整形外科と災害外科
Online ISSN : 1349-4333
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72 巻, 3 号
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  • 竹山 文徳, 花田 弘文, 杉 崇, 野村 耕平, 相良 智之, 大島 由貴子, 山口 史彦, 久保 勝裕, 藤原 明, 原 道也
    2023 年 72 巻 3 号 p. 351-356
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    (目的)膝前十字靱帯(以下ACL)損傷は膝の不安定性をきたし,長期間の放置例においては二次性の変形性膝関節症(以下OA)が生じることが知られている.今回,我々はACL再建術と高位脛骨骨切り術(以下HTO)を同時に施行した症例の治療成績を検討した.(対象と方法)HTOとACL再建術の同時手術を施行し,抜釘まで終えたACL不全を伴う内側型OA膝5例5膝を対象とした.(結果)JOA score,FTA,%MA,MPTAの項目において有意に改善を認めた.抜釘時のsecond lookの際,全例においてgraft tearなく,線維軟骨と思われる軟骨再生を認めた.(考察)一期的に施行したACL再建術とHTOは術後良好な臨床成績が得られた.同時施行することにより,除痛と膝の安定性の獲得,また入院,リハビリ期間の短縮という観点においても有用な術式であると考える.

  • 杉 崇, 花田 弘文, 藤原 明, 大島 由貴子, 相良 智之, 野村 耕平, 竹山 文徳, 山口 史彦, 久保 勝裕, 原 道也
    2023 年 72 巻 3 号 p. 357-359
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Double level osteotomy(DLO)における脛骨側の骨切りを膝蓋大腿関節の状態に応じて内側開大式高位脛骨骨切り術(medial open wedge high tibial osteotomy以下OWHTO)のほか,内側開大式粗面下脛骨骨切り術(medial opening wedge distal tuberosity osteotomy以下DTO)を行っている.術前後での変化について両群を比較・検討を行った.【対象と方法】2016年12月から2021年12月までに抜釘まで行ったDLOの症例18膝(DTO群15膝,OWHTO群3膝)を対象とした.膝蓋骨高や膝蓋骨傾斜角の変化などについて.DLOの術前と術後におけるICRS分類,単純X線所見,JOAスコアで評価を行った.【結果】術前後でJOAスコアは改善しPF関節は変化がなかった.膝蓋骨高はOWHTO群が全症例低下したがDTO群の低下症例は8例であった.【考察】DTO群OWHTO群ともに良好な短期臨床成績であったが,DTO群がPF関節の圧上昇を抑制する可能性がある.中・長期的な経過を観察していく必要があると考える.

  • 原野 理沙, 城戸 秀彦, 加茂 健太, 原口 明久, 川本 浩大, 濱 大輝
    2023 年 72 巻 3 号 p. 360-364
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】高位脛骨々切り術は内側型変形性膝関節症や大腿骨内顆骨壊死に対し一般的に行われている手術法であるが,高齢者には人工膝関節置換術が選択されることが比較的多い.しかし,近年の高齢化社会に伴い,高い活動性の維持を目的にHTOの適応も拡大してきている.【対象と方法】今回,HTOを当科で施行した70歳以上の17例20膝(男性12膝,女性8膝,平均値74.6歳,平均観察期間20.3ヶ月)の術後成績を調査し検討した.検討項目は立位下肢アライメント,関節可動域,JOA score,KOOS,術前術後の活動性,合併症とした.【結果】%MAは平均20.2°から63.3°と良好な矯正角を得られていた.術前後でJOA scoreは有意に改善し,術後の活動性も術前同等に維持できていた.【考察】70歳以上の高齢者に対するHTOは成績良好であった.高齢者であっても,本人の活動性やモチベーションなどを考慮して適応を判断すれば,良好な術後成績が期待できることが示唆された.

  • 相良 智之, 花田 弘文, 藤原 明, 山口 史彦, 大島 由貴子, 野村 耕平, 竹山 文徳, 杉 崇, 久保 勝裕, 原 道也
    2023 年 72 巻 3 号 p. 365-367
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】内側開大式高位脛骨骨切り術は膝蓋骨の低位を来たし,膝蓋大腿関節に影響を及ぼすことが報告されており,当科では症例により脛骨粗面下骨切り術(以下DTO)を施行している.DTOでは粗面下をスクリューにて固定するが,当科ではその固定材料にロッキングスクリューを用いている.今回我々は,APスクリューにロッキングスクリューを用いたDTO症例の粗面部周囲に関する検討を行った.【対象】2018年9月から2021年7月までに当科にて施行したDTO症例のうち,抜釘まで追跡可能であった136例を対象として,術前後のアライメントや合併症を後ろ向きに調査した.【結果・考察】アライメントに関しては比較的良好な成績であったが,合併症として2症例にAPスクリューのback outを認めた.2症例を検討し,APスクリューを対側皮質に貫くこと,プレートを可能な限り近位に設置することでback outのリスクを減らせる可能性が示唆された.

  • 小無田 航, 中添 悠介, 米倉 暁彦, 岡崎 成弘, 磯部 優作, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 3 号 p. 368-372
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】内側楔状開大式高位脛骨骨切り術(OWHTO)は変形性膝関節症や特発性膝骨壊死(SONK)に対する手術方法として確立している.今回我々は高齢者のSONKに対するOWHTOの成績を評価した.【対象と方法】2015年から2020年にSONKに対し膝関節鏡下の骨壊死部掻爬とOWHTOを行った症例のうち,手術時年齢が75歳以上であった7例7膝を対象とした.関節鏡所見をOWHTO時とプレート抜去術時に評価し,臨床成績を日本整形外科学会(JOA)スコアとKnee injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)を用いてOWHTO術前と術後1年に評価した.【結果】7例中6例で再鏡視を行い,全例で良好な軟骨様組織による被覆を認めた.JOAスコアは平均60.7から83.6へ,KOOSも全ての下位項目で改善を認め,特にpainが平均50.9から80.9へ,symptomが平均50.0から77.6へと改善した.【結語】SONKに対するOWHTOにより,高齢者であっても壊死部の軟骨様組織による修復が得られ,臨床成績も良好であった.

