整形外科と災害外科
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71 巻, 3 号
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  • 河野 翔, 黒木 智文, 李 徳哲, 永井 琢哉, 比嘉 聖, 黒木 修司, 濱中 秀昭, 帖佐 悦男
    2022 年 71 巻 3 号 p. 333-338
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】頸椎前方固定術の合併症である食道損傷の発生率は0.1~0.45%と報告されている.今回,我々は頸椎前方固定術後に発症した食道損傷の2例を経験したので文献的考察を加えて報告する.【症例1】41歳女性,頸椎椎間板ヘルニアの診断で頸椎前方除圧固定術を施行中にエアードリルが食道に接触した.術後に創部膿瘍から口腔内常在菌を検出し,嚥下造影検査にて食道損傷と診断した.保存的加療により術後56日で食事摂取が可能となった.【症例2】54歳女性,頸椎骨肉腫の診断で頸椎前方固定術及び術後放射線治療を施行された.術15年後に感染を伴う食道瘻のためプレート抜去されたが椎体の骨溶解像を認め,生検で口腔内常在菌が検出された.保存的加療によりプレート抜去後1年3ヶ月で食事摂取可能となった.【考察】頸椎前方固定術後の食道損傷は発症時期や穿孔部の大きさで治療が異なる.本症例では診断に嚥下造影検査が有用であった.長期絶食期間を要した.

  • 眞島 新, 久保田 健介, 河野 修, 坂井 宏旭, 益田 宗彰, 森下 雄一郎, 林 哲生, 横田 和也, 大迫 浩平, 伊藤田 慶, 前 ...
    2022 年 71 巻 3 号 p. 339-346
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】成人脊柱変形手術では矢状面に加え冠状面バランス不良の是正が重要である.特にoblique take-offは冠状面バランス不良遺残の原因となるため注意を要する.Lenkeらが報告したkickstand rod(KR)法は,冠状面の傾斜側にロッドを追加し腸骨稜から胸腰椎移行部に向け自転車のスタンドの様に支持・矯正力をかける手技である.KRは冠状面バランス不良を是正し全体の剛性を増強することでoblique take-offの矯正や術後の矯正損失予防に効果があると報告されている.今回,成人脊柱変形患者にKRを併用し変形矯正固定を行ったので報告する.【症例】59歳女性.腰痛,左下肢痛を主訴に受診.腰椎変性後側弯症と診断し,KRを併用し変形矯正固定術を行った.手術にてC7-CSVLは左69mmから0mmと改善.肩バランス不良も無く良好な冠状面バランスが獲得でき,術後半年でも維持されていた.【結語】本症例ではKRを併用し良好な冠状面バランスが獲得・維持できた.

  • 石田 太朗, 石原 俊信, 宮﨑 正志, 阿部 徹太郎, 津村 弘
    2022 年 71 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    58歳女性,主訴は腰痛である.45歳時にTLIF(L3-4),PLF(L4-5),椎弓切除術(L3/4-L4/5),50歳時に椎弓切除術(L2/3),ヘルニア摘出術(左L5/S1)を施行されたが,経時的に後側弯変形の進行と,立位,歩行継続での疲労性の腰痛を認めるようになった.C7-CSVL:6.2cm,Cobb角:18°(L2-S1),LL:-14°,PI:52°,PT:39°,SS:13°,SVA:20.2cmであり,腰椎固定術後のrigidな後側弯変形であったため,asymmetrical PSO(L5)を用いた矯正固定術を施行した.術後C7-CSVL:0.5cm,Cobb角:0°(L2-S1),LL:46°,PT:24°,SS:28°,SVA:1.5cm,PI-LL:8°と改善を認め,体幹バランス不良に伴う腰痛は軽快し,現在のところ矯正損失なく経過している.Asymmetrical PSOは左右非対称にPSOを行い,矢状面と冠状面の矯正を同時に行う術式で,rigidな後側弯変形が適応とされている.医原性後側弯症でありrigidな変形であった本症例においてasymmetrical PSOは有用な術式であった.

  • 黒木 啓吾, 黒木 智文, 永井 琢哉, 比嘉 聖, 黒木 修司, 濱中 秀昭, 帖佐 悦男
    2022 年 71 巻 3 号 p. 352-354
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    要旨:びまん性特発性骨増殖症(以下DISH)に伴う椎体骨折は不安定性が強く,手術が必要な場合が多い.今回Double endplates penetrating screw(以下DEPS法)と5.5mmのチタンロッドを用いた後方固定で良好な成績を得たので報告する.症例は83歳男性,1週前に転倒し,疼痛のため体動困難となり,紹介入院となった.DISHに伴う第2腰椎骨折と診断し,手術を施行した.腹臥位で可及的に後弯を保持し,O-armナビ下に経皮的に3above-3belowのDEPSを刺入,5.5mmのチタンロッドで締結した.術直後は第2腰椎の終板角が20度と開大していたが,術後7ヶ月で7度と減弱し,スクリューの緩みはなく,骨癒合が得られた.DISHに伴う骨折には強固な固定力のあるDEPS法と術後のしなりによる整復を利用した5.5mmチタンロッドによる経皮的後方固定が有用と考える.

  • 内田 裕己, 安樂 喜久, 立石 慶和, 安藤 卓, 平井 奉博, 上川 将史, 有村 仁志, 大野 貴史, 後生川 輝
    2022 年 71 巻 3 号 p. 355-358
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    目的:上腕骨近位端骨折に対する髄内釘による骨接合術における内反転位とネイル設置位置の関係について検討する.対象・方法:2017年2月~2021年4月に骨接合術を施行した27例を対象とし,内反転位の有無を術直後および最終観察時の単純X線正面像での上腕骨頚体角の変化量で評価した.また正面像・側面像でのネイル先端から骨頭中心までの距離,軟骨下骨からネイル先端までの距離を計測し,頚体角の変化量が5°以上群と5°未満群に分けて各計測値との相関を調査した.結果:全例で骨癒合を確認した.内反転位は5°以上群が6例で5°未満群が21例であった.各計測値はいずれも2群間に有意差は認めなかったが,計測値を合計したTotal Distance from Tip(以下TDT)は,5°未満群で有意に小さかった.結語:内反転位が少ない群でTDTが小さかったという今回の結果は,内反転位抑制にはヘッドアンカリング及び,骨頭正中からのエントリーと設置が重要であることを支持する.

  • 前田 純一郎, 西野 雄一朗, 笠原 峻, 朝長 匡, 江良 允, 宮本 俊之
    2022 年 71 巻 3 号 p. 359-362
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】TFNA(DePuy Synthes社)におけるtip apex distance(TAD)を調査し,他のラグスクリュータイプのインプラントと比較すること.【対象】2020年4月から2021年8月までにTFNAを用いて骨接合術を行った89例(手術時平均85.3歳)を調査の対象とした(T群).対照群は過去にラグスクリュータイプのインプラントを使用した101例(N群:ナビゲーション使用55例,M群:ナビゲーション非使用46例)とし,各群におけるTADを比較検討した.【結果】TADはT群平均17.2mm,N群平均13.6mm,M群平均15.5mmであり,TFNAではラグスクリュータイプのインプラントに比べTADが大きくなる傾向にあった.【考察】TFNAはヘリカルブレードによって骨を圧縮し固定力を得るという特徴がある一方,ブレード長によってTADが規定されるというpitfallも併せ持つ.骨頭穿破を避けるため短めのブレードを選択した結果,TADが高値となることもあり得るため注意が必要である.

