2021 年 70 巻 1 号 p. 70-75
【症例】74歳女性.歩行中に右手をついて転倒受傷した.右上腕骨近位端骨折と診断され保存的に加療されていたが,右肩関節痛が持続したため,受傷3ヶ月後に当院受診となった.右肩関節の自動可動域は屈曲95°,外転95°,外旋25°,内旋S levelであった.Xp,CTで上腕骨近位部が外反位で変形癒合していた.MRIでは棘上筋・棘下筋の断裂を認めた.右上腕骨近位端骨折変形癒合の診断で,リバース型人工肩関節全置換術(RSA)を施行した.上腕骨は後捻20°,小結節中央の高さで骨切りし,大結節はインピンジが消失する最小限の骨切除を行った.術後1年時点での自動可動域は,屈曲110°,外転115°,外旋40°,内旋L4 levelと改善した.また,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score)は術前51点から術後1年時点で86点へ改善した.【考察】上腕骨近位端骨折変形癒合に対するRSAは,成績良好であると報告されている反面,技術的に困難であることも指摘されている.骨切り面の形態が通常と異なるため,大結節の処置やstem挿入位置に注意することが必要であると考えられる.