  • 篠原 由紀, 松永 大樹, 工藤 悠貴, 中山 鎭秀, 石松 哲郎, 前山 彰, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 3 号 p. 373-376
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【背景】近年,全人工膝関節置換術や開大式高位脛骨骨切り術(OWHTO)における足関節や距骨下関節への影響が報告されているが,足部アーチへの影響については報告されていない.本研究の目的は,OWHTOにおける足部アーチへの影響を評価することである.【対象と方法】2019年4月から2022年1月まで当院でOWHTOを施行し,荷重位足部X線評価を行なった53膝(平均年齢66.4歳,男性26膝,女性27膝)を対象とした.患者背景として,年齢,性別,BMI,X線学的評価として,術前後のcalcaneal pitch angle(CPA),femorotibial angle,%mechanical axis,medial proximal tibial angleを評価した.また,術前後CPA変化量(ΔCPA)において,ΔCPA<18°をFlat foot group(F group),ΔCPA>18°をNormal group(N group)に分け比較を行った.【結果】平均CPAは術前19.8°から術後20.4°へ有意に増加した.F groupは15膝(28.3%),N groupは38膝(71.6%)であった.平均ΔCPAはF groupが1.5°,N groupが0.3°であり,有意差を認めた(p=0.047).【結論】OWHTO後の下肢アライメント変化が足部アーチへ影響を及ぼす可能性が示唆された.

  • 神宮司 誠也, 前田 稔弘, 木村 太一, 佐々木 宏介
    2023 年 72 巻 3 号 p. 377-379
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    人工股関節安定性獲得には,インピンジメント可及的回避と関節周囲軟部組織の可及的温存が重要である.インピンジメント最小限化の為に,術中ステム前捻を確認した上で,ソケットを適切な方向に設置することが求められる.工夫の一途として,最近,CT情報を用いない簡易ナビゲーションが使われるようになり,拡張現実(AR)ナビゲーションもその一つである.当科での使用開始症例シリーズにおいて,ARナビゲーションを用いた寛骨臼ソケット設置について後ろ向きに検討した.目的とする表示角度に設置できたか,裸子固定による影響について,そして,術直後単純X線写真による評価にて最終的表示角度が正確だったか評価した.まだ少数例ではあるが,寛骨臼ソケットの適切な方向への設置に概ね有用と思われた.

  • 金城 英雄, 島袋 孝尚, 山川 慶, 藤本 泰毅, 大城 裕理, 津覇 雄一, 當銘 保則, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 3 号 p. 380-383
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脊椎手術において3DフラットパネルCアームとナビゲーションシステムを組み合わせて挿入したsacral alar iliac(SAI)スクリューの精度を評価した.【対象と方法】対象はSAIスクリューを挿入した38例(男性11例,女性27例),平均年齢53.4歳(11~84歳)であった.スクリュー挿入前にマーカーを刺入しCアームで確認挿入した19例(C群)と,術中CTとナビゲーションシステムを併用した19例(N群)を比較した.【結果】両群で合計73本のSAIスクリューを挿入した.スクリュー位置確認のため術中および術後3Dスキャンが施行された.穿孔率について,C群は11.4%(4/35本),N群は5.2%(2/38本)であった.いずれも皮質骨から2mm以内で,スクリューの先端は骨内で血管損傷や神経損傷はなかった.【考察】3DフラットパネルCアームとナビゲーションシステムの併用はSAIスクリューの精度向上に有用と思われた.

  • ―南九州重度四肢外傷トラウマネットワーク初回症例―
    村岡 辰彦, 上野 宜功, 増田 圭吾, 井上 三四郎, 日吉 優, 今里 浩之, 石原 和明, 天辰 愛弓, 瀬戸山 傑
    2023 年 72 巻 3 号 p. 384-386
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    重度四肢外傷は初期治療から骨軟部再建まで一貫した治療方針で行う必要がある.しかし,本邦ではトラウマネットワークやガイドラインの整備がなされておらず,また,宮崎・鹿児島では軟部再建が行える施設が限られているため,治療に難渋することも少なくなかった.今年度のPeer review meeting以降,我々は独自にトラウマネットワークを作成した.その第1症例を報告する.症例は53歳男性.バイク自損で受傷した右足関節開放脱臼骨折であった.受傷1日目に県立宮崎病院で初期治療施行された.同日夜にトラウマネットワークグループに連絡があり,対応可能であった米盛病院に転送する方針となった.受傷2日目に米盛病院にヘリ搬送され,セカンドルック施行.受傷5日目に骨接合,受傷7日目にRSAF挙上,受傷10日目にRSAF移動した.軟部再建後2週で県立宮崎病院に転院した.適切な初期治療と早期転送により遅滞なく適切な治療を行うことができた.

  • 天辰 愛弓, 瀬戸山 傑, 松野下 幸弘, 中村 雅洋, 上野 宜功, 村岡 辰彦, 大西 啓志朗, 甲斐 勇樹, 谷口 昇
    2023 年 72 巻 3 号 p. 387-390
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】重度四肢外傷は適切な初期対応,速やかな骨軟部組織再建を要する.鹿児島県における重度四肢外傷治療の現状を調査した.【対象と方法】2017年-2021年に,軟部組織再建が可能な3施設で治療した,Gustilo ⅢB・ⅢCの38例を対象とした.検討項目は軟部組織再建手術終了までの日数,術後感染の有無とした.【結果】軟部組織再建まで完遂できた症例は23例,再建に至らず切断となった症例は15例であった.初療から同一施設で治療した症例は16例で,軟部組織再建手術まで平均18.4日,5例に術後感染を生じた.転送症例は7例で,転送までの平均日数は32.1日,軟部組織再建手術まで平均52.7日,3例に術後感染を生じた.【考察】特に転送症例において,軟部組織再建までに長期間を要していた.軟部再建を要するかどうか判断に迷う症例を専門施設に集約することで,より早期に軟部組織再建が可能となり,術後感染率の低下につながることが見込まれる.