  • 坂本 幸成, 土持 兼之
    2022 年 71 巻 3 号 p. 363-366
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    近年,整形外科領域において超音波エコーの利用はさらに広がりつつある.しかし,骨折の整復位確認におけるエコー検査の応用はいまだ限定的である.大腿骨転子部骨折の手術に際し,大腿骨頚部前内側皮質の骨性支持獲得が重要であることは諸家の報告にあり,一般的には透視を用いて動的な評価を行うが,Cアームの可動域の制限により頚部前内側皮質を的確に捉えるのは困難な場合が多く,また被曝量の問題もある.一方,超音波エコーは被爆もなく,簡便に行え,場所を選ばず施行できる点が有用である.2020年6月から2021年3月の期間に,大腿骨転子部骨折に対し髄内釘を用いた骨接合術を行った21例を対象とした.全例術直前非観血的整復後と術直後で麻酔下に超音波エコーを用いて整復位を確認した.また,術後CT検査を全例施行し整復位の確認を行った.超音波エコーと術後CTの整復位の一致率は95%であり,単純X線での評価と比較して有用であることが示唆された.

  • 相良 智之, 中島 圭, 弓場 久嗣, 長松 晋太郎, 平井 伸幸, 浅山 勲, 白濵 正博
    2022 年 71 巻 3 号 p. 367-370
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】強固な内固定が困難な高齢者の不安定型転子部骨折に対して,早期荷重歩行の獲得を目的に,一期的に人工骨頭置換術を施行してきたので報告する.【対象と方法】症例は2016年~2021年に加療した17例(男4例,女13例)であった.年齢は平均83歳(64~97歳)で,手術までの待機期間は平均4日(2~7日),手術は遠位固定型ステムを使用し,15例で大転子のワイヤー締結,2例でフックプレートの併用を行った.術翌日から全荷重歩行を許可した.検討項目は,手術時間,術中出血,全荷重までの日数,在院日数などであった.【結果】手術時間は平均98分(50~170分),術中出血は平均530g(100~1680g),全荷重までの日数は平均4日(1~15日),在院日数は平均75日(52~125日)であった.不安定型大腿骨転子部骨折に対する治療法は,第一選択は骨接合術であるが,早期荷重を目的に人工骨頭置換術も選択肢の一つとして考えている.

  • 伊藤 勇人, 米倉 豊, 白木 誠
    2022 年 71 巻 3 号 p. 371-373
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    (はじめに)大腿骨転子部骨折に対する治療は早期の手術が推奨されている.今回抗凝固薬・抗血小板薬の内服が大腿骨転子部骨折に対する脊椎麻酔を用いた早期手術へ与える影響を調査した.(方法)2018年12月から2021年8月に手術を行なった大腿骨転子部骨折34例(男性2例,女性32例,平均年齢89.5歳)を対象とした.抗凝固薬・抗血小板薬内服群17例と年齢,性別をマッチングさせた対照群17例を比較検討した.手術待機日数,術中出血量,術前後のヘモグロビン値,輸血の有無,脊椎麻酔後の神経症状,腰椎MRI検査での硬膜外血腫の有無について評価した.(結果)内服群,対照群ともに術中出血量,術前後のヘモグロビン値,輸血の有無に差は認めなかった.また神経症状が出現した例はなく,MRI検査で硬膜外血腫も認めなかった.(考察)抗凝固薬・抗血小板薬の内服は大腿骨転子部骨折患者に対する脊椎麻酔を用いた早期手術は可能であると考える.

  • 迫 教晃, 北村 歳男, 田中 光, 小笠原 正宣
    2022 年 71 巻 3 号 p. 374-377
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】上腕二頭筋長頭腱内より発生するガングリオンの報告は極めて少なく,渉猟し得た限りでは国内外で6例のみである.今回発生起源の検索のため詳細な検察を行なった症例を報告する.【症例】63歳女性.特に誘因なく右肩の膨隆を自覚.受診時上腕二頭筋内側に沿って腫瘤を認めた.膨隆部に圧痛は認めなかったが,結節間溝に圧痛,speed test陽性を認めた.MRI T2強調1mmの3Dviewでは断端の形状は特定できなかったが,エコーでは結節間溝部にて腱鞘の不正像を認めた.上腕二頭筋長頭腱内ガングリオンの診断で摘出術を施行した.関節鏡では上腕二頭筋長頭腱の結節間溝出口部にて一部変性を認めた.結節間溝部では上腕二頭筋長頭腱の内部に腫瘤が存在し,摘出した腱の外見では腱の表層に亀裂を認めたが,茎は確認できなかった.【まとめ】一般に腱内ガングリオンは腱内発生し関節との交通がないとされている.今回の症例では外的因子の確定には至らなかった.関節内との交通も完全には否定できないが,腱内発生の方が可能性は高いと考えられた.詳細な術前検査を行い,術中所見や術後の病理標本に置いて十分な評価を行ったが,関節内との交通は確認できなかった.

  • 柳田 隆宏, 佐々木 宏介, 中尾 侑貴, 神宮司 誠也
    2022 年 71 巻 3 号 p. 378-381
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【和文抄録】症例は69歳・女性.約1年持続する保存治療抵抗性の左肩痛があり,当科を紹介受診された.初診時の左肩単純X線にて,肩峰下腔に遊離体が1個存在し,肩峰・上腕骨大結節骨棘など変形性変化も認めた.またMRIでは,この遊離体はT1およびT2強調像とも低信号であり,棘上筋全層断裂も認めた.肩関節自動可動域は屈曲140°/外転120°/外旋60°/内旋L2,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score)は68点であった.鏡視下滑膜切除・遊離体摘出・腱板修復・肩峰下除圧術を施行した.摘出遊離体と切除滑膜の病理組織検査結果より,遊離体の病態が二次性滑膜骨軟骨腫症と診断確定された.術後1年6ヵ月の最終経過観察時,自動可動域は屈曲170°/外転160°/外旋80°/内旋Th10,JOA scoreは100点,遊離体再発や腱板再断裂は認めず,良好な治療成績が獲得されていた.

  • ―X線,CTを用いた評価―
    松本 祐季, 松浦 恒明, 進 訓央, 兼川 雄次, 手島 鋭, 衛藤 凱
    2022 年 71 巻 3 号 p. 382-385
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】鏡視下腱板修復術(ARCR)術後に肩関節のX線撮影を行うが,同時に撮像される胸部の観察を忘れてしまう傾向にある.術後X線画像で気胸を認めた症例を経験したため,安全管理目的で撮影した術後の胸部CTを評価した.本研究の目的は,ARCR後の胸部CT画像の各種所見を把握し,全身状態に影響する所見かどうか判断することである.【方法】2021年7月から2021年11月までに初回のARCRを施行した患者の術直後の胸部CT画像を後ろ向きに検討した.【結果】症例は10例(男性7例,女性3例,平均年齢67.3歳)であった.皮下気腫を10例,患側の胸水を7例,患側有意の両側無気肺を6例認めた.術後に全身状態の悪化を起こした症例はなかった.【結語】ARCR術後の皮下気腫,胸水,無気肺はよく起こりうる病態であるが,術後の全身状態への影響は小さいことが示唆された.

