2023 年 72 巻 3 号 p. 518-521
症例は56歳男性.崖から約30m滑落し受傷.左肘頭脱臼骨折,左近位橈尺関節脱臼,左橈骨頭骨折,左尺骨鈎状突起骨折,左尺骨骨幹部骨折を認めた.末梢の運動・感覚・循環障害は認めず,同日緊急手術にてK-wireを用いた尺骨への髄内挿入ならびに肘頭骨片の上腕骨遠位端への直接固定によって制動性を得た.受傷後6日に内固定術を施行:後方アプローチにて展開し,各々の骨傷に対して骨接合後,内反ストレスによる不安定性は損傷していた輪状靭帯・外側側副靭帯複合体の修復で消失した.外反ストレスでも著明な不安定性を呈しており,内側側副靭帯を追加修復することで良好な制動性が得られた.術後3か月時点で不安定性は認めず,左肘関節可動域は-15~120°を獲得した.重度肘関節外傷では骨傷の解剖学的再建と靭帯再建が必要とされるが,本症例ではBeingessnerのプロトコールに基づき治療戦略を立て良好な治療成績を得ることができた.