  • 中瀨 啓太, 安藤 卓, 立石 慶和, 上川 将史, 大野 貴史, 荒木 崇士, 唐田 宗一郎, 的場 啓五, 安樂 喜久
    2023 年 72 巻 3 号 p. 391-394
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脛骨近位端骨折に合併した膝窩動脈損傷の一例を報告する.【症例】57歳男性,バイク走行中の単独事故で受傷し当院へヘリ搬送となった.右下肢の明らかな変形と阻血徴候を認めたため即時造影CTを施行したところ,膝窩動脈の閉塞が明らかとなった.合併損傷は右大腿骨骨幹部骨折,右脛腓骨近位端および骨幹部骨折,右膝窩部挫創であった.できるだけ速やかに手術室へ搬入し,血行再建,創外固定術,減張切開を行い受傷後1週までに内固定を終了した.減張切開創は最終的に植皮を要した.術後阻血徴候は無く経過し,受傷2ヶ月の時点で回復期病棟へ転院となった.【考察】本症例では,受傷後約5.5時間で再灌流が得られた.膝窩動脈レベルでの動脈損傷に対しては阻血時間の短縮が優先されるべきであり,まず造影CTでの評価を速やかに行ったことで早期入室が可能となり,血行再建にて患肢を温存することができた.

  • 朝永 育, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 太田 真悟, 池永 仁, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 3 号 p. 395-398
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    骨折関連感染Fracture related infection(FRI)は骨折治療を難渋させる原因となる.持続局所抗菌薬灌流continuous local antibiotics perfusion(CLAP)は新たな治療方法として注目されており,今回我々はFRIにおいてCLAPを使用した症例を経験したので報告する.症例は2020年5月から2022年6月までの6例(男性4例),平均年齢35.6歳(24-45歳),対象となる疾患は下腿骨折,足部開放骨折,踵骨骨折それぞれ2例ずつであった.CLAP使用期間の平均日数は10.2日(5-15日)であった.5例でインプラントは温存できたが,1例でCLAP使用半年後に感染が再燃し,抜釘術と再度CLAPを行った.最終的には全例で感染沈静化と骨癒合は得られた.FRIにおいてCLAPを使用することでインプラント温存のままでの感染沈静化が得られやすい可能性が示唆される.

  • 名取 孝弘, 山口 亮介, 本村 悟朗, 濵井 敏, 川原 慎也, 佐藤 太志, 原 大介, 宇都宮 健, 北村 健二, 中島 康晴
    2023 年 72 巻 3 号 p. 399-401
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】寛骨臼移動術(TOA)などの関節温存術は,前初期変形性股関節症(OA)に推奨される治療法だが,中年期以降の患者において保存治療症例と比較された報告はなく,その有効性には結論が出ていない.本研究の目的は,中年期の初期OA患者においてTOAが保存治療と比較して股関節予後を改善するか検討することである.【方法】寛骨臼形成不全に伴う初期OAの中年期(45-64歳)患者で5年以上経過観察された患者のうち,TOAを施行されたTOA群77例(女性68例,平均年齢:51歳,平均観察期間:13年)と,対側手術から1年以上保存治療が行われた保存治療群64例(女性59例,平均年齢:53歳,平均観察期間:13年)において関節生存率を比較検討した.【結果】THA移行での関節生存率は,TOA群92%,保存治療群64%と,TOA群は保存治療群よりも関節生存率が有意に高かった.【考察】寛骨臼移動術は中年期の初期OA患者の股関節予後を改善する.

  • 石川 喜仁, 渡邉 弘之, 岡田 龍哉, 興梠 航, 酒本 高志, 相良 孝昭
    2023 年 72 巻 3 号 p. 402-404
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】骨盤骨切り術は以前から静脈血栓塞栓症(VTE)の高リスクと考えられているが,その頻度は明らかになっていない.当院の寛骨臼回転骨切り術(RAO)における術後VTEについて調査した.【対象と方法】2013年から2022年に行ったRAO 77関節,女性75/男性2,手術時平均年齢41.9歳.術後通常の理学的予防法を行い,薬物予防法は症例に応じて判断した.以上の症例におけるVTEの発生頻度,発生に影響を与える因子を調査した.【結果】VTEの発生率は18.2%であった.手術時期が2016年以前では22.4%,2019年以降では10.7%と低下傾向にあったが有意差はなかった.VTEあり群となし群で比較した結果,手術時年齢がVTEあり群で有意に高かった.【考察】RAO術後VTEは高率に発生しており,手術時年齢が高い場合はより積極的な予防を行うべきである.手術時期による発生率の低下は,離床までの期間の大幅な短縮やベッド上での早期自動運動開始などが要因と考えられる.

  • 久米 慎一郎, 原口 敏昭, 山木 宏道, 林田 一友, 後藤 昌史, 平岡 弘二, 大川 孝浩
    2023 年 72 巻 3 号 p. 405-409
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】当院における変形性股関節症(股OA)患者の背景,術式,患者数の経時的変化を検討した.【対象と方法】1984年から2019年の36年間で,股OAに対して,初回手術を行った4509関節を対象とした.調査項目は性別,平均年齢,術式,1次性OAか2次性OAかを経時的に調査した.【結果】性別では,女性患者が圧倒的に多いが,男性割合は緩やかに上昇傾向であった.平均年齢は41歳(1984年)から68歳(2019年)に高齢化しており,術式は2000年までは関節温存手術であるキアリ骨盤骨切り術(キアリ手術)と人工股関節置換術(THR)はほぼ同数であったが,2000年以降はTHR症例数が徐々に増加し,現在では圧倒的にTHR症例数が多くなっていた.また,1次性OAは約10%前後であった.【考察】股OAの初回手術において,徐々に高齢化を認め,男性症例や1次性OA患者の増加を認めた.また,骨切り手術を必要とする若年者も大幅に減少傾向であった.

