し抗菌薬徐放性担体として利用した.抗菌薬の経静脈,経口投与を併用しながらではあるが,すべての症例において比較的速やかに感染の鎮静化を得ることができた.リン酸カルシウム骨ペーストは局所抗菌薬濃度を長期間有効域に維持し,なおかつ除去不要な生理活性材料として有用であることが示唆された.

  • 白石 絵里子, 小倉 友介, 井上 貴司, 中村 英智, 吉田 健治, 志波 直人
    2020 年 69 巻 3 号 p. 477-479
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    3歳4か月で診断された発育性股関節脱臼(DDH)に対し観血的整復術(以下OR)とSalter骨盤骨切り術(以下SIO)を同時に施行したので報告する.症例は4歳0か月女児,骨盤位分娩(帝王切開),乳幼児健診での異常はなかった.祖母や3歳で転居先の小児科医から歩容異常を指摘され,当院紹介,両側発育性股関節脱臼と診断した.3歳5か月時,3歳8か月時に牽引療法後に麻酔下徒手整復術を試みるも整復は困難であった.4歳0か月時に右側のOR+SIO,大腿骨内反短縮骨切り術を施行,4歳4か月時に左側にOR+SIOを施行した.4歳7か月時,右大腿骨の抜釘術後に骨切り部での骨折を生じたため骨接合術を要した.現在跛行が残存しているが,骨盤骨切り部や臼蓋の被覆は良好である.DDH診断遅延例が増加傾向にあることが問題視されているため,健診システムの見直しが必要である.また,診断時期や臼蓋形成不全の程度などによって個々の症例に応じた治療法を検討する必要がある.

  • 山口 圭太, 荒木 貴士, 出田 聡志, 伊藤 茂
    2020 年 69 巻 3 号 p. 480-483
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】リスター結節周囲の背側骨片(以下LT骨片)を有する橈骨遠位端骨折に生じた長母指伸筋腱断裂(以下EPL断裂)の2例を報告する.【症例】症例1:69歳,男性.LT骨片の転位は軽度であった.受傷当日に掌側ロッキングプレート(以下VLP)を用いて骨接合術を行った.術後4ヶ月にLT骨片部に生じた仮骨によりEPL断裂を生じたため,抜釘術ならびに腱移行術を行った.症例2:69歳,女性.LT骨片は橈骨茎状突起の皮下まで高度に転位していた.受傷後2日目にVLPを用いて骨接合術を行った.LT骨片によってEPL不全断裂を生じていため,LT骨片を摘出し腱縫合を行った.【考察】LT骨片は転位の有無に関わらずEPL断裂の危険性があり,十分な術前計画と術後経過観察,そして患者に対するインフォームドコンセントが重要である.

  • 井上 孝之, 石井 英樹, 浅見 昭彦, 末次 宏晃, 田島 智徳, 白木 誠, 角田 憲治, 田中 博史
    2020 年 69 巻 3 号 p. 484-487
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    中央陥没骨片を有する橈骨遠位端粉砕骨折は,治療に難渋することもあるが,著者らは掌側ロッキングプレート(volar locking plate以下VLP)単独で固定するため,VLPを遠位に設置し,骨片を選択的に固定する関節内骨片選択的DSS法を用いている.今回,その治療成績を検討したので報告する.2008年以降に,VLPで治療した321例のうち,中央陥没骨片を有していた21例を対象とした.本法を用いたのは9例で,それ以外の12例を対照群とした.臨床評価は最終の関節可動域と握力の健側比を計測し,X線学的評価としてはUV,VT,RIにおける術直後と最終での矯正損失を計測して,両群間で比較した.可動域や握力は両群ともに良好に回復し,有意差はなかった.矯正損失の平均値は,UVが0.06(対照群は0.77)mmで,VTが0.25(対照群は2.31)°で,RIが0.13(対照群1.15)°と有意に改善していた.著明な術後矯正損失を来すこともある本骨折型に対し,整復位を保持するのには有用であると考えた.

  • 飯田 健, 熊谷 謙治, 崎村 俊之, 井上 拓馬, 貝田 英二
    2020 年 69 巻 3 号 p. 488-493
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    41歳男性.4mの高所より転落し左橈骨遠位端骨折(AO分類typeC3)受傷.徒手整復後シーネ固定するも,整復より約7時間後にコンパートメント症候群発症.緊急で減張切開術及び創外固定術施行.腫脹軽減した2週後に内固定,皮弁形成術施行.創外固定は温存とした.内固定術後2週目から創外固定装着下でのROM訓練開始.4週後に創外固定除去としたが,手・指関節拘縮を認め,内固定術後8週目に非観血的授動術施行.ターンバックルも用いROM改善を目指した.内固定術後10週目に,X線で関節面の陥凹,及び関節面への螺子突出を認めたため,内固定術後18週目の骨癒合確認後に骨内異物除去術施行.同時に観血的授動術を施行し更にリハビリ継続とした.術後1年4ヶ月経った時点で,手関節の可動規制限を認めている.早期の整復,早期の減張切開,コンパートメント症候群後の骨癒合不全への対応が必要であった.

  • 藤池 彰, 後藤 剛, 古江 幸博, 渡邊 裕介, 佐々木 聡明, 本山 達男, 永芳 郁文, 川嶌 眞之, 川嶌 眞人, 田村 裕昭
    2020 年 69 巻 3 号 p. 494-497
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】比較的稀な大菱形骨脱臼骨折に対して観血的骨接合術を行った一例を報告する.【症例】54歳男性,プレス機で手を挟んで受傷,同日近医を受診した.単純X線では明らかな骨折所見を認めないものの,腫脹が強く,同日当院に紹介された.CTで大菱形骨の背側脱臼骨折を認め,外来にて整復不能,同日に手術加療となった.整復位保持が困難であり,観血的手術で大菱形骨・舟状骨関節をK-wireで固定,その後にtransvers carpal ligamentの付着部を含む骨片を固定した.術後はthumb spicaシーネ固定とし,術後32日目で大菱形骨・舟状骨関節固定のK-wireを抜去した.リハビリ時以外は外固定を行い,術後6週で外固定を終了した.その後は外来での経過観察を継続している.【まとめ】大菱形骨脱臼骨折に対して骨折観血的手術を行い,良好な骨癒合を得た.