  • 岩崎 大志, 海江田 英泰, 前迫 真吾, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 3 号 p. 386-389
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    上腕骨頭の前外側偏位を定量化したTranslation of the humeral head scale(以下T-scale)の術前値は腱板修復術後の予後因子となることが示唆され,Critical shoulder angle(以下CSA)は腱板断裂の有病率や術後成績との関連が報告されている.今回,T-scaleとCSAとの関連について検討したので報告する.対象は当院で関節鏡下腱板修復術(以下ARCR)を施行した27肩とした.評価項目は術前後のT-scale,JOA score,自動屈曲角度を計測し,CSAとの関連を調べた.結果については,術前のT-scaleは腱板修復術により術後有意に改善し,術前のT-scaleとCSAとの間に有意な正の相関を認めた(相関係数0.50:P<0.001)一方で,CSAと術前後のJOA scoreとの間に有意な相関は認められなかった.これらの所見により,術前T-scaleと腱板断裂の有病率との関連が示唆された一方で,CSAが大きいと腱板修復術後成績が不良となる説を我々の結果は支持しなかった.

  • 渋田 祐太朗, 北村 歳男, 小笠原 正宣, 田中 光, 迫 教晃
    2022 年 71 巻 3 号 p. 390-393
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】肩甲骨は複数の筋肉により微妙なバランスが維持された状態で胸郭上で機能している.肩甲骨のバランスの不全状態は脱臼や肩の痛みの原因になる.肩甲骨下角は逆三角形を呈した頂点部で小さい部位ではあるものの,複数筋肉が付着している.転位のある肩甲骨下角骨折は翼状肩甲を来たす状態があり,報告例も少なく,ピットホールと考え報告する.【症例】72歳男性.肩甲骨下角骨折に対し,筋縫合は行われず,骨片摘出のみ施行された.肩甲骨下角骨折は転位があったが,機能的に問題ないと考えられ,放置された.その後,術後8日にリハビリ目的に当院紹介となった.バストバンドと臥位訓練によるリハビリを行ったが,翼状肩甲と肩甲骨動作時の轢音を認めた.【結語】転位のある肩甲骨下角骨折は翼状肩甲を来すことがあり注意が必要である.

  • 当真 孝, 山口 浩, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 比嘉 浩太郎, 上原 史成, 東 千夏, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 3 号 p. 394-397
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【抄録】85歳,女性.10歳時戦傷にて左上肢切断.7年前より右股関節痛,右肩痛が出現.近医にて保存療法が行われていた.その後右股関節痛のため歩行困難になり車椅子を使用していた.2年前に人工股関節置換術を施行.歩行能力が改善し,杖を用いる機会が増えたため,1年前より右肩痛が増悪.手術目的で紹介された.初診時,左上腕は近位1/3の部分で切断されており,義手を装着し生活していた.右肩関節可動域は屈曲80°,外旋-20,内旋不可,画像検査は単純X線で関節症性変化,MRIでは腱板広範囲断裂を認めた.リバース型人工関節置換術も検討したが,杖を使用するなどの右上肢の負荷を考え人工骨頭置換術(腱板修復・大胸筋移行術併用)を選択した.術後13ヵ月右肩疼痛は改善,自動肩関節可動域屈曲100度,外旋20度,内旋Sレベルへ改善を認めた.【結語】 患肢荷重が必要な例には,人工骨頭置換術も選択肢の一つであると思われた.

  • 大森 治希, 伊﨑 輝昌, 三宅 智, 新城 安原, 小林 駿介, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 3 号 p. 398-401
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    〈はじめに〉超高齢社会である本邦においてリバース型人工肩関節置換術(RSA)施行件数は増加傾向である.後期高齢者のうち85歳以上のRSA術後短期成績を調査した.〈対象と方法〉当施設で施行したRSA患者のうち85歳以上で術後2年以上追跡調査可能だった7例8肩を対象とした.RSA適応疾患は腱板断裂性関節症(CTA)5肩,骨折3肩であった.術前・術後JOAスコア,UCLAスコア,関節可動域,合併症などを検討した.〈結果〉術前と比較し,CTAと骨折どちらも術後臨床機能スコアは有意に改善した(p<0.05).関節可動域は挙上と外旋で有意に改善した(p<0.05).再手術を要した合併症はなかった.〈考察〉85歳以上の高齢者に対するRSAの臨床成績は他の年齢層におけるRSA施行例と比較して遜色はなかった.平均余命を考慮しても比較的安全で有用な術式であると考えられた.

  • ―下方傾斜の違いによる比較―
    木村 太一, 竹内 直英, 小薗 直哉, 鍋島 央, 田代 英慈, 中島 康晴
    2022 年 71 巻 3 号 p. 402-405
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】リバース型人工肩関節置換術におけるbaseplate pegの下方傾斜とpegの逸脱との関連を検討すること.【対象と方法】43例を対象とした.Equinoxe baseplateを使用し,専用のsoftwareを用いて解析を行った.CT dataを基に肩甲骨の3D画像を作成した.pegの位置を関節窩中心(C群),前方1mm,(A1群)前方2mm(A2群)の3群に分け,下方傾斜を0°,5°,10°の3パターンでpegの非逸脱率を評価した.また上記検討をstandardとsmallの2sizeで施行し,baseplate sizeによる非逸脱率の評価も行った.【結果】pegの非逸脱率の割合は,双方のsizeで下方傾斜0°が5°,10°に比べて高かったが有意差は認めなかった.また関節窩中心より前方にpegを配置すると非逸脱率が高い傾向にあった.【考察】baseplate pegを肩甲骨長軸より前方2mmでかつ下方傾斜を0°に刺入すると骨外への逸脱を最も軽減できることが示唆された.

  • 甲斐 裕基, 田村 論史, 小田 勇一郎, 白石 大偉輔, 松原 秀太, 髙田 紘平, 菊川 憲志
    2022 年 71 巻 3 号 p. 406-409
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    当院にてリバース型人工肩関節置換術(RSA)を施行した53例55肩に対し,RSA合併症の一つであるscapular notchingの発生頻度を調査した.また,notchingあり群となし群に分け,年齢,性別,BMI,観察期間,機種別(In-layとOn-lay),術後臨床成績,肩関節自動可動域について両群間で比較検討した.scapular notchingの発生頻度は8肩(14.5%)であり,年齢,性別,BMI,術後経過観察期間において差を認めなかった.In-lay type 22肩中5肩(22.7%),On-lay type 33肩中3肩(9.1%)に認め,機種間での発生に差を認めなかった.また,両群ともJOAスコア,肩関節自動屈曲・外転では術前後で改善を認めたが,内外旋では変化を認めなかった.群間比較では,術前後のJOAスコア,肩関節自動可動域に変化を認めなかった.

  • 永田 旺也, 石松 哲郎, 工藤 悠貴, 中山 鎭秀, 松永 大樹, 前山 彰, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 3 号 p. 410-414
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】内側開大式高位脛骨骨切り術(OWHTO)における内側側副靭帯(MCL)の切離や剥離により,術後に膝関節Laxityを生じる可能性が報告されている.しかし膝関節Laxityが臨床成績に及ぼす影響は不明である.目的はOWHTO後の膝関節の外反Laxityと術後成績との関連を評価することである.【対象と方法】2019年~2020年にOWHTOを施行し,術前・術後6ヶ月でストレス撮影を行い得た20例20膝を対象とした.外反ストレス撮影において,ΔJLCA(術後JLCA-術前JLCA)>0度,ΔJLCA≦0度の2群に分け,術後12ヶ月時のKOOSとの関連を検討した.【結果】KOOSのFunctional Sportsにおいて,ΔJLCA>0度の群11膝(47.7点)は,ΔJLCA≦0度の群9膝(70.6点)と比較し有意に低値であった(p<0.05).その他の項目に有意差はなかった.【考察】術後に外反Laxityを生じた症例では臨床成績に負の影響を及ぼしており,外反Laxityを生じにくくするためには,MCL浅層の剥離や切離は最小限にとどめることが必要である可能性がある.