  • 榛澤 空良, 萩尾 聡, 末田 麗真, 原田 知, 河野 絋一郎, 馬場 省次, 松井 元, 馬渡 太郎
    2023 年 72 巻 3 号 p. 410-414
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】S-ROM®を用いた人工股関節全置換術後に,広範囲骨欠損を生じ,金属補填材料であるTMARS®を用いて再置換を行なった1例について報告する.【症例】症例は68歳女性.前医で両変形性股関節症に対し両側S-ROM®を用いてTHA施行された.11年後の当科受診時,単純X線写真で右股関節カップ周囲に巨大な骨欠損を認めた.関節内には大量の黒色肉芽組織が充満しており,メタローシスの所見であった.骨欠損部はTMARS®とロングステムを用いて再建し,良好な安定性を得ることができた.【考察】THA再置換術時の骨欠損への対応としてTMARS®を用いた.TMARS®の利点として,強固な初期固定性が得られ,圧潰や吸収の心配が無く,早期荷重を行うことができる.再置換術の術前計画では3D骨モデルによる評価とシミュレーション,また術中のポータブルナビゲーションを用いたカップ設置支援も有用であった.

  • 恵濃 大輔, 瀬尾 哉, 木下 浩一, 松永 大樹, 土肥 憲一郎, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 3 号 p. 415-417
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,肥満症例に対するAL-Spineアプローチ(ALSA)およびDirect anteriorアプローチ(DAA)を用いた人工股関節全置換術(THA)の周術期合併症を比較検討することである.2014年4月から2021年4月までに同一術者によりALSAおよびDAAによるTHAを施行し,BMI:30kg/m2以上の31例33股(男性10股,女性23股)を対象とした.手術時年齢は平均61歳,観察期間は平均3.7年で,手術時間,術中出血量,周術期総出血量,合併症を調査した.両群(ALSA群/DAA群)の手術時間は115±24/106±18(分),術中出血量は0.5±0.15/0.48±0.2(L),周術期総出血量は1.7±0.5/1.67±0.7(L),合併症は0股/外側大腿皮神経障害2股(11%)であり,いずれも両群に有意差を認めなかった.Cup外方開角に有意差はなく,前方開角は14.9±5.1/18.1±6.0(°)とDAA群で有意に大きかった(P=0.05).また3°以上のStem内反設置はALSA群が0股,DAA群が4股(22%)であった.肥満に対するTHAの周術期合併症は,手術時間や出血量は同等だが,Stemのアライメント不良や神経損傷はDAA群で多い傾向にあった.

  • 上川 将史, 中瀨 啓太, 的場 啓五, 荒木 崇士, 唐田 宗一郎, 大野 貴史, 安藤 卓, 立石 慶和, 安樂 喜久
    2023 年 72 巻 3 号 p. 418-420
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    臼蓋形成不全股(Crowe III/IV型)4関節に対する,Direct anterior approach(前方進入法)THAの治療経験を報告する.Crowe III:3股,Crowe IV:1股,手術時平均年齢65.6歳,術後経過観察期間は平均3.1年であった.JOAスコアは術前平均34.0点が最終観察時平均81.5点に改善した.カップCE角は-23度を1股で呈したが,他3股はいずれも0度であった.カップ外方開角平均45.25度, 前方開角平均13.1度であった.ステム沈下は平均0.5mmで,カップのゆるみ,脱転,術後脱臼は認めていない.脚延長量は平均24.2mmで坐骨神経麻痺はいずれも認めなかった.高度臼蓋形成不全股に対するDAA-THAでは,適正なカップ設置が可能で短期成績も良好であった.

  • 渡邉 弘之, 興梠 航, 酒本 高志, 岡田 龍哉, 石川 喜仁, 相良 孝昭
    2023 年 72 巻 3 号 p. 421-423
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】高位脱臼性股関節症に対する大腿骨短縮骨切り術併用THAをおこなう場合,骨切り部の安定性をどのように得るかが問題となる.当科ではtransverseで骨切りし,ロッキングプレートで固定しているが,この方法の手術成績を調査した.【方法】大腿骨短縮骨切り術併用THAをおこない,術後1年以上経過観察できた4例5関節,全例女性,手術時平均年齢63.2歳.ステム側のX線学的評価,JOAスコア,脚延長量,合併症を調査した.【結果】短縮骨切り部の骨癒合は全例で得られ,最終観察時全例Bone Ingrown Fixation,JOAスコアは術前平均46.3点が,最終平均84.4点に改善,脚延長量は平均36.3mm.【考察】本手術は脚延長による神経障害,短縮骨切り部の骨癒合不全,筋力低下による易脱臼性,大きな手術侵襲による感染などの合併症発生が懸念され,技術的に困難を伴う.【結語】transverseで骨切りし,ロッキングプレートで固定する方法は簡便であり,短期成績は良好であった.

  • 座間味 陽, 中村 嘉宏, 坂本 武郎, 舩元 太郎, 日吉 優, 山口 洋一朗, 今里 浩之, 平川 雄介, 帖佐 悦男
    2023 年 72 巻 3 号 p. 424-426
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    股関節高位脱臼に対して大腿骨遠位短縮骨切り術を併用した1例を経験したので報告する.【症例】72歳女性,1980年に左人工股関節置換術(以下THA),以降,右THA並びに2003年に左THA(Depuy AML)を施行.徐々に左股関節痛の増悪を認め,X線にて高度寛骨臼骨欠損に伴うカップの高位脱臼を認めた.手術は同種骨移植後原臼位にセメントレスカップを設置.Well fixed状態のためステムは温存し,大転子移動量70mmであったため大腿骨遠位35mm短縮骨切り術を併用.術後麻痺なく経過した.【考察】広く転子下骨切り術は併用される一方,既存ステム挿入例や近位高度骨変形などでは遠位骨切りも選択肢の一つとなり得る.