  • 篠崎 智香子, 田中 祥継, 村岡 邦秀, 田中 秀明, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 3 号 p. 498-501
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    手根管症候群の診断には,神経伝導検査が有用で,客観的な診断基準のひとつとされている.ただし,症状が進行し重度になると正中神経の支配筋である短母指外転筋,母指対立筋,短母指屈筋浅頭の筋力低下および母指球筋の萎縮がみられ,さらに軸索障害が高度になると手掌刺激法を用いた,短母指外転筋複合筋活動電位(abductor pollicis brevis-compound muscle action potential;APB-CMAP)が導出不能となる.しかし,そのような重症症例の患者においても一部では手根管開放術後に筋力が回復する症例がみられる.よって,APB-CMAPが導出不能かつ母指球筋の萎縮および母指対立運動障害を有する重症手根管症候群に対して,手根管開放術を行い,術後に筋力の回復を見込めるのか,または,手根管開放術のみでは筋力の回復を見込めず,一期的に母指対立機能再建術を必要とするかを術前に予測可能となれば非常に有用となる.本研究の目的は,APB-CMAPが導出不能かつ母指球筋萎縮および母指対立運動障害を認める手根管症候群例を重症症例とし,手根管開放術後の術後筋力回復因子について検討することである.

  • 相良 智之, 村岡 邦秀, 田中 祥継, 田中 秀明, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 3 号 p. 502-504
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    透析手根管症候群(以下CTS)は保存加療が無効で手術適応となることが多い.患者の多くは内科合併症のため抗血栓薬を内服しているにもかかわらず,シャント側では術中ターニケットを使用できないうえ,全身麻酔のリスクが高く局所麻酔下での手術となる場合がある.今回我々は当院で行なったシャント側CTSに対する局所麻酔下での鏡視下手根管開放術(以下ECTR)例を後ろ向きに調査した.2009年から2019年の間に当院で局所麻酔下にECTRを行なったシャント側CTS12例13手(男8例,女4例,平均年齢67.6歳)を対象とした.術後経過観察期間は平均30か月であった.手術方法は局所麻酔下にターニケット非使用でのSingle-portala endoscopic techniqueである.診療録を後ろ向きに調査した結果,全例で術前の症状改善が認められ,合併症や再発はなかった.シャント側CTSに対するECTRに関して,やむなく局所麻酔下での手術を選択せざるを得ない場合には,抗血栓薬の調整やエピネフリンの併用などに加えて術中の血圧をコントロールできればより安全に手術が行える可能性が示唆された.

  • 三重 岳, 小倉 雅, 東郷 泰久, 有島 善也, 海江田 光祥, 音羽 学, 加世田 圭一郎, 佐々木 裕美, 谷口 昇
    2020 年 69 巻 3 号 p. 505-507
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    当院では重度手根管症候群に対し,環指浅指屈筋腱を用い,Guyon管をプーリーとして一期的に母指対立再建術を行っている.今回,その治療成績について報告する.2011年5月~2019年3月に手術を行い術後6カ月以上経過観察可能であった18例22手,手術時年齢70~88歳(平均80歳)を対象とした.術前後の電気生理学的所見,Hand20,SWT,握力,Pulp pinchについて比較検討した.電気生理学的検査においてPadua分類extremeでは半数以上が術後もextremeであったが,Hand20は全例で改善を認め平均57.9点の改善を認めた.母指対立障害を主訴とする重度手根管症候群に対し一期的母指対立再建術と早期運動療法を併用し良好な成績が得られた.

  • 水田 康平, 大久保 宏貴, 大中 敬子, 仲宗根 素子, 金城 政樹, 西田 康太郎
    2020 年 69 巻 3 号 p. 508-511
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    15歳女性.1年程前からバレーボール後に左手関節痛を自覚したが,安静にて症状が改善したため医療機関を受診しなかった.4か月前グランドゴルフで地面を強打した後から疼痛が増悪し,近医を受診した.単純X線像で骨傷を認めず,装具療法・安静を指示された.2か月後に疼痛の改善なく再診した.単純X線像で月状骨の圧潰を認め,ギプス固定を行うも,圧潰が進行し当院を紹介された.初診時,左手関節背側に圧痛を認め,握力は4kg(健側比22%)と低下,手関節可動域は背屈40°/掌屈10°と制限を認めた.単純X線像で月状骨の扁平化と分節化を認め,ulna varianceは-2.4mmで橈骨遠位骨端線は閉鎖していた.MRIではT1,T2強調像ともに月状骨が低輝度を呈し,Lichtman分類stageⅢ-Aのキーンベック病と診断した.圧潰の進行を認めたため橈骨短縮骨切り術を行った.術後13か月で疼痛は著明に改善.握力:22㎏(健側比117%),手関節可動域:背屈80°/掌屈80°と改善し,MRIで月状骨のrevascularizationを認めた.

  • 川越 麗, 副島 修, 榎田 真吾, 塚本 和代
    2020 年 69 巻 3 号 p. 512-516
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    母指CM関節症に対するThompson法は,大菱形骨摘出に加え長母指外転筋腱(APL腱)の移行による靱帯再建と吊り上げを行う関節形成術である.今回,APL腱の代わりにsuture buttonを単独で使用したThompson変法術後の長期経過について報告する.症例は2例2指,Eaton分類はstage 3とstage 4,術後経過観察期間は2例とも48ヶ月であった.疼痛(VAS),握力,ピンチ力,母指可動域,DASH/HAND20は2例とも改善を認めた.一方でMP関節過伸展変形の出現ないし増悪を認め,さらに1例においては早期より母指列沈下もみられた.Suture buttonを使用した本法は簡便な方法ではあるものの,糸断裂による母指列の急激な沈下や第2中手骨骨折などの重篤な合併症も報告されている.適応は慎重に検討する必要があると思われ,可能な限り強固な吊り上げと靱帯再建を行う事が望ましいと考えられる.

  • 梅木 駿, 仙波 英之, 生田 光, 北村 貴弘, 堀田 謙介, 坂本 和也, 安元 慧大朗, 境 真未子, 小林 孝巨, 志田原 哲
    2020 年 69 巻 3 号 p. 517-519
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    ニューキノロン系抗菌薬の副作用として腱障害が挙げられる.諸家によりニューキノロン系抗菌薬によるアキレス腱障害の報告はされているが,ニューキノロン系抗菌薬が誘因と考えられる手指伸筋腱障害の1例を経験したので報告する.症例は65歳男性.前医で皮膚感染症に対して,ニューキノロン系抗菌薬を投与され,感染兆候は改善傾向にあったが,その後,非外傷性に左示指,中指,環指の伸展障害が出現した.原因薬剤中止後1週間で示指は症状改善を認めた.半年経過し,中指,環指は伸展障害軽度残存するが,日常生活に支障は出ておらず,保存的に経過観察中である.薬剤性の腱障害は,薬剤への初回暴露より数日から数カ月以内に起こることがあり,薬剤を中止した後でも発症する可能性がある.非外傷性腱障害の症例でキノロン系抗菌薬の服薬歴がある場合,薬剤性腱障害の可能性も念頭に置きながら診療にあたることが重要である.