  • 長尾 俊二郎, 中山 鎭秀, 工藤 悠貴, 松永 大樹, 石松 哲郎, 前山 彰, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 3 号 p. 415-419
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】膝周囲骨切り術(AKO)が膝蓋大腿関節(PFJ)に与える影響から,術前のPFJの軟骨損傷の評価は重要である.しかし術前にPFJの変性を評価するモダリティについての研究は少ない.本研究ではAKO術前CT及びMRI所見と関節鏡所見の相関を調査しPFJの変性を正確に評価するモダリティについて検討した.【対象と方法】2019年1月から2021年4月までに当科でAKOを施行した62例を対象とした.MRI所見(modified-Outerbridge分類)及びCT所見と関節鏡所見(ICRSグレード)の相関及びその検者内・検者間信頼性を検定した.MRIは画像診断ガイドライン2016年版で推奨されるシーケンス(3D GRE T1強調像)を含む群(推奨MRI群)と含まない群(非推奨MRI群)に分けて検討した.【結果】ICRSグレードとの相関係数は推奨MRI群,非推奨MRI群,CT群の順に0.64,0.23,0.43であった.検者内信頼性は同様の順序で0.70,0.39,0.60,検者間信頼性は0.65,0.31,0.59であった.【考察】3D GRE T1強調像はPFJの軟骨の形態の評価に有用と考えられた.

  • 兵藤 裕貴, 濱田 貴広, 有薗 剛, 井口 明彦, 泉 貞有, 今村 隆太, 戸次 大史, 大山 龍之介, 木下 英士, 木戸 麻理子, ...
    2022 年 71 巻 3 号 p. 420-424
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】中高年に対する関節鏡視下半月板部分切除術(APM)の短期治療成績を,患者立脚型評価法(KOOS)を用いて評価し,予後因子に関して検討したため報告する.【対象と方法】2014年から2020年に当院で内側半月板損傷に対してAPM施行した中高年25例(平均62.8歳).術後1年のKOOSを用いて予後良好群,非良好群の2群に分け,患者背景,FTA,MPTA,断裂形態,軟骨損傷の程度,骨髄浮腫の有無に関して統計学的に比較検討した.【結果】術前,術後1年のKOOSは5項目(症状,疼痛,ADL,スポーツ・娯楽活動,QOL)の全てで平均値が上昇した.単変量解析ではFTA,MPTAのみで有意差を認めたが(p=0.017,0.047),多変量解析ではFTAのみ有意差を認めた.ROC曲線では176.0°以上が予後不良因子であった(AUC 0.77,感度0.60,特異度0.90).【結語】中高年のAPMに対する短期の患者満足度は比較的高いが,下肢アライメント異常を認める場合は注意が必要である.

  • 宮崎 誠大, 緒方 宏臣, 山下 武士, 堀川 朝広, 今村 悠哉, 福田 雅俊, 佐藤 慶治, 吉村 直人
    2022 年 71 巻 3 号 p. 425-426
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    下肢の疲労骨折の中で膝蓋骨疲労骨折は珍しいが,人工膝関節置換術(TKA)後の膝蓋骨疲労骨折はさらに珍しい.今回我々は76歳女性のTKA術後1年4ヶ月に膝蓋骨疲労骨折を認めた症例を経験した.明らかな外傷機転は無く,皮下血腫や腫脹等の所見も認めなかった.転位は軽度であったため保存療法を選択し受傷後4週間ニーブレース固定・免荷とした.受傷後6ヶ月X線で依然骨折部の間隙を認めるが,膝伸展機構は保たれており,日常生活も特に問題なく送れている.

  • 大塚 貴, 舛田 哲朗, 伊藤 仁, 久永 哲, 岡元 信和, 宮本 健史
    2022 年 71 巻 3 号 p. 427-430
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Felty症候群患者に対して前十字靱帯(ACL)再建術を施行し,良好な短期成績を得たため報告する.【症例】27歳,女性.ソフトボールプレー中に右膝を捻り受傷した.既往にFelty症候群があり,プレドニゾロン+サラゾピリン(SASP)で加療中であった.初診時,DAS28-CRP:2.7と軽度疾患活動性を認めたため,メトトレキサート(MTX)の内服を開始し,5か月後にDAS28-CRP:1.18と改善認め,半腱様筋腱を用いて解剖学的二重束ACL再建術を施行した,術後経過は問題なくリハビリを継続し,術後4か月でMTXからSASPへ変更し,CRP値の軽度上昇を認めたが,感染徴候はみられなかった.術後9か月で競技へ復帰し,術後2年のLysholm knee scoreは100点であった.術後1週と2年でのCT画像評価では,大腿骨孔の拡大を認めた.【考察】周術期合併症の危険性の高いFelty症候群患者では周術期だけでなく,術後の疾患活動性を制御することが重要であると考えられた.

  • 塩見 涼, 松永 大樹, 宮﨑 弘太郎, 中山 鎭秀, 石松 哲郎, 前山 彰, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 3 号 p. 431-433
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    全身関節弛緩(GJL)は前十字靭帯(ACL)損傷のリスクファクターであるとされ,そこには膝関節の不安定性が関与すると推察される.GJLはBeightonスコアを用いて評価され,膝関節の安定性の評価にはストレスなどが使用される.本研究の目的は,Beightonスコアと膝関節ストレス撮影の関連を検討し,どの構成体に不安定性を有しているかを調べることである.対象は2019年4月から2021年7月にACL再建術を施行した30例の健側30膝で,術前膝関節X線での内外反ストレス下のJLCA,前後方向ストレス下の前後方向移動距離を計測し,術前Beightonスコアとの関係性を検討した.結果は内反ストレス下のJLCAとBeightonスコアで相関を認めた(r=0.427,p=0.019).外反ストレス下のJLCA・前後方向ストレス下の前後方向移動距離との有意な相関はみられなかった.ACL損傷患者の健側膝において,Beightonスコアが高いほど膝関節外側の支持機構に弛緩性を認める可能性が示唆された.

  • 藤原 絃, 花田 弘文, 石松 哲郎, 野村 耕平, 阿南 亨弥, 千々岩 芳朗, 大島 由貴子, 山口 史彦, 久保 勝裕, 藤原 明, ...
    2022 年 71 巻 3 号 p. 434-437
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】両側同時に関節鏡視下骨釘移植術を行った両膝離断性骨軟骨炎の一例を経験したので報告する.【症例】13歳男性,2019年2月より野球中に左膝痛が出現,8月頃より右膝痛が出現.次第に疼痛が増強し,近医で確定診断が得られず症状改善なく2020年1月当院を受診した.単純X線,MRIにて両膝離断性骨軟骨炎の診断で,早期スポーツ復帰を強く希望されたため,両側同時に膝関節鏡視下骨釘移植術を施行した.脛骨内側から採取した骨釘を左右にそれぞれ右大腿骨外側顆に6本,左大腿骨内側顆に6本,左大腿骨外側顆に1本固定した.術後4週で部分荷重開始,術後8週で全荷重許可,術後6ヶ月でスポーツ復帰した.【考察】両膝離断性骨軟骨炎の発症例は少なく,両膝関節鏡視下骨釘移植術を行った報告はない.スポーツ選手で早期のスポーツ復帰を目的とした両膝関節鏡視下骨釘移植術は生活環境やスポーツ環境などを十分吟味すれば有用な手術方法と思われた.