  • 春島 慎之介, 瀬尾 哉, 木下 浩一, 松永 大樹, 土肥 憲一郎, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 3 号 p. 427-429
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,京セラ社製3D-porous SQRUM Cupを使用した人工股関節全置換術(以下THA)の中期X線学的評価を行うことである.2014年10月から2017年4月までに,SQRUM Cupを使用したPrimary THAのうち,術後5年以上の経過観察が可能であった35例35股(男性:3股,女性:32股)を対象とした.手術時年齢は平均68±7.8歳,観察期間は平均5.5±0.7ヵ月であった.原疾患は全て変形性股関節症であった.Cupの固定性(McPherson分類),Initial gapの有無とGap消失までの期間を調査した.コントロール群としてそれまで使用していた同社のHAコーティングされたAMS HAカップ37股を用い,各評価項目について2群間で比較した.Radiolucent lineを認めた症例はなく,Cup固定性は全例でBone ingrowthであり,再置換術を要した症例はなかった.Initial gapは両群とも約1割の症例で認めたが,術後半年以内にギャップは消失していた.3D-porous SQRUM Cupを使用したTHAの中期成績は良好でAMS Cupに劣らない成績が得られた.

  • ―ZedHipを用いたシミュレーションでの検討―
    金岡 丈裕, 今釜 崇, 岡崎 朋也, 松木 佑太, 川上 武紘, 山﨑 和大, 坂井 孝司
    2023 年 72 巻 3 号 p. 430-432
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    GS-Taper stemが良好な固定様式を得られる症例の特徴を明らかとすること.【方法】2018年4月以降に当院でTHAを施行された女性の249関節を対象とし,LEXI社のZedHipを用いて検討を行った.骨形態評価として,CC ratio,CI,CFIを計測した.stemはnativeの頚部前捻角と内側flareに適合する最大サイズを挿入し,大腿骨髄腔に対角線上に2点以上接触した状態を固定とした.固定様式がMediolateral/Flare fitであった症例をF群(212例),Diaphyseal/Multipoints fitであった症例をU群とし(37例),両群間で骨形態,設置角について有意差を検討した.【結果】U群で有意にCC ratioは小さく,前捻,CI,CFIは大きかった(p<0.05).その他の項目に有意差は認めなかった.【まとめ】皮質骨が厚く近位髄腔径の変化量は少ないがフレアが相対的に大きい症例を除くと,GS-Taperステムは良好な固定様式が得られていた.

  • 宮近 信至, 川原 慎也, 國分 康彦, 濵井 敏, 赤崎 幸穂, 津嶋 秀俊, 中島 康晴
    2023 年 72 巻 3 号 p. 433-436
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【背景】人工膝関節全置換術(TKA)において,大腿骨前方切除面の‘Grand piano sign’が回旋設置を確認する指標として提唱されているが,これは内側型変形性膝関節症(OA)で提唱された指標であり,外側型膝OAでも同様であるか,検討したものはない.【方法】外側型膝OAでTKAを施行した30例の術前CTを用いて,三次元術前計画ソフト(Zed Knee)内でsurgical epicondylar axis(SEA)に平行(NR),3°内旋(IR),3°外旋(ER)での前方切除面をsimulationし,内側顆/外側顆の高さの比率(M/L比)を検討した.【結果】M/L比は,NRで0.59±0.11,IRで0.68±0.12と増大,ERで0.49±0.09と減少し,数値・傾向とも過去の内側型OAの報告と同様であった.【考察】外側型膝OAにおいても‘Grand piano sign’は有用な指標となり得た.

  • 田原 健太郎, 前山 彰, 山﨑 裕太郎, 宮﨑 弘太郎, 柴田 光史, 松永 大樹, 中山 鎭秀, 石松 哲郎, 村岡 邦秀, 萩尾 友宣 ...
    2023 年 72 巻 3 号 p. 437-440
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    関節リウマチは変形性膝関節症より後足部が障害されている可能性があるが,人工膝関節全置換術前後で後足部を構成する距骨下関節代償能を検討した報告はない.そこで,当科にて関節リウマチ症例の距骨下関節代償能を検討した.2019年10月から2022年3月に当科にて人工膝関節全置換術を行われた関節リウマチ症例10例10膝を対象とし,術前および術後3か月での下肢アライメント,後足部アライメントを単純X線検査で評価した.平均年齢70.1歳,女性9膝男性1膝で,術前と比較し,術後にjoint line convergence angleとhindfoot alignment angleが有意に低値であった.関節リウマチの距骨下関節代償能は変形性膝関節症よりも低下していた.Hindfoot alignment angleを測定することで術後の後足部や足関節の愁訴を予測できる可能性がある.

  • 佐々木 良, 大角 崇史, 佐藤 実砂, 藤井 陽生, 安部 大輔, 麻生 龍磨, 瀬尾 健一, 今澤 良精
    2023 年 72 巻 3 号 p. 441-444
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】人工関節置換術において,術後感染症は最も避けたい合併症の1つである.リウマチ(以下RA)患者では術後感染症発症率が上昇するという報告が多い.近年は生物学的製剤(以下バイオ)・JAK阻害薬(以下JAK)投与下での手術が増加している.2016年7月28日以降独自にそれらの術前休薬期間を定めており,RA患者における深部感染の発生率や休薬期間の妥当性を検討した.【方法】2016年7月28日から2021年7月31日の5年間に行われた人工関節置換術339例について,術後再手術を要した深部感染の有無を調べた.【結果】339例中RA症例は109例であり,術後再手術を要した深部感染は2例(1例はJAK投与例),非RA症例では2例であった.【結論】RA患者やバイオ・JAK阻害薬投与での深部感染症の増加は有意ではなかった.休薬期間に関しても妥当と考えられるが,症例を蓄積し検討していく必要がある.