  • 弓場 久嗣, 西尾 淳, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 3 号 p. 520-521
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    手には種々の腫瘍および腫瘍類似疾患が発生するため,時に診断と治療に難渋することがある.2008年4月から2019年4月までの期間に当院で手術を施行され,病理診断が得られた35例(男性14例,女性21例,平均年齢50歳)を対象に,発生部位,病理診断,再発の有無を検討した.発生部位は手関節4例,手掌8例,手背1例,固有指部22例で,右手20例,左手15例であった.病理診断は腱鞘巨細胞腫14例,脂肪腫4例,腱鞘線維腫3例,類表皮嚢腫3例,その他1例ずつであった.悪性は未分化多形肉腫の1例のみであった.局所再発を2例に認めた.手の表在性腫瘤は小さいうちに自覚し治療している場合が多く,その大半が良性であった.

  • 井上 隆広, 井上 三四郎, 菊池 直士, 増田 圭吾, 岩崎 元気, 田中 宏毅, 中村 良, 川本 浩大, 泊 健太, 阿久根 広宣
    2020 年 69 巻 3 号 p. 522-524
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】コンパートメント症候群は典型的な症状・徴候が早期に出現せず,診断・治療に躊躇することがある.ローラー損傷に合併した上肢コンパートメント症候群の3例を経験したので報告する.【症例】症例1.41歳女性.職場でローラーに巻き込まれ受傷.骨傷・血管障害なし.手指運動感覚障害・他動伸展時痛なく,橈骨動脈触知良好で経過観察した.受傷翌日水泡形成を認め,内圧測定で上昇あり.減張切開施行した.症例2.43歳男性.芋掘り機に右前腕を挟まれ受傷.右前腕腫脹・緊満感や手指運動感覚障害あり.内圧測定で上昇あり,同日減張切開を施行した.症例3.79歳男性.芋掘り機に右上肢を巻き込まれ受傷.上肢デグロービング損傷及び母指・示指開放骨折あり.同日骨接合術施行.術中内圧測定で上昇あり減張切開施行した.【考察】臨床所見や内圧所見も重要であるが,病歴・受傷起点を正確に把握し総合的に判断することが必要である.

  • 馬渡 大介, 園田 和彦, 原 俊彦, 岸川 準, 浜崎 晶彦, 美浦 辰彦, 牛島 貴宏, 畑中 敬之, 山名 真士, 新井 堅
    2020 年 69 巻 3 号 p. 525-527
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【背景】側臥位での人工股関節全置換術(THA)においては仰臥位と異なり,矢状面の体位設定が正確でなければカップの設置精度は低下する.我々は以前から,術前ポータブルX線で術前計画時のFunctional Pelvic Plane(FPP)を再現するよう体位補正して手術を行っている.今回,体表のみを基準に側臥位にした場合の術前X線・体位補正後術前X線とFPPとの矢状面における誤差について検証した.【方法】対象はprimary THA症例30例30股関節.術前ポータブルX線撮影前に,体幹(上腕骨頭と大転子を結ぶ線)に対して平行になるよう,骨盤矢状面を設定した.X線撮影し,術前計画で作成したDigital Reconstructed Radiograph(DRR)画像を元に,体位補正を行った.術後に補正前後のX線とDRRを重ね合わせてFPPとの誤差を計測した.【結果と考察】補正前は30例中11例(36.7%)で誤差6°以上であった.一方,体位補正を行うと全症例で誤差5°以内であった.術前体位補正はカップの設置角度に影響すると考えられた.

  • 押領司 将人, 木下 浩一, 坂本 哲哉, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 3 号 p. 528-531
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】イメージ使用仰臥位前外側アプローチTHA(AL-SA THA)におけるカップ設置の正確性を評価した.【対象と方法】2017年10月から2019年7月までに当科でイメージを併用しAL-SA THAを行った症例を対象とした.結果に記載する患者背景およびX線学的評価項目を調査した.【結果】患者背景は81例92股(男21股,女71股),平均年齢は67.6歳,平均BMIは24.3kg/m²,原疾患は変形性股関節症65股,特発性大腿骨頭壊死症26股,関節リウマチ1股であった.外方開角は平均41±3.1度,前方開角は平均15±4.8度であった.【まとめ】外方開角については満足のいく正確性が得られたが,前方開角については改善の余地がある.

  • 花谷 拓哉, 小林 恭介, 千葉 恒, 木寺 健一, 尾﨑 誠
    2020 年 69 巻 3 号 p. 532-534
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【緒言】人工股関節全置換術の合併症として血管損傷は稀であるが,診断が遅れると致命的となりうる.今回我々は人工股関節全置換術後に下殿動脈仮性動脈瘤を生じた1例を経験したので報告する.【症例】54歳男性.既往歴に27歳時に左外傷性股関節脱臼に対して,観血的整復術を施行されている.今回左股関節痛が徐々に増強したため,当院受診.続発性股関節症に対して人工股関節全置換術を施行した.術後広範な皮下出血,貧血の進行を認めたため,術後3日目に血管損傷を疑い造影CTを施行した.下殿動脈仮性動脈瘤を認め,同日緊急で塞栓術を行った.【考察】人工股関節全置換術の合併症として血管損傷は0.1%程度と発生頻度は低いが,術後疼痛,血腫,著明な貧血の進行を認める際には造影CTを行い,早期診断を行う必要があると考える.

  • 貞松 毅大, 前田 純一郎, 江良 允, 朝長 匡
    2020 年 69 巻 3 号 p. 535-538
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】人工骨頭挿入術において従来の後側方アプローチ(PL)と共同腱温存後方アプローチ(CPP)でステムアライメントを比較検討した.【対象】VLIANステムを用いて人工骨頭挿入術を行った44股を対象とした.PL群27股,CPP群17股において手術時間,術中出血量,ステムアライメントを比較した.【結果】手術時間はPL群平均72.2分,CPP群平均59.8分,術中出血量はPL群平均133.4ml,CPP群平均99.8mlであった.ステムアライメントは正面像/軸射像でPL群96%/93%,CPP群94%/100%が中間位挿入となっていた.【考察】CPPは共同権および後方間接法の一部を温存することで関節安定性を高めるがPLと比較してステム挿入性が悪くなることが危惧される.近位外側をラウンドした形状のVLIANステムは挿入性を高めることが可能で,CPPでも良好なステムアライメントが期待できる.

  • 杉野 晴章, 米倉 豊, 河野 俊介, 馬渡 正明
    2020 年 69 巻 3 号 p. 539-541
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    人工股関節全置換術の良好な成績には術後合併症の予防と長期的に安定した固定性が必要である.今回,銀の抗菌性能とハイドロキシアパタイトの骨伝導能を併せ持った銀含有ハイドロキシアパタイト(Ag-HA)コーティングセメントレス抗菌ステムを使用して人工股関節全置換術を行った31例を対象として,術後合併症とステム初期固定性の評価を行った.22例(71%)は高齢,糖尿病,透析,膠原病などの感染合併リスクを有する症例であったが,術後感染合併症例はなかった.sinkingやlooseningを呈した症例もなく,3度以上のstress shieldingを認めた症例は1例のみであり,15ヶ月以上経過した症例では全例bone ingrowth fixiationを認めていた.Ag-HAコーティングセメントレス抗菌ステムは術後感染予防に優れ,初期固定性に関しても信頼に足るステムであると考えられた.