  • 藤善 卓弥, 恒吉 康弘, 川畑 英之, 永吉 隆作, 富村 奈津子, 古賀 公明, 吉野 伸司, 川内 義久, 谷口 昇
    2022 年 71 巻 3 号 p. 438-441
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】膝関節内の遺残散弾が原因と思われる変形性関節症を経験したので報告する.【症例】77歳男性,1975年に散弾銃暴発による銃創治療の既往がある.2021年4月より左膝関節痛が増強し近医を経て当院紹介受診となった.単純X線でK-L分類gradeⅣのOA変化と左膝周囲に多数の散弾と覆われる金属球を認め,手術希望があり人工膝関節置換術を施行した.術中所見で軟部組織内に散弾と思われる金属球を認め,関節表面にも複数個の金属球が埋没していた.通常手技で手術施行,骨切り面に複数の金属断面を認め可及的に摘出した.肉眼およびX線透視で膝関節内に遊離散弾が無いことを確認し手術を終了した.術後経過に特に問題なく,術後15日目に自宅退院となった.【考察】受傷当時からこれまでに急性鉛中毒の発生既往は無かったが,術前の血中鉛濃度は25.2ug/dlと正常上限値を僅かに超えており,今後も定期的なfollow upが必要と考えている.

  • 竹内 龍平, 糸川 高史, 青野 誠, 中原 寛之, 田中 哲也, 入江 努, 齊藤 太一
    2022 年 71 巻 3 号 p. 442-446
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    抄録:症例は84歳女性.歩行中にタクシーと接触し転倒し当院搬送,右股関節脱臼と右脛骨高原骨折(AO分類41typeB1,Schatzker分類typeⅡ)を認め,股関節脱臼整復の上入院となった.当初脛骨高原骨折は転位が僅かであったため保存加療とした.しかし1週後X-pで転位増悪を認め,元々変形性膝関節症(以下膝OA)を指摘されていたこともあり,一期的に全人工膝関節置換術(以下TKA,使用インプラント;DePuy Synthes社Attune revision)を施行した.術後早期から可動域荷重訓練を開始し,術後13日で歩行器歩行自立できた.リハビリ病院転院を経て自宅退院し,術後2年時点で杖歩行にて自宅独居生活を送られている.膝OA患者に生じた脛骨高原骨折に対し,骨接合術を併用した一期的TKAは散見されるが,骨接合術を併用しないTKAの報告は少数に留まっている.revision systemを用いた一期的TKA施行は,術後早期回復の観点から有用な選択肢の一つと考えられたため,考察を加え報告する.

  • 石原 康平, 碇 博哉, 吉本 隆昌, 徳永 真巳, 松田 秀策, 松田 匡弘
    2022 年 71 巻 3 号 p. 447-450
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【緒言】手術回避を目的としてAPS療法を希望する症例は進行した関節症を有することも多いが,その効果の程度と予測因子は不明である.【対象と方法】APS療法を行い6ヶ月以上追跡したKL grade 4の内側型OA 38膝を対象とした.施行前,施行後6ヶ月のKOOSを用いたOMERACT-OARSIによる基準にてresponder(R群)とnon-responder(NR群)に分類した.年齢,性別,BMI,立位%MA,FTA,MPTAの群間の比較を行なった.【結果】R群18膝,NR群20膝であり,施行後6ヶ月における奏功率は47.4%であった.群間比較はMPTAのみ有意差を認め,その平均はR群84.9±3.0度,NR群82.7±2.8度であった.MPTAのR群,NR群に対するカットオフ値は82度であり,MPTA 82度以上を治療対象とすることで,奏功率は56.0%と上昇した.【結語】脛骨骨形態に着目することで末期OAにおけるAPS療法の奏功率が上がる可能性が示唆された.

  • 鬼木 泰成, 是枝 健斗, 中村 英一, 髙木 克公, 藤本 昭二, 平井 康裕, 山隈 維昭, 大橋 浩太郎, 鬼木 泰博
    2022 年 71 巻 3 号 p. 451-454
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】変形性膝関節症(膝OA)に対する関節内多血小板血漿(PRP)療法について,X線学的進行度との関連に注目した.【方法】膝OAに対しPRP投与前後に評価が可能であった130例182膝を対象とした.PRPは,Mycell社製,平均3.6ccを関節内投与した.評価はModified Numeric Rating Scale(MNRS),JOA score,KOOSを評価し,Kellgren-Laurence(KL)分類に応じて判定した.【結果】KL分類はⅢ以下が77膝,Ⅳが105膝であった.PRP投与回数は平均2.0回であり,Ⅳでも1回が最多58膝55%であった.投与前疼痛をNRS10とした場合,最終NRSはⅢ以下とⅣでは,3.0,3.8で,JOA,KOOSとも有意に改善していた.【考察・結論】PRPの疼痛緩和反応は進行したOAより初期膝OAの方が優れているとされているが,今回進行した膝OAにも一定の効果を認めた.

  • 寺本 周平, 福元 哲也, 橋本 伸朗, 前田 智, 中馬 東彦, 福田 和昭, 坂本 佳菜子, 髙木 寛, 髙島 佑輔
    2022 年 71 巻 3 号 p. 455-459
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】熊本骨バンクより非生体同種骨を用いたことで良好な経過を得た症例を経験したので報告する.【症例】65歳女性【病歴】過去に合計3回右人工股関節置換術を施行されたがステムのゆるみによる疼痛が持続し,2019年10月に当科外来受診となった.【初診時所見】JOAスコア61点,脚長差が6cmあり著明な跛行がみられた.ステムは沈み込み,転子部の骨は消失し骨幹部は広範囲の骨欠損があり,Paprosky分類でtype 4だった.【手術所見】骨幹部の広範囲の骨欠損に対し,熊本骨バンクからの非生体同種骨を用いた骨プレートをメッシュで補填し,ロングステムに合わせてインパクションボーングラフトを行った.転子部は人工関節複合体とし,大転子部を大腿骨顆部プレートで固定した.【結果】術後2年でJOAスコア89点,脚長差も1cmと改善し,レントゲンでも沈み込みや緩みはなかった.