  • 縄田 知也, 宇都宮 健, 本村 悟朗, 濵井 敏, 川原 慎也, 佐藤 太志, 原 大介, 山口 亮介, 北村 健二, 中島 康晴
    2023 年 72 巻 3 号 p. 445-447
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)の予後因子として海外では壊死体積や壊死のサイズが頻用される一方,日本ではType分類が重視され,Type B/C1では圧潰進行が静止する場合もあるとの報告があるが,一定の見解は得られていない.今回Type B/C1での圧潰進行に関連する因子を検証した.【方法】2010年1月-2017年8月に当科を受診したONFH症例の中で,発症後1年以上保存的に経過観察し得たType B/C1の39例41股を対象とした.単純X線で発症時から各受診時の圧潰幅を計測し,1mm以上の圧潰進行の頻度を調査した.また単純MRIを用い壊死体積(%),サイズを表すCombined Necrotic Angle,深さを表すNecrotic Depth Ratioを評価し,圧潰進行の有無と比較した.【結果】41股中25股(60.9%)で1mm以上の圧潰進行を認めた.圧潰進行群では圧潰非進行群と比べ,壊死体積,Combined Necrotic Angle,Necrotic Depth Ratioはいずれも有意に高値であった.【考察】Type B/C1で壊死体積やサイズ,壊死の深さを加味することで圧潰進行の予測に有用であった.

  • ―片側例と両側例の比較―
    鷲﨑 郁之, 仲宗根 哲, 翁長 正道, 伊藝 尚弘, 譜久山 倫子, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 3 号 p. 448-451
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】片側変形性股関節症(片側OA)と両側変形性股関節症(両側OA)の脊椎骨盤アライメントについて検討した.【対象】当院で行った初回人工股関節全置換術41例41股を対象とした.(片側OA群31股,両側OA群10股)【方法】術前単純X線像から脚長差,脊椎骨盤アライメントについて検討した.【結果】片側OA群と両側OA群の脚長差は平均13.0mm,3.4mmで有意差を認めた(p<0.05).冠状面骨盤傾斜を25/41例(61%)に認めた.冠状面骨盤傾斜角は両群間で有意差を認めなかった.片側OA群の冠状面骨盤傾斜は患側下降が15例(83%),健側下降が3例(17%)であった.CE角,Sharp角,腰椎Cobb角,SS,PI,PT,LL,TK5−12,SVAはいずれも両群間で有意差は認めなかった.【考察】片側OA群では両側OA群より脚長差が大きかったが,両群間で脊椎骨盤アライメントの差はなかった.

  • 上田 誠也, 今釜 崇, 川上 武紘, 金岡 丈裕, 岡﨑 朋也, 関 寿大, 関 万成, 坂井 孝司
    2023 年 72 巻 3 号 p. 452-455
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】人工股関節全置換術(THA)の術後成績に,CTによる股関節周囲筋の筋量,筋質が関連すると報告されている.Bioelectrical impedance analysis(BIA)による筋肉量の評価は同様に有用とされているが,Phase Angle(PhA)による筋質評価が有用かどうかについて報告はない.今回,THA術前の患者において,BIAとCTの筋評価の相関について検討した.【対象・方法】2022年3月から8月までに当院でTHAを施行した41例82関節を対象とした.術前の下肢,体幹のPhAと筋肉量をBIAで測定した.また術前CTの中殿筋,大腰筋CT値及び体積を測定し,それぞれ相関を評価した.【結果】下肢のPhAと中殿筋CT値に正の相関を認めた.またBIAによる下肢の筋肉量,体幹筋肉量はそれぞれCTの中殿筋体積,大腰筋体積と正の相関を認めた.【考察】THA術前患者においてBIAによるPhA,筋肉量測定はそれぞれCT値,CTの筋体積と相関しており,BIAは筋質,筋肉量を簡便に測定する有用な方法と考えられた.

  • 武藤 正記, 安部 幸雄, 片岡 秀雄, 藤澤 武慶, 高橋 洋平, 山下 陽輔
    2023 年 72 巻 3 号 p. 456-458
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】近年Constitutional Varusという概念が報告され,軽度内反に設置した方が成績が良いとの報告もある.術後のアライメントが満足度や軟部組織バランスにどのように影響しているかを検討した.【対象と方法】症例はGB変法にてPS型TKAを行った55膝である.軟部組織バランスは大腿骨トライアル設置下に伸展・屈曲で計測し,この値からインサート厚を引いた値をJoint Laxity(JL)と定義し,内側・中央・外側のJLを算出した.【結果】術後のアライメントは満足度に影響していなかったが,術後FTA・脛骨設置角・術前後のFTA変化量は外側JLやバランス角に影響していた.一方で,伸展のJLは満足度に影響していた.【結語】軟部組織バランスは満足度に直結しており,計測・調整することは重要である.術後アライメントは満足度への直接的な影響はなかったが,外側JLや術前の内反が強い例では軽度内反とすることで軟部組織バランスが整い満足度が向上する可能性がある.