  • 入江 桃, 藤井 政徳, 川原 慎也, 池村 聡, 濵井 敏, 本村 悟朗, 中島 康晴
    2020 年 69 巻 3 号 p. 542-545
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】臼蓋コンポーネントで正常股関節中心を再現出来るかを明らかにすること.【方法】特発性大腿骨頭壊死症に対して手術を行った患者64例の健側64股関節を対象とした.3Dテンプレート上でSQRUMカップ(京セラ)をconventional又はperipheral reaming,それぞれにoffset linerを使用した4通りの方法で設置し,正常股関節中心との距離を計測した.【結果】Conventional reamingでは41%しか股関節中心を再現出来なかったが,peripheral reamingにより75%,offset linerにより88%,その併用により全例で股関節中心の再現が可能であった.【結論】Peripheral reamingで股関節中心を再現出来ない症例においても,offset linerを併用することで股関節中心の再現が可能であった.しかし,offset linerは摩耗量が多いとの報告もあり適応は慎重に選ぶべきである.

  • 小笠原 正宣, 三宅 智, 伊崎 輝昌, 柴田 光史, 新城 安原, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 3 号 p. 546-550
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)を合併した肩腱板断裂患者に対する滑膜切除術や人工関節置換術の報告はあるが,腱板修復術の報告は少ない.本研究の目的は,RAを合併した肩腱板断裂に対する鏡視下腱板修復術(ARCR)の治療成績を明らかにすることである.【対象と方法】当院にてARCRを施行し,術後1年以上フォロー可能であった,RAを合併した肩腱板断裂8例8肩(手術時平均年齢67.2歳,中断裂4肩,大・広範囲断裂4肩)の臨床成績と画像所見を後ろ向きに調査した.【結果】平均VASスコアは有意に改善を認めた(術前53.7点vs術後15点,P=0.003).平均JOAスコアは有意に改善を認めた(術前58.7点vs術後85.8点,P=0.003).再断裂率は50%であった.【結語】RAを合併した肩腱板断裂患者に対するARCRは肩機能の改善は期待できるが,RAの罹患期間が長い患者または断裂範囲の大きい患者では再断裂率が高くなることが示唆された.

  • 宮坂 悟, 梶山 史郎, 佐田 潔, 尾﨑 誠
    2020 年 69 巻 3 号 p. 551-555
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】陳旧性肩甲下筋腱(SSc)断裂に対し大腿筋膜を用いた前方関節包再建術を行い,良好な結果が得られたので報告する.【症例】64歳男性.右腱板断裂に対して鏡視下腱板修復術を施行.同時期健側の左肩はbelly-press test陽性でSSc断裂が疑われたが,症状に乏しく経過観察としていた.右肩手術から2年後転倒し左肩挙上困難となり当科受診.MRIではSScの筋萎縮を伴う完全断裂と腱板後上方の大断裂を認め手術を施行した.SScの一次修復は困難と考え,大腿筋膜を用いて前方関節包再建術を行い,後上方の断裂は鏡視下に修復した.【考察】陳旧性SSc断裂に対して前方関節包再建術を行うことで,belly-press test陽性は残存したものの,受傷前レベルまでの内旋機能の改善が得られた.本法は一次修復不能なSSc断裂に対する有用な手術法の1つであると考えられた.

  • ―肩甲下筋腱修復法の比較―
    三浦 渓, 徳永 琢也, 唐杉 樹, 宮本 健史
    2020 年 69 巻 3 号 p. 556-560
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】肩甲下筋腱を含む腱板断裂に対する鏡視下腱板修復術(ARCR)において,肩甲下筋腱(SSc)の修復方法が術後成績に及ぼす影響を明らかにすること.【方法】2012年から2018年に当院でARCRを施行し,術後6ヶ月以上の経過観察が可能であった70例を対象とした.SScをsingle row法で修復したSR群(38例)とsuture bridge法で修復したSB群(32例)について,年齢,性別,外傷歴,断裂サイズ,可動域,再断裂,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score)を後ろ向きに評価し比較した.【結果】SB群において,大断裂以上の割合(SR:47.4%,SB:81.3%)とLafosse分類type 3以上のSSc断裂の割合(SR:21.1%,SB:56.3%)が有意に高かった.その他の背景因子と術後成績はいずれも群間に有意な差はなかった.Lafosse分類type 3以上のSSc再断裂率はSR群25%(2/8),SB群0%(0/16)であった.【結論】SScを含む腱板断裂に対するARCRにおいて,SR法とSB法の間で術後成績に差はないものの,SScの再断裂の点からはLafosse分類typea 3以上の断裂に対するSB法の有用性が示唆された.

  • 白井 佑, 蓑川 創, 南川 智彦, 山崎 慎, 秋吉 祐一郎, 野村 智洋, 原 純也, 柴田 陽三
    2020 年 69 巻 3 号 p. 561-564
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    反復性肩関節脱臼に対する烏口突起移行術は,Bristow法(B法)とLatarjet法(L法)があり,近年,術後移行骨片の骨吸収の報告が散見される.我々は,その骨形態変化が関節安定性に関与していると考え,両術式の術後成績とCTによる移行骨片の骨形態変化を関節面積に着目して検討した.6ヵ月以上経過観察できた34例35肩(平均22.7歳)を対象.B法11肩,L法24肩.両術式の術前と最終経過観察時の臨床成績,および両術式のCTによる移行骨片の骨形態変化を関節面積で評価した.各種臨床評価法を用いて,術前と最終経過観察時を比較し,両術式共に有意に改善したが,両群間に差はなかった.術直後と最終経過観察時のCTを比較では,L法は移行骨片の骨吸収のため,関節面積が縮小していた.一方B法は,移行骨片の関節窩接触部の増殖性変化のため増大していた.B法は関節窩接触部の増殖性変化のため,一度癒合が得られればL法に比し高い骨性支持が得られると推察した.

