2022 年 71 巻 3 号 p. 438-441
【はじめに】膝関節内の遺残散弾が原因と思われる変形性関節症を経験したので報告する.【症例】77歳男性,1975年に散弾銃暴発による銃創治療の既往がある.2021年4月より左膝関節痛が増強し近医を経て当院紹介受診となった.単純X線でK-L分類gradeⅣのOA変化と左膝周囲に多数の散弾と覆われる金属球を認め,手術希望があり人工膝関節置換術を施行した.術中所見で軟部組織内に散弾と思われる金属球を認め,関節表面にも複数個の金属球が埋没していた.通常手技で手術施行,骨切り面に複数の金属断面を認め可及的に摘出した.肉眼およびX線透視で膝関節内に遊離散弾が無いことを確認し手術を終了した.術後経過に特に問題なく,術後15日目に自宅退院となった.【考察】受傷当時からこれまでに急性鉛中毒の発生既往は無かったが,術前の血中鉛濃度は25.2ug/dlと正常上限値を僅かに超えており,今後も定期的なfollow upが必要と考えている.