  • 田代 勇人, 石松 哲郎, 宮﨑 弘太郎, 山﨑 裕太郎, 中山 鎭秀, 松永 大樹, 前山 彰, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 3 号 p. 459-461
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】変形性足関節症(足関節OA)は,変形性膝関節症(膝OA)の約3割に合併するとされるが人工膝関節置換術(TKA)後の足関節アライメントに関して一定の見解はない.目的は,膝OAと足関節OA合併例でTKA後の足関節アライメントを検討すること.【対象】2019年~2021年のTKA例で,田中・高倉分類II期以上の14例.立位下肢全長で術前,術後3ヶ月,1年のHKA,KJLO,AJLO,Talar tiltを計測.臨床評価はKOOSを用いた.【結果】HKAは術前-10±5.1度から術後1年-2.3±3.0度,KJLOは術前2.0±2.8度から術後1年0.0±0.5度と有意に改善(p<0.01,p=0.02).AJLOは術前7.5±4.0度から術後3ヶ月0.3±4.8と有意に改善,術後3ヶ月から1年3.9±4.0度で有意差はなかった(p<0.01,p=0.09).Talar tiltは術前2.0±2.7度から術後3ヶ月1.0±1.5度と有意に改善,術後3ヶ月から1年0.2±0.5度で有意差はなかった(p<0.01,p=0.05).KOOSは術前38.8±15.0点から術後1年77.7±9.3点と有意に改善した(p<0.01).【結論】TKAは足関節OA合併例でも,術後3ヶ月までに足関節アライメントは改善し,その後も維持しうる.

  • 生田 拓也, 小笠原 正宣, 壷井 広大, 佐藤 翔太, 長田 宗大
    2023 年 72 巻 3 号 p. 462-465
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【抄録】高度の外反不安定性に起因すると考えられるlooseningのために人工膝関節再置換術を行った2例を報告した.症例は2例とも女性で初回手術時年齢は65歳および71歳で,いずれも他医での手術例でPS typeが使用されていた.再手術時はいずれも初回手術後3年であった.臨床的にはいずれも歩行時痛,関節水腫を認め,高度の外反不安定性を認めた.Xp,CTにてlooseningを認めた.術中所見ではMCLの大腿骨付着部での骨片を伴った剥離および実質部での断裂を認めた.いずれもインプラントと骨セメント間のdebondingが認められた.再手術はsemiconstrained typeを用いて行った.関節不安定性のために再置換術を要した症例は散見される.しかしながら高度の関節不安定性に起因すると考えられる術後比較的早期のloosenigのために再置換術を要した症例は稀である.良好な結果を得ているが,今後も注意深い経過観察が必要であると考えられる.

  • 堀川 朝広, 呉屋 亮太, 髙橋 佑輔, 今村 悠哉, 平井 奉博, 山下 武士, 緒方 宏臣, 岩本 克也
    2023 年 72 巻 3 号 p. 466-470
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【症例】72歳,女性.【現病歴】右変形性膝関節症にて当科紹介受診.鏡視下半月板切除術およびDistal tuberosity osteotomy(DTO)を施行した.【経過】術後経過良好であったが骨切り後11週に脛骨近位プレート創部に発赤が出現.直ちに脛骨近位部の創切開・掻爬・洗浄を施行した.関節液培養は陰性であったが血液培養にてMethicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)を認めた.術後2週間のCEZ投与にて鎮静化したが,掻爬後4週目(骨切り後15週)に再び創部の発赤出現.早期に2回目の創切開・掻爬・洗浄し,汚染が高度と考えられた脛骨粗面およびプレート近位・遠位のスクリュー1本ずつの計3本のみを抜去した.術後3週間のCEZ投与を行い,その後はCEX内服とし感染の鎮静化が得られた.【考察】過去の報告では骨切り後の感染にてインプラントを抜去する報告が散見される.しかしながら感染発症早期に掻把・洗浄と同時に起炎菌検索,その後の起炎菌感受性の抗生剤投与によってはインプラント温存も可能であると考える.

  • 笹岡 眞光, 武藤 和彦, 池田 天史, 宮崎 眞一, 土田 徹, 川添 泰弘, 二山 勝也, 片山 修浩, 田中 みずほ
    2023 年 72 巻 3 号 p. 471-473
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    柔道の練習中に生じた上前腸骨棘と腸骨稜の同時裂離骨折の1例を経験した.症例は15歳の女性で柔道の練習中に技をかけた時に発症した.X-p,CTで上前腸骨棘と腸骨稜の裂離骨折を認めた.骨片の大きさ(86mm),転位の大きさ(12mm)から保存的加療を行った.受傷後3週まで免荷,受傷後5週で日常生活への復帰,受傷後12週で柔道競技を再開した.骨盤裂離骨折の発症頻度については坐骨結節50%,上前腸骨棘23%,下前腸骨棘22%,腸骨稜2%との報告があり,本症例は非常に稀な腸骨稜と上前腸骨稜の同時裂離骨折である.両裂離骨折とも保存的加療での良好な結果が報告されているが明確な手術療法の適応基準がなく,本症例を元に文献的考察を含め報告する.

  • 弦本 直治, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 太田 真悟, 池永 仁, 朝永 育, 橋口 元一, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 3 号 p. 474-476
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    スポーツ中に強い外力が加わり大腿部の動脈に損傷を来すことがある.仮性動脈瘤に対しては血管塞栓術が一般的に行われているが,それに付随する血腫形成に対して外科的にアプローチすべきか否かに関しては一定のコンセンサスが得られていない.今回,外傷後大腿四頭筋内の血腫形成を伴う仮性動脈瘤を来した2例を経験したので報告する.【症例】症例は18歳男性と16歳男性.両者共に大腿四頭筋内に長径約80mm大の血腫形成を認めた.前者はIVRのみ施行し,後者は広範囲に筋肉が腫大しており緊張も強かったためIVR後に外科的血腫除去術を施行した.処置から退院までの期間はそれぞれ3日,6日であった.【考察】外科的血腫除去術を施行した症例は術創の治癒も含めるとやや退院までの時間がかかったが,いずれの症例もその後の回復期間に大差は認めなかった.外科的血腫除去を施行するかどうかに関しては慎重に判断すべきである.