  • 柴田 悠人, 菊川 憲志, 田村 諭史, 小田 勇一郎, 白石 大偉輔, 福間 裕子, 浦田 泰弘
    2020 年 69 巻 3 号 p. 565-569
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    当院における変形性肩関節症(OA)に対する解剖学的人工肩関節置換術(TSA)の術後短期治療成績について検討した.対象は12例14肩(女性14肩,時平均年齢76.1歳),平均経過観察期間は15.8ヶ月であった.日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準は有意に改善するも70点未満が1肩認めた.自動屈曲・外転・外旋も有意に改善,屈曲・外転では改善12肩,悪化2肩,外旋では改善12肩,不変1肩,悪化1肩であった.自動内旋は改善9肩,不変5肩であった.術後合併症は特に認めなかった.単純X線による評価は,肩峰骨頭間距離は術前8.9±3.4mm,術後8.4±4.6mmと変化を認めなかったが,Oizumi分類では改善0肩,不変11肩,悪化3肩であった.radiolucent lineを1肩に認め,looseningは認めなかった.

  • 津覇 雄一, 山口 浩, 当真 孝, 呉屋 五十八, 大城 裕理, 森山 朝裕, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2020 年 69 巻 3 号 p. 570-573
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    高齢者の腱板断裂を伴う肩関節前方脱臼の1症例を経験したので報告する.79歳,女性,無職.バイク走行中に転倒して受傷,同日救急搬送された.単純X線像で右肩関節前方脱臼を認め,同日徒手整復された.整復後に撮影された単純X線像で肩甲関節窩小骨片を伴う前方関節唇損傷を認めたが,骨片が小さいため保存療法が行われた.受傷後5ヵ月で右肩痛・挙上困難が持続するため近医を受診した.肩甲関節窩骨欠損を伴う右肩関節亜脱臼と診断され当科へ紹介された.当院初診時,肩関節可動域(以下,ROM)は屈曲40°,外旋-45°,内旋不可で,単純X線像では肩甲関節窩骨折部の骨欠損増大,立位で亜脱臼位となる不安定性を認めた.手術では骨頭軟骨損傷を認めたため人工骨頭置換,肩甲関節窩へ切除骨頭を用いた骨移植,腱板修復術を行った.術後8週間は外転装具を用いて固定を行った.術後28ヵ月で肩関節可動域は屈曲125°,外旋30°,内旋L5,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下,JOAスコア)は81点まで改善し,単純X線像では亜脱臼を認めていない.

  • 山崎 慎, 南川 智彦, 蓑川 創, 秋吉 祐一郎, 野村 智洋, 原 純也, 白井 佑, 柴田 陽三
    2020 年 69 巻 3 号 p. 574-577
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】近年,上腕骨近位端骨折に対してRSAの使用が可能となった.骨接合群,人工骨頭置換群,RSA群の術後成績を比較検討したので報告する.【対象と方法】3-partおよび4-partの上腕骨近位端骨折に対して手術を施行し,術後1年以上追跡可能であった41例(男性8例,女性33例)を対象とした.平均年齢70.3歳(33~91歳).平均待期期間13.2日.術後平均観察期間25.3ヵ月(12.0~100.4ヵ月).骨接合・人工骨頭・RSAに分けJOAスコア・可動域・合併症を調査した.【結果】術後平均可動域は,骨接合(26例)/人工骨頭(9例)/RSA(6例)の順で屈曲(°)128.8/107.8/108.3,外旋(°)41.2/32.2/17.5,内旋Th12.7/L1.4/L4.8,術後平均JOAスコア(点)は,82.9/81.1/77.2であった.合併症として,偽関節・骨頭壊死はなく,感染2例(骨接合1例,RSA1例)であった.【結語】上腕骨近位端骨折の術後成績は比較的良好であった.骨折型に合わせて手術法の選択をすることが重要と考えられる.

  • 青木 佑介, 山口 浩, 伊佐 智博, 森山 朝裕, 金城 聡, 大湾 一郎, 西田 康太郎
    2020 年 69 巻 3 号 p. 578-581
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    合併症により保存的に加療した2-part上腕骨近位端骨折で20°以上の内反変形をきたすも機能予後が良好であった3例を経験した.【症例1】51歳女性.転倒し受傷.頚体角は受傷時115°,受傷後4週95°と内反変形の進行を認めた.超音波骨折治療を行い受傷後6カ月で骨癒合した.【症例2】82歳女性.転倒し受傷.頚体角は受傷時110°,受傷後4週100°と内反変形の進行を認めた.受傷後6カ月で骨癒合した.【症例3】81歳女性.転倒し受傷.頚体角は受傷時130°,受傷後6週105°と内反変形が進行し遷延癒合を認めた.テリパラチド投与を行い受傷後4カ月で骨癒合した.3症例とも長期間リハビリテーションを行い屈曲が健側の80%以上の可動域に回復した.【考察】長期間リハビリテーション継続可能な症例では,内反変形が残存しても機能障害は少ない可能性が考えられた.

  • 林田 一友, 伊藤 弘雅, 森 啓介, 白濵 正博, 志波 直人
    2020 年 69 巻 3 号 p. 582-584
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    肩甲骨体部水平骨折に対しプレート固定を施行した1例を経験したので報告する.症例は32歳男性.700ccバイク乗車中,左カーブを曲がりきれずに転倒し側溝に落ち受傷し救急搬送された.単純X線検査およびCT検査で,肩甲骨体部の水平骨折を認めた.術はプレート固定を施行した.術後1週間は三角巾固定,術後2週より振り子運動・肩関節passive ROM訓練を開始し,術後3週よりは肩関節active ROMを開始した.今回の症例では,プレート固定により解剖学的整復を得て術後早期にROM訓練を開始し良好な肩関節機能を温存する事ができた.

  • 当真 孝, 山口 浩, 大城 裕理, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2020 年 69 巻 3 号 p. 585-589
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    症例1,38歳,男性,会社員.歩行中に車にはねられ受傷.救急搬送時Japan Coma Scale(JCS)200,外傷性くも膜下出血(SAH),びまん性軸索損傷(AI),左上腕骨骨折と診断.全身状態不良のため上腕骨骨折は保存療法を行った.受傷後9年で中等度高次脳機能障害が残存し,肩関節可動域(ROM)は屈曲120°,外旋15°,障害者就労支援施設に勤務している.症例2,19歳,男性,大学生.バイク走行中に転倒し受傷.救急搬送時JCS 200,SAH,AI,血気胸,頭蓋骨・右肩関節脱臼骨折と診断.受傷後22日目に観血的脱臼整復術を施行した.術後1年で復学し,術後33カ月で骨頭・関節窩変形を認め,ROMは屈曲140°,外旋60°,内旋T12レベルであった.症例3,24歳,男性,会社員.歩行中に車にはねられ受傷.救急搬送時JCS 100,SAH,頚椎歯突起・左下腿・左上腕骨骨折と診断.受傷後4日目に骨接合術を施行した.術後1年で復職し,術後2年でROMは屈曲140°,外旋75度であった.