  • 中尾 公勇, 髙橋 良輔, 鳥越 雄史, 田中 奈津美, 池永 仁, 吉里 広, 岩崎 俊介, 糸瀬 賢, 小西 宏昭, 力武 美保子
    2022 年 71 巻 3 号 p. 460-462
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA)を契機にアルカプトン尿症と診断し得た1例を経験したので報告する.【症例】57歳男性.30歳代より腰痛が出現し,51歳より他院膠原病内科にて強直性脊椎炎として治療されていた.57歳から左股関節痛が出現し,当院紹介となった.身体所見として両眼球強膜や耳介に黒褐色変化を認め,単純X線像では骨頭圧壊を伴う変形性股関節症を認めた.THAを施行し,術中,骨頭に黒色色素沈着を認め臼蓋,滑膜にも同様の所見を認めた.アルカプトン尿症を疑い尿中ホモゲンチジン酸定量検査により確定診断に至った.術後,経過良好でフォローアップ中である.【考察】中高年のアルカプトン尿症は関節症状を主訴に病院受診し,関節症を契機として診断に至ることが多い.また,心・腎血管の石灰化により誘発される全身合併症の評価が重要である.多関節症の診察時には本疾患を鑑別に挙げ,他診療科と連携し治療戦略を立てる必要がある.

  • 菅野 真未, 園田 和彦, 原 俊彦
    2022 年 71 巻 3 号 p. 463-467
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】人工股関節全置換術(THA)において,当院ではKyocera 3D template(3次元術前計画ソフト)を使用して3次元術前計画を行い,術中専用デバイスを用いて設置精度向上のための工夫をしている.Kyocera Initia(taper-wedged cementless stem)を使用したTHA症例において,術中調整を加味したstemの設置精度を検証した.【方法】2019年12月~2020年7月にInitiaを使用しprimary THAを施行した42例を対象とした.術前計画データに術中のbroachの予定高位との誤差,stem size,neck長の変更を加味し,術後CTにおける大腿骨機能軸長,stem前捻角と比較して設置精度を検証した.【結果】大腿骨機能軸長の誤差は平均1.2±4.2mm,絶対値は平均3.1±3.1mmであった.前捻角の誤差は平均0.3±7.0度,絶対値は平均5.1±4.0度であった.【結論】当院におけるtaper-wedged cementless stemの設置精度を検証した.

  • 榊 純平, 瀬尾 哉, 木下 浩一, 坂本 哲哉, 松永 大樹, 土肥 憲一郎, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 3 号 p. 468-470
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,京セラ社製INHERITOR stemを用いた人工股関節全置換術(以下THA)の短期治療成績を検討することである.2018年9月から2020年6月までに当院でINHERITOR stemを用いてTHAを施行した32例32股(男性:6股,女性:26股)を対象とした.手術時年齢は平均71±14歳,観察期間は平均13±5ヵ月であった.全例後方アプローチで京セラ社製SQRUM cupを使用した.臨床およびX線評価,合併症を調査した.最終経過観察時のJOA scoreは平均85±10点,Harris hip scoreは平均89±9点と有意に改善した.Cupとstemの固定性は全例Bone ingrowthであった.Stemは2°以上の内反設置を3股に認め,stem遠位のSpot weldsを9股に認めた.合併症は大転子骨折1股,脱臼1股,腓骨神経麻痺1股あり,再置換を要した症例はなかった.INHERITOR stemを用いたTHAの短期成績は良好であった.

  • 福原 聡, 木下 浩一, 坂本 哲哉, 瀬尾 哉, 松永 大樹, 土肥 憲一郎, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 3 号 p. 471-473
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】イメージ使用仰臥位前外側アプローチ人工股関節全置換術(ALSA THA)におけるカップ前捻角指標テンプレートの有用性を明らかにすることであった.【対象と方法】2017年10月から2021年5月までに当科でALSA THAを行った患者を対象とし,カップ前捻角指標テンプレートを用いなかった群(非使用群129関節)と用いた群(使用群61関節)に分け,Radiographic anteversion(RA)を調査し,正確度と精密度を両群間で比較検討した.目標RAは非使用群15度,使用群は15度,20,25度のいずれかであった.【結果】RAの誤差は非使用群-0.3±4.6°(-11-12°),使用群0.9±4.7°(-10-10°)で正確度,精密度ともに両群間で有意差を認めなかった.【結語】目標角度を可変式とすれば正確度,精密度ともに下がることが予測されたが,テンプレートを用いることでそれらを防ぐことができ,有用であると考えた.

  • 陣林 秀紀, 園田 和彦, 原 俊彦, 小宮山 敬祐, 浜崎 晶彦, 美浦 辰彦, 藤村 謙次郎
    2022 年 71 巻 3 号 p. 474-477
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    [背景]股関節の3次元計画の際には骨盤座標系の設定が重要である.しかし骨盤形態は多様であり,従来の骨盤座標系の設定が常に妥当であるとは限らない.今回,寛骨臼形成不全症例を対象として骨盤座標系における冠状面での基準軸の妥当性を検討した.[方法]当科で寛骨臼移動術を施行した寛骨臼形成不全症例のうち,対側が術後の症例を除外した40例の術前CT画像を対象とした.両大腿骨頭中心間線を冠状面における絶対的骨盤基準軸と定義した.両側の上前腸骨棘,臼蓋上縁,涙痕下端,閉鎖孔上縁,閉鎖孔下縁,坐骨下端を結ぶ線と両側大腿骨頭中心間線との角度を誤差として計測した.[結果]冠状面において,誤差が最も小さかったのは臼蓋上縁で,次いで涙痕下端,閉鎖孔上縁であった.最も誤差が大きかったのは上前腸骨棘であった.[考察]骨盤座標系の設定を行う場合,これらの誤差を認識しておく必要がある.

  • 髙島 佑輔, 福元 哲也, 髙木 寛, 坂本 佳菜子, 寺本 周平, 福田 和昭, 中馬 東彦, 前田 智, 橋本 伸朗
    2022 年 71 巻 3 号 p. 478-481
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】人工股関節置換術(以下THA)後の腸腰筋インピンジメント(以下IPI)に対して,鏡視下にカップ辺縁での腱切離術を行ったので,手術の結果と問題点について報告する.【対象】THA後にIPIの診断のもとに10例10股に鏡視下腱切離術を行った.全例女性,平均年齢62.3歳,術後平均経過観察期間は14ヶ月である.【方法】術中は透視下に腱切離レベルを確認し行った.手術時間,手術の問題点,退院後の疼痛,筋力(座位での股関節屈曲)について評価した.【結果】関節内は全例滑膜増殖がみられ,滑膜掻把に時間を要した.切離する腱は1本が4股,2本が1股,3本以上が5股であった.全例術後3日以内に自宅退院可能で,術後3ヶ月以降で5例は完全に疼痛消失し,筋力も8例で改善した.【考察】THA後のIPIに対して関節鏡視下手術は有効な手術であるが,長期的な経過観察が必要と考えている.

  • 宮房 玲奈, 新井 貴之, 原田 知, 木下 英士, 櫻井 立太, 久枝 啓史
    2022 年 71 巻 3 号 p. 482-485
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    要約:70歳女性,63歳時に右末期変形性股関節症に対して,後方アプローチで初回THA(encore社のFMP Acetabular System使用)を施行された.インプラント設置角度はカップ外方開角44°,カップ前捻角24°,ステム前捻角50°であった.69歳時にしゃがみ込んで荷物を持ち上げようとした際に初回脱臼を認め,その後も頻回脱臼(全て後方脱臼)を認めたため再置換術を施行された.術中,伸展・外旋動作に伴うelevated部でのインピンジメント及び同部位での破損を認め,脱臼の一因と考えられた.ライナー,ヘッドの交換および骨棘切除を行うことで,インピンジメントは消失し術中安定性を得た.脱臼要因(ライナー・ヘッドの種類や脊椎・インプラントアライメント)について若干の文献的考察を加えて検討した.