  • 脇田 将嗣, 西田 一輝, 森 啓介, 平岡 弘二
    2023 年 72 巻 3 号 p. 477-480
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者や濃厚接触者が手術を要する場合,対応可能な施設に集約される傾向がある.今回,COVID-19流行に伴い当院で手術時の対応マニュアルを作成,手術症例を経験したので報告する.陽性患者に対する手術は暴露リスクがあるが,感染防御策を正しく講じることで安全に手術を行うことができた.実際に手術を行う中で問題点をみつけ,改良することができた.

  • 加藤 慶一, 関 寿大, 関 万成, 今釜 崇, 岡﨑 朋也, 金岡 丈裕, 上原 和也, 坂井 孝司
    2023 年 72 巻 3 号 p. 481-484
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】外側円板状半月板(以下,DLM)に対し半月板形成切除術を行った症例において,術後残存半月板の逸脱・幅の縮小が認められることが報告されているが,その経過は明らかではない.今回,我々はMRIを用いて術後半月板形態変化の評価を行った.【対象と方法】2015年4月~2020年8月に,有症状のDLMに対して半月板形成切除術および縫合術を行い,経過観察1年未満,MRI描出不良であったものを除外した18例20膝を対象とした.男性11膝,女性9膝で平均年齢は21.6歳(6~47歳)であった.術後3,6,12カ月でのMRIを撮像し,術後半月板前中後節の幅と高さ,中節部逸脱量の評価を行った.【結果】前節・中節・後節部いずれでも経時的に半月板幅は減少し,12カ月後の残存幅は前節と比較して中節部で有意に小さかった.また,半月板の中節部逸脱量は術後増大した.【結語】半月板幅は経時的に縮小し,中節部逸脱量は増加した.中節部に対して今後術中温存幅を増やす必要性がある.

  • 川越 亮, 田島 卓也, 山口 奈美, 大田 智美, 長澤 誠, 森田 雄大, 横江 琢示, 帖佐 悦男
    2023 年 72 巻 3 号 p. 485-487
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】観血的整復術を必要とした第2趾のDIP関節脱臼の1例を経験した.【症例】16歳男性.空手中に受傷.第2趾DIP関節脱臼で徒手整復を行ったが整復不能であったため,観血的整復術を行った.整復阻害因子は長趾屈筋腱であり,蹠側板の嵌頓は認めなかった.術後早期の競技復帰希望があったため母趾とのbuddy tapingを指示し復帰とした.術後6か月が経過し特に問題なく競技継続している.【考察】DIP関節脱臼の整復阻害因子は蹠側板や長趾屈筋腱の報告があり,本症例では長趾屈筋腱であった.また,術後のスポーツ復帰について,競技によっては症状次第で早期復帰が見込めると考えられた.

  • 片岡 佑太, 萩尾 友宣, 吉村 一朗, 石松 哲郎, 杉野 裕記, 深川 遼, 朝長 星哉, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 3 号 p. 488-491
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】第1中足骨遠位直線状骨切り術(DLMO)はK-wire 1本のみで固定する方法であり,K-wireの挿入位置は外反母趾の矯正において重要な因子である.今回,術直後の単純X線を用いてK-wireの至適挿入位置を検討した.【対象と方法】2016年1月から2022年7月までに当院で軽度から重度の外反母趾に対しDLMOを施行した49例64足を対象とした.術直後の単純X線を用いて第1中足骨骨軸とK-wireの挿入角度を測定し,術前後のHVA,IMA,DMAAの変化量および中足骨頭外側移動率との相関関係を解析した.【結果】K-wire挿入角度は3.6±5.2°であり,HVA変化量は40.1±8.5°,IMA変化量は10.3±3.0°,DMAA変化量は8.4±8.6°,中足骨頭外側移動率は57±9.7%であった.K-wire挿入角度はHVA変化量と有意な負の相関を認めたが,IMA,DMAA変化量および第1中足骨頭外側移動率に関しては有意な相関を認めなかった.【結語】DLMOでは第1中足骨骨軸に沿ってK-wireを挿入することで,HVAを矯正することができる.

  • 畑中 敬之, 土持 兼信, 岩崎 賢優, 河野 裕介, 大森 裕己, 江口 大介, 木戸 麻理子, 衛藤 凱, 兼田 慎太郎, 土屋 邦喜
    2023 年 72 巻 3 号 p. 492-494
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    Morton病は底側趾神経の絞扼性神経障害であり,保存加療が奏功しない場合は神経腫切除が選択されるが,初回手術にて症状が改善しない場合も時にある.初回手術後に症状の残存もしくは再燃した2症例に対して再手術を施行したので報告する.【症例1】78歳男性.4年前に第3趾間の神経腫を足背切開にて切除するも症状は軽快せず,当院転医となった.保存的加療にて症状の改善に乏しく,足底切開による再手術を施行し,3mm径の神経腫を摘出した.再手術前より症状は改善し,内服薬が減量できたが,履物の制限を認めた.【症例2】62歳男性.足底切開による初回手術後,症状は消失していた.4年後に第3趾間に疼痛,引っ掛かりを自覚し,当院紹介となった.足底切開にて再手術を施行し,周囲の癒着を伴う神経腫を切除した.症状は著明に改善した.【考察】2症例とも疼痛の改善を認めた.ある程度の疼痛残存や活動制限について再手術前に説明することが必要である.

  • 金城 英樹, 山口 浩, 当真 孝, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 3 号 p. 495-497
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    リバース型人工肩関節は,腱板修復・再建を施行せずとも良好な屈曲の肩関節可動域(以下,ROM)が獲得できる.一方,内・外旋ROM・筋力の改善は限定的である.可及的な腱板修復と大胸筋腱移行を併用したリバース型人工肩関節(以下,RSA)の治療成績を報告する.対象は,腱板断裂性肩関節症・広範囲腱板断裂に伴う偽性麻痺に対しRSAを施行し12カ月以上経過観察が可能であった8例8肩(男性4肩,女性4