  • 山田 唯一, 福岡 昌利
    2020 年 69 巻 3 号 p. 590-593
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は稀な鎖骨近位端骨折,肩鎖関節後方脱臼を合併した症例を経験したため報告する.【症例】48歳男性.約2mの高さから転落し受傷.単純X線像にて右鎖骨近位端骨折,右肩鎖関節脱臼が認められ,転位が大きいため手術加療を行った.手術所見では,肩鎖関節後方脱臼をテンションバンド固定することにより鎖骨近位端骨折部を寄せたが,転位が残存していたため金属螺子での固定を追加した.【考察】鎖骨重複損傷は受傷メカニズムが明確にされていない.本症例では肩峰前外側からの外力により肩鎖関節後方脱臼が起こり,その後烏口鎖骨靭帯を支点として鎖骨を回旋させる力のモーメントが発生,近位部には剪断力が作用し近位端骨折を引き起こしたと推測した.肩鎖関節後方脱臼に近位端の骨折を合併した場合には骨折部のみ着目され,脱臼が見落とされる可能性があるため注意が必要である.

  • 親富祖 徹, 山口 浩, 呉屋 五十八, 当真 孝, 森山 朝裕, 大城 裕理, 砂川 秀之, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2020 年 69 巻 3 号 p. 594-597
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    51歳男性,ホテル勤務.バイク走行中に転倒受傷し,近医に救急搬送された.単純X線像で左肩関節後方脱臼骨折を指摘された.静脈麻酔下に脱臼整復を試みるも整復困難であった.受傷翌日に全身麻酔下に螺子2本を用いた観血的脱臼整復術及び骨接合術を施行し,術後三角巾・バストバンドを用いた内旋位固定が行われた.術後14日目,外来受診時に再脱臼と骨折を認めたため当科へ紹介された.初診時肩関節可動域(以下,ROM)は屈曲40°,外旋-45°,内旋不可,単純X線像,CTで転位・再脱臼を認めた.初回手術後3週目で観血的脱臼整復・髄内釘を用いた骨接合を行った.術後8週間は外転装具を用いて外旋位固定し,早期より手指・肘の拘縮予防・肩甲帯リラクゼーションを行った.ROM訓練は術後4週目から行った.受傷後4カ月で復職し,受傷後20カ月で単純X線像上再脱臼なく,ROMは屈曲125°,外旋30°,内旋L5であった.

  • 上田 章貴, 萩尾 友宣, 吉村 一朗, 金澤 和貴, 長友 雅也, 杉野 裕記, 山本 卓明
    2020 年 69 巻 3 号 p. 598-600
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    第一中足骨遠位直線状骨切り術(DLMO法)は,骨切り後の遠位骨片の外側移動量を術者がコントロールすることができない.今回,DLMO法における中足骨頭外側変位量の推移を調査した.対象は外反母趾に対しDLMO法を施行した16例21足(男性3例,女性13例,年齢平均44歳)を対象とした.荷重位単純X線足背底像を用い術前,術直後,術後3ヶ月および術後12ヶ月でのHVA,IMA,中足骨頭外側変位量の推移を調査した.中足骨頭外側変位量は骨切り部全幅に対する骨頭外側移動量の割合と定義した.臨床評価は術前,術後12ヶ月のJSSF scoreを調査した.中足骨頭外側変位量は術直後は53%,術後3ヶ月で44%,術後12ヶ月で33%と経時的に減少していた(p<0.01).HVAは術前31度が術後12ヶ月では17度に有意に改善し,JSSF scoreは術前67点が術後12ヶ月では89点に有意な改善を認めた.DLMO法において中足骨頭外側変位量は経時的に減少していたが,臨床成績は良好であった.

  • 林原 雅子, 榎田 誠, 石田 孝次, 榎田 信平, 柳樂 慶太, 林 育太, 永島 英樹
    2020 年 69 巻 3 号 p. 601-604
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    Freiberg病の成人女性2例に対し,背側楔状骨切り術と骨軟骨柱移植術をそれぞれ行った結果から術式選択について検討したので報告する.【症例1】24歳女性,罹病期間1年であり,X線,CTでSmillie分類stage4と診断し,自家骨軟骨柱移植術を行った.術前後のJSSFscaleは52点から90点へ改善した.【症例2】23歳女性,器械体操を始めた9歳で発症したが放置していた.画像所見では骨頭圧潰とOA変化がみられ,Smillie分類stage5と診断した.背側楔状骨切り術を行い,抜釘後はOAによる痛みが軽度残存しているが,JSSFscaleは49点から85点へ改善した.【考察】Freiberg病の進行期では,背側楔状骨切り術と骨軟骨柱移植術が主に行われるようになった.いずれも良好な成績が報告されているが,合併症を減らすためには,それぞれの特性を十分考慮して術式選択すべきである.

  • 後藤 裕之, 緒方 宏臣, 川谷 洋右, 山下 武士, 今村 悠哉, 福田 雅俊, 谷村 峻太郎
    2020 年 69 巻 3 号 p. 605-608
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    下腿痛により尖足拘縮を起こした1例を経験したので報告する.症例は33歳の男性,当科受診の約2か月前に左下腿をつったような痛みを自覚,その後下腿痛が持続するため安静にしていたところ足関節背屈困難となったため近医整形外科を受診,精査加療目的に当科紹介となった.足関節は背屈-50度,底屈60度と著名な可動域制限を認めた.各種画像検査ではCTにて腓腹筋の萎縮を認めるのみで,その他尖足拘縮をきたすような器質的疾患は認めなかった.また神経伝導速度,針筋電図にても明らかな所見は認めなかった.各検査にて尖足となり得る異常所見は認められず,痛みのために筋肉の廃用性萎縮,拘縮が生じ,尖足拘縮に至ったと推測され,White slide techniqueに準じたアキレス腱延長術を施行した.術後3か月で歩行は安定,可動域は背屈15度,底屈50度に改善し,良好な術後成績が得られている.

  • 福永 幹, 今里 浩之, 福嶋 研人, 横江 琢示, 山口 洋一朗, 日吉 優, 舩元 太郎, 中村 嘉宏, 池尻 洋史, 坂本 武郎, 関 ...
    2020 年 69 巻 3 号 p. 609-611
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】母趾以外の外傷性Metatarsophalangeal(以下,MTP)関節脱臼は稀とされ,大部分は徒手整復可能であるが不能例も存在する.今回,観血的整復を要したMTP関節脱臼の一例を経験したため報告する.【症例】18歳男性,バイク運転中に軽自動車へ衝突し受傷,当院搬送.Xp,CTにて第3~5趾MTP関節の背側脱臼と第2中足骨頚部骨折を認めた.透視下に徒手整復を施行し,第5趾のみ整復できたが,3~4趾は不能であった.同日,観血的整復へ移行し,第3・4趾間MTP関節に陥頓した関節包,虫様筋を認めた.整復阻害因子と考えられ,背側進入を選択し,陥頓の解除で容易に整復可能であった.4週MTP関節をこえるシーネ固定,踵部荷重を許可し,12週後の観察時,再脱臼は認めていない.【考察】観血的整復を要した第3・4・5外傷性MTP関節脱臼の一例を経験した.徒手整復不能例は速やかに観血的整復への移行が必要である.整復困難であった3・4足趾には関節内に陥頓した関節包及び虫様筋を認め整復阻害因子と思われた.