  • 井上 誠一, 林田 一公, 吉川 英一郎, 志波 直人
    2022 年 71 巻 3 号 p. 486-490
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    2019年4月から2021年3月までに当院で髄内釘による治療を行った大腿骨転子部骨折176例のうちラグスクリューがカットアウトした2例について検討した.検討項目は骨折型,骨頭内のラグスクリュー刺入位置,術後整復位,Tip apex distance(以下TAD)であった.2例ともに骨癒合遅延を認めており,骨粗鬆症,糖尿病など危険因子を多数有する症例はカットアウトの危険性が高くなると考え,後療法を慎重に考えるべきである.

  • 清水 黎玖, 坂本 哲哉, 木下 浩一, 瀬尾 哉, 松永 大樹, 土肥 憲一郎, 山本 卓明
    2022 年 71 巻 3 号 p. 491-493
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【目的】肥満は人工股関節全置換術(THA)におけるカップの設置異常の一因となる.本研究では肥満患者に対するナビゲーション使用例でのカップの正確性と精度を検討する.【対象と方法】Body Mass Index(BMI)25kg/m²以上の初回THA 16例16股で,7股にナビゲーション(Navi)を使用した.正確度は術中Navi表示値と術後CT値の誤差,精度は標準偏差を用いsafe zone内の割合を調べた.【結果】Navi使用例ではInclination平均43.4°±3.2,Anteversion平均21.1°±4.8,正確度は平均値でInclination 2.4°,Anteversion 4.3°,精度はInclination 3.9°,Anteversion 5.3°,safe zone内の割合は100%であった.【結語】いずれも比較的良好な結果が得られ,肥満患者に対するナビゲーションは有用なデバイスと考える.

  • ~大腿骨骨切り後THA症例での検討~
    河野 通仁, 本村 悟朗, 濵井 敏, 池村 聡, 川原 慎也, 佐藤 太志, 原 大介, 中島 康晴
    2022 年 71 巻 3 号 p. 494-496
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨骨切り後の人工股関節置換術(以下THA)は,通常の初回THAと比較して骨折の合併に注意が要することが報告されている.骨切り時に挿入した固定材料の抜去(抜釘)が骨折合併に影響するかを検討した報告は渉猟する限りない.骨切り後THA症例における骨折合併に影響する因子を,抜釘の有無を含めて検討することを本研究の目的とした.【対象と方法】2008年-2020年の間にPerfix HA 910を用いて施行された骨切り後THA101股を対象とした.術中骨折または術後1ヶ月以内の外傷のない骨折を骨折合併ありとした.THA時の年齢,骨切りからTHAまでの期間,同時抜釘の有無,先行骨切り術について調査し,骨折合併に影響する因子を解析した.【結果】骨折合併は7関節(6.9%)に認めた.多変量解析の結果,同時抜釘ありと骨切りからTHAまでの期間が骨折合併に有意な影響を及ぼす因子として同定された.【結語】本研究結果より,抜釘を伴う骨切り後THAは骨折を合併しやすいことが示唆された.大腿骨骨切り後症例に対しては,将来のTHAを考慮すると,事前に抜釘しておくことが薦められる.

  • 西村 博行, 浦上 泰成
    2022 年 71 巻 3 号 p. 497-503
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    既往の運動器疾患が回復期リハを行った大腿骨近位部骨折の日常生活動作(以下ADL)に及ぼす影響を検討した.対象は大腿骨近位部骨折術後患者553名.疼痛,運動制限などADLに影響を及ぼす運動器疾患の既往を有する患者は,198名,運動器疾患の既往が無い患者は355名であった.運動器既往疾患は変形性膝関節症72名が最多であった.ADLは,受傷前,入院時および退院時にBarthel index(以下BI)で評価した.回復期リハにおけるBI点数の増加は,運動器疾患の既往があっても,既往無と同等であった.運動器疾患の既往は,回復期リハの阻害因子ではないと考えられた.既往有の認知障害において退院時BI点数が増加した.認知障害において運動器疾患の既往があることにより,今回の大腿骨近位部骨折受傷前にBI点数低下,ADL低下があり,それが今回の大腿骨近位部骨折に対する回復期リハで改善したことが示唆された.

  • 井上 隆広, 北村 貴弘, 土居 雄太, 前田 稔弘, 坂本 和也, 仙波 英之, 生田 光, 志田原 哲
    2022 年 71 巻 3 号 p. 504-507
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】高齢者の大腿骨遠位端骨折は骨質低下により粉砕例が多く,偽関節やインプラント折損が生じる例が散見され,しばし治療に難渋する.今回,複数回手術を要した大腿骨遠位端骨折の症例を経験したので報告する.【症例】70歳男性.転倒して受傷した.大腿骨遠位端骨折AO分類33C2を認め,初回手術は逆行性髄内釘を施行した.術後3週で転位した遠位screwのみ抜去した.初回術後16週で,遠位・近位screwの折損と遠位screw脱転認め,仮骨形成なく偽関節症と診断した.抜釘及び外側Plate固定を行った.その後も仮骨形成なく,初回術後20週で内側augmentation plate及び腸骨骨移植を行った.【考察】粉砕強い高齢者の大腿骨遠位端骨折は,初回手術における手技・インプラント選択に注意が必要である.また,インプラント折損や偽関節が生じた際は治療内容を十分に吟味すべきである.

  • 吉田 悠哉, 宮本 俊之, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 太田 真悟, 中村 憲明, 尾﨑 誠
    2022 年 71 巻 3 号 p. 508-512
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    Masquelet法は,軟部組織再建が前提ではあるが,手技が比較的容易で,あらゆる骨欠損形態における再建方法の選択肢となる.今回Masquelet法を用いて良好に治療できた症例を報告する.症例は50代男性,バイク走行中に普通車と正面衝突し受傷.前医で蘇生処置後に創外固定後翌日に当院へ紹介となった.大腿骨遠位はGustilo IIIAの開放骨折で,AO/OTA分類33C2で骨幹端外側に約8cmの骨欠損を認めた.受傷翌日にセカンドルックと膝関節面の骨接合そして外側架橋プレートを行った.軟部組織が落ち着いた受傷8日目に内側プレートを追加し,受傷後8週で健側大腿骨からRIAで採骨し骨移植をおこなった.受傷後半年の現在,骨形成は良好に進み膝関節の拘縮は認めるが,全荷重歩行可能でADLは完全自立に至った.一見派手に見える骨欠損を伴う開放骨折であっても,大腿部においてはその豊富な軟部組織のため,確定的デブリードマンの後,皮弁術を併用することなく,Masquelet法単独で治療可能であった.

  • 國吉 さくら, 金城 聡, 大湾 一郎, 森山 朝裕, 伊佐 智博, 津覇 雄一, 西田 康太郎
    2022 年 71 巻 3 号 p. 513-516
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    膝関節後外側脱臼は膝関節脱臼のなかでも頻度が低く,内側広筋や様々な内側関節靭帯成分が関節内にはまり込み整復阻害因子となるため,非観血的整復術は難しいとされている.また,膝関節後外側脱臼の特徴的な身体所見としてpucker signと呼ばれる,内側関節裂隙に沿う皮膚の陥凹が挙げられ,同部位の皮膚壊死が危惧されることから早急な観血的整復が必要とされる.また,整復術の術式や合併する靭帯損傷に対する治療法に一定の見解は得られておらず議論の残る点である.今回我々は,低エネルギー外傷によって受傷し,観血的整復術を要した膝関節後外側脱臼の1例を経験したので報告する.

  • 津田 宗一郎, 宮本 俊之, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 太田 真悟, 中村 憲明, 尾﨑 誠
    2022 年 71 巻 3 号 p. 517-519
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】デグロービング損傷は車輪などに巻き込まれ、皮膚・皮下組織が剥脱された結果,壊死に至ることが多い重症軟部組織外傷である.今回,挟撃損傷による左下腿の広範なデグロービング損傷の1例を経験したので報告する.【症例】72歳女性.自動車事故で受傷後1時間ほど左下腿を挟まれていた.前医で左大腿骨遠位開放骨折,左下腿挫滅創の診断となり,創外固定とデブリドマンが施行され,翌日に当院へ搬送された.追加デブリドマンを施行すると,広範囲の皮下組織の剥脱と壊死所見を認めた.欠損創はNPWTを用いて被覆した.術後3日目に大腿骨の観血的骨接合と下腿のデブリドマン,分層植皮を行った.【考察】挫滅創と異なりデグロービング損傷では,皮膚の血流が途絶え壊死に至る.軟部組織再建が必要になる可能性が高く,骨折のみならず軟部組織の観察は注意深く行う必要がある.

  • 北堀 貴史, 森 治樹, 池尻 洋史, 福永 幹, 神谷 俊樹
    2022 年 71 巻 3 号 p. 520-523
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    若年者のスポーツ外傷におけるTillaux骨折は非常に稀な骨折型である.骨折の診断に時間を要し,その他の骨端線損傷同様に早期の治療介入を要する.今回,若年者に生じたTillaux骨折を2例経験したので報告する.いずれの症例も14-15歳と骨端線損傷を受傷する年齢としては比較的高齢でり,また,受傷起点もスポーツ中での受傷であった.1例については単純レントゲン写真でも骨折の診断となりえたが,1例についてはCT撮影を行って初めて診断に至った.受傷同日に骨折観血的手術施行し,1例については装具装着のうえで術後2週目より全荷重での歩行訓練を開始した.術後3ヶ月目より競技復帰できている.これまで行われていた後療法では術後4週間の免荷が必要であったが,強固な固定に加え術後装具装着を行うことで早期荷重も可能であった.いずれの症例でも術後合併症なく日常生活を送ることができている.

  • 原 正光, 水内 秀城, 屋良 卓郎, 石橋 正二郎, 荒武 佑至, 安元 慧大朗, 徳丸 達也
    2022 年 71 巻 3 号 p. 524-526
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】比較的稀な足舟状骨体部粉砕骨折の1例を経験したので報告する.【症例】22歳女性.3mの高さより転落受傷後,右足部の疼痛・腫脹・皮下出血が出現し,当院救急搬送された.単純X線及びCTにて,右足舟状骨体部粉砕骨折(Sangeorzan分類Type III)を認め,受傷翌日に手術を施行した.粉砕した舟状骨の内側と背側の骨片は大きく転位しており,術中に創外固定器を用いて距骨-楔状骨間を牽引して整復位を保持した.舟状骨の内側と背側よりそれぞれ展開し,VA LCP Mesh Plate(DePuy Synthes)を舟状骨の長さを維持できるように距骨から楔状骨まで架橋して固定した.【まとめ】今回,足舟状骨体部粉砕骨折に対して,創外固定を用いて整復位を保持し,舟状骨長を維持できるように創内固定の要領でVA LCP Mesh Plateを使用して治療した症例を経験したため,文献的考察を踏まえて報告する.

  • 溝田 将吾, 上通 由紀子, 重松 正森, 本岡 勉
    2022 年 71 巻 3 号 p. 527-530
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    リスフラン関節の損傷には,強い外力による脱臼骨折の他に,比較的軽微な外傷でも発生するリスフラン靭帯損傷がある.この病態は単純X線で第1-2中足骨基部間にわずかな開きがある程度にしか見えないが,判断を誤るとスポーツ活動やADLに支障をきたすことが少なくない.症例の多くは確実な固定を得るために手術の適応がある.当院で2011年以降に治療を行った9例(16~56歳,男性3例,女性6例)の治療成績について報告する.手術は全例Cannulated Cancellous Screw(CCS)2本で固定を行った.スクリューの折損予防のため初回手術から約4か月で抜釘を行い,その時点で日本足の外科学会中足部判定基準(JSSF midfoot scale)を用いて評価した.距骨骨折を合併して高度の骨萎縮をきたした症例が77点,他は90~100点と成績は良好であった.この治療法は,安定した治療成績を得られることが示唆された.

  • 佐藤 慶治, 緒方 宏臣, 山下 武士, 堀川 朝広, 今村 悠哉, 福田 雅俊, 宮崎 誠大
    2022 年 71 巻 3 号 p. 531-534
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    距骨下関節脱臼は交通外傷や高所転落などの高エネルギー外傷により生じ,全脱臼の1-2%と比較的稀であるため,治療方針に関して確立した指針は得られていない.今回,足部の多発骨折を合併した距骨下関節脱臼の1例を経験したので文献的考察を交えて報告する.症例は45歳男性.建設現場の足場より転落し受傷.近医を受診し,精査加療目的に当科紹介となった.CTで距骨下関節脱臼・距骨後突起骨折・舟状骨骨折・踵骨前方突起骨折・右腓骨遠位裂離骨折・第5中足骨骨折を認めた.全身麻酔下に距骨下関節脱臼に対する徒手整復および踵骨前方突起骨折に対する観血的整復固定術を行った.後療法として外固定はギプス・シーネによる固定を5週間継続した.荷重は術後4週間完全免荷とし,以降より部分荷重を開始し術後10週で全荷重可能となった.職場復帰も可能となり,日常生活機能としては問題ないが,今後の関節症性変化の進行に留意した長期フォローが必要である.

  • 佐々木 颯太, 森下 雄一郎, 大迫 浩平, 伊藤田 慶, 横田 和也, 久保田 健介, 林 哲生, 益田 宗彰, 坂井 宏旭, 河野 修, ...
    2022 年 71 巻 3 号 p. 535-539
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/11/07
    ジャーナル フリー

    【はじめに】骨傷のない外傷性環軸椎後方脱臼は非常に珍しい.今回,非骨傷性外傷性環軸椎後方脱臼に非骨傷性中下位頸髄損傷を合併した症例を経験したので報告する.【症例】74歳男性.50cm程の階段より顔から前方へ転落して受傷.AIS D,改良Frankel分類C2/C2の四肢麻痺と診断した.画像診断にてCT上,環軸椎後方脱臼を認めたが,骨傷は認めなかった.MRIではC3/4高位に髄内異常信号変化を認めるも,環軸椎レベルでの信号変化は認めなかった.ハローリング外固定にて,最大8kgで24時間直達牽引を行うも,整復位は得られず,透視下にて牽引整復を施行した.しかし,その後再脱臼を来したため,全身麻酔下仰臥位にて徒手整復を行い,C1/2後方固定術を施行した.術後8週目で独歩可能となるまで神経学的回復を認め,自宅退院となった.【考察】既存の歯突起後方偽腫瘍に非骨傷性外傷性環軸椎後方脱臼と非骨傷性頚髄損傷を来した一例を経験した.

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