  • 今里 浩之, 帖佐 悦男, 坂本 武郎, 濱田 浩朗, 池尻 洋史, 中村 嘉宏, 舩元 太郎, 日吉 優, 山口 洋一朗, 高橋 巧, 松 ...
    2020 年 69 巻 3 号 p. 612-614
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】種子骨の背側陥入を認める母趾趾節間(IP)関節脱臼は稀である.今回4週経過した陳旧性のIP関節脱臼を経験したため,報告する.【症例】40歳男性.28日前,2mの高さから転落し左足をついて受傷.近医にて左母趾の裂創の処置を受けるも,疼痛は改善せず当院受診となった.単純X線にて母趾IP関節の脱臼を認め,CTでIP関節の背側に種子骨を認めた.徒手整復は不可能であった.同日背側アプローチで進入し,背側の種子骨と掌側板を底側に押し込むと脱臼を整復できたが,易脱臼性を認めIP関節固定と背側block pin施行した.術後は6週でPin抜去し,再脱臼なく経過し,最終JSSF score(6か月)は95点であった.【考察】IP関節脱臼で種子骨の背側嵌頓を認める場合,観血的整復が必要であり,本症例でも同様であった.

  • 江﨑 克樹, 小澤 慶一, 田代 英慈, 白石 さくら
    2020 年 69 巻 3 号 p. 615-616
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    足趾MTP関節脱臼は比較的稀な外傷であるが,陳旧例となると非常に稀である.今回我々は受傷から約6年経過し,初診した症例を経験したため報告する.【症例】61歳女性【主訴】足底部痛【病歴】6年前に椅子の足に足趾をぶつけ受傷.腫脹,疼痛あったが病院受診せずに,症状は軽減した.足底に胼胝ができ疼痛を認めたため前医受診,第2,3趾背側脱臼を認め当科紹介となった.徒手整復は不能であり,手術の方針となった.【手術所見,経過】切除関節形成術を行った.足底部痛,胼胝は改善した.【考察】足趾脱臼は受傷早期に受診する場合が多く,容易に徒手整復できることが多い.陳旧性となった場合徒手整復が困難となり,外科的加療が必要となることがある.今回,陳旧性足趾MTP関節脱臼の1例を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 朝永 育, 明島 直也, 藤井 由匡, 小河 賢司, 村田 雅和, 古市 格
    2020 年 69 巻 3 号 p. 617-621
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】踵骨隆起骨折は比較的稀な骨折である.今回踵骨隆起骨折5例の治療成績を報告する.【対象と方法】全例女性であり,平均77歳(68-86歳),受傷機転は全例転落外傷であった.骨折型はBeavis分類type1が2例,type2が3例であった.手術までの平均待機日数は1.6日であった.手術はcancellous bone screw(CCS)とtension band wiringを併用したものが4例,suture anchorによるbridging法が1例であった.【結果】1例でscrew刺入部に皮膚潰瘍を生じたため早期に抜釘を行ったが,全例骨癒合が得られた.【考察】踵骨隆起骨折は骨脆弱性を伴う患者に起こりやすく,下腿三頭筋の牽引力による転位や皮膚潰瘍が生じやすく,治療は困難とされている.そのため骨折形態や患者背景に考慮した固定方法の選択が必要である.

  • 平本 貴義
    2020 年 69 巻 3 号 p. 622-624
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【目的】比較的稀な踵骨骨端線損傷の1例を経験したので報告する.【症例】12歳男児.現病歴:5歳より体操競技を始め,2年前より体操競技の際は常に右踵部に疼痛を認めていた.床運動で,ジャンプをしようと踏み込んだ際に強い疼痛あり,以後歩行困難となり当科受診した.画像所見:単純レントゲン像・CT像にて踵骨アキレス腱付着部の近位1/2の骨端核が頭側に10mmほど転位しており,踵骨骨端線損傷と診断した.手術時所見:骨片を牽引して整復し,足関節底屈位でK鋼線2本とsuture tapeでテンションバンド法にて固定した.後療法:術後4週からアキレス腱装具にて全荷重開始.術後2か月で装具除去し,術後4か月で体操競技に復帰した.術後8か月で抜釘を行い骨端線は閉鎖して癒合した.【考察】アキレス腱による過剰な牽引力が骨端核に加わり,成長軟骨板が破綻し骨折を生じたと考えられた.手術においては骨端線に影響の少ない鋼線固定を選択しsuture tapeによる締結を加えることで強固な固定が得られ,経過も良好であった.

  • 青木 佑介, 伊佐 智博, 森山 朝裕, 金城 聡, 大湾 一郎, 仲宗根 哲, 西田 康太郎
    2020 年 69 巻 3 号 p. 625-627
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    レボフロキサシン服用後にアキレス腱断裂を受傷した若年患者の1例を経験したので報告する.【症例】32歳女性.10歳時に全身性エリテマトーデスを発症し,以降22年間ステロイド剤を使用していた.急性咽頭炎に対してレボフロキサシンの服用を開始し,翌日より両下腿後面に軽度の疼痛が出現した.レボフロキサシンはその後計7日間内服を継続し服用を終了した.服用終了後両下腿後面の疼痛は一時消失するも,内服終了3週間後,歩行中に左下腿後面に疼痛,腫脹,皮下出血が出現し,当科を初診した.左アキレス腱断裂と診断し,底屈位固定による保存療法を8週間行った.受傷後2か月のMRIではアキレス腱の連続性が認められた.受傷後8か月の時点で再発なく経過している.【考察】ステロイド使用歴のある患者に対してはニューキノロン系薬剤の使用に際してはアキレス腱断裂の副作用を念頭に置く必要があると考えられた.

  • 谷村 峻太郎, 緒方 宏臣, 山下 武士, 川谷 洋右, 今村 悠哉, 福田 雅俊, 後藤 裕之
    2020 年 69 巻 3 号 p. 628-633
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】踵骨骨折の骨接合術後に非結核性抗酸菌(M. fortuitum)による術後感染を起こした一例を経験した.【症例】左踵骨骨折に対して骨接合術(RSスクリュー)を施行.骨接合術後4週で創部の腫脹・熱感が出現,抗菌薬内服開始となったが症状改善なく当院紹介となった.術後感染と診断し洗浄デブリドマンを施行した.CEZ,MEPMが奏功せず,MRIで立方骨まで及ぶ骨髄炎を認め術後10日目に再度洗浄した.術後11日目に抗酸菌培養が陽性と診断されRFP,EB,CMに変更するも改善なく術後21日目にM. fortuitumが同定され,感受性試験からMINO,CPFX,RFPに再変更した.CRPは改善するも局所所見はくすぶり,術後42日目に三度目の洗浄施行,その後の経過は良好で現在までに再燃はない.【考察】M. fortuitumは迅速発育抗酸菌に属し,自然界に広く分布し術後感染症の起因菌となり,基本的な抗結核薬に耐性がある.術後長期間経って発症する症例が報告されており,また長期治療を念頭に置く必要がある.

  • 兼行 祐司, 松田 光太郎, 平岡 弘二, 濱田 哲矢, 中田 路子, 中島 帆奈美, 森重 聡, 長藤 宏司, 大島 孝一, 志波 直人
    2020 年 69 巻 3 号 p. 634-638
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    成人T細胞白血病(Adult T-cell leukemia-lymphoma;ATL)は,Human T-cell lymphotropic virus type-1(HTLV-1)を原因とし,一旦発症すると予後不良な血液疾患である.今回,骨病変をきっかけとして診断されたATLの1例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.左第1趾の歩行時痛を主訴に近医を受診した.単純X線で左第1趾基節骨に骨融解像を認め,MRI画像では骨皮質を破壊する病変を認め,当科紹介となった.切開生検を施行し,T細胞系の異型細胞の増殖を認めたため,血液内科を紹介した.PETでは左第1趾,腹部の皮膚,左頚部リンパ節に異常集積があった.皮膚病変の生検でもT細胞系異型細胞が増殖しており,血液検査で抗HTLV-1抗体陽性であったため,ATLの診断に至った.ATLの初発時の臨床症状はリンパ節腫脹,皮疹,高Ca血症,肝脾腫が多いとされている.ATLにおいて骨病変を呈するものは少なく,初診時の主訴が骨症状であるものはまれと思われる.

  • 田中 哲也, 齊藤 太一, 糸川 高史, 入江 努, 中原 寛之, 青野 誠, 山手 智志
    2020 年 69 巻 3 号 p. 639-643
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    症例は57歳女性.腰椎変性辷り症に対し,当科にて腰椎椎体間固定術を施行した.術中の硬膜損傷は明らかでなく術後の両下肢痛などは認めなかったが,手術当日の深夜に仙骨部や両臀部,大腿部の強い放散痛が出現した.MRIにて血腫が疑われた為,緊急で血腫除去を行い,2本の吸引ドレナージチューブを設置した.術後排液は淡血性で多く,血腫除去2日目より無圧とした後にチューブを抜去した.その後,低髄圧症状や創部の腫脹,波動が見られ徐々に増大してきた為,髄液漏の診断で再々手術を施行した.創内には脳脊髄液が多量に貯留し直接硬膜表層が確認できる状態であった.硬膜正中のやや右側で馬尾神経がとぐろを巻いた状態で噴出し硬膜と癒着していた.馬尾神経を還納し,硬膜欠損部は筋膜パッチなどを用いて閉鎖した.髄液漏に伴う低髄圧症状や下肢痛は軽快したが,術後から出現した尿閉が持続し自己導尿中である.若干の文献的考察を加え報告する.

  • 密川 守, 瀧井 穣, 副島 修, 佐伯 和彦, 渡邊 徳人, 矢野 真太郎, 川越 麗, 内藤 正俊
    2020 年 69 巻 3 号 p. 644-649
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    椎間板ヘルニアに対する新しい治療法としてコンドリアーゼ注入療法が承認され,全国で使用されだしている.今回は注入後3か月での評価を行えた20例について,症状(JOABPEQおよびNRS評価)とMRI所見について評価し,その有効性について検討した.全例保存的治療を行ったが改善が得られず,従来ならば手術やむなしと考えられた症例を適応とした.注入後3か月評価では,MRIにおいてヘルニアの縮小が18例に認められた.症状的には下肢痛としびれについては比較的良好な改善が得られたが,腰痛が残存しやすい傾向が認められた.症状が改善しADLに支障無しが16例,何らかの支障ありが4例であった.全例で手術は回避できており,患者の満足度も良好であった.適正な適応を選択することで,椎間板ヘルニア治療の選択肢として有望であると考えられた.

  • 富永 冬樹, 吉本 隆昌, 碇 博哉
    2020 年 69 巻 3 号 p. 650-653
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】腰椎椎間板ヘルニアに対する新しい低侵襲な治療としてコンドリアーゼ椎間板内注入療法がある.【対象と方法】コンドリアーゼ注入療法を行い1ヵ月以上経過観察できた20例(男性15例,女性5例)を対象とした.平均年齢は43.8歳(20-74歳),高位はL4/5が10例,L5/S1が10例であった.調査項目は注入前と注入後1ヵ月に,臨床評価として腰痛・下肢痛VAS,ODI,JOABPEQを,画像評価としてMRIでのヘルニアの大きさと椎間板高を調べた.【結果】腰痛VASは注入前平均4.2から注入後2.5と軽度改善し,下肢痛VASは平均7.1から平均2.9に有意に改善し,ODIも平均46.5%が平均22.0%に有意に改善した.JOABPEQも5項目すべてで有意に改善した.ヘルニアの大きさは注入前平均55.9mm²が注入後平均41.9mm²に縮小し,椎間板高は平均10.4mmが平均9.7mmと著変なかった.【結語】コンドリアーゼ注入後,下肢痛VAS,ODIは有意に改善した.年齢が若い症例でより効果を認める印象であり,症例を選べば低侵襲で効果を期待できる治療法である.

  • 國分 康彦, 山下 彰久, 野村 裕, 原田 岳, 渡邊 哲也, 橋川 和弘, 太田 浩二, 大角 崇史, 但馬 祐季, 上妻 隆太郎, 白 ...
    2020 年 69 巻 3 号 p. 654-656
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2020/11/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】腰部脊柱管狭窄症や成人脊柱変形に対するLateral Lumbar Interbody Fusion(以下;LLIF)の術後1年での骨癒合率は85%~97%と報告されている.【方法】2015年3月~2018年5月に当院で腰部脊柱管狭窄症と腰椎変性すべり症に対しLLIFを施行した63症例83椎間を対象に,術後3ヶ月,1年のCTでの骨癒合を評価した.Cage内で上下の椎体終板と連続する骨梁構造が得られているものを完全な骨癒合と定義し,cage外での骨性架橋や椎間関節の癒合を骨性の安定化と定義した.【結果】44椎間(53%)で完全な骨癒合,69椎間(83%)で骨性の安定化もしくは完全な骨癒合が得られていた.【考察】CTでのcage内骨癒合に着目すると,過去の報告より骨癒合率は低い結果となった.LLIFにおける骨癒合率および骨癒合の評価方法や形態について文献的考察を交えて報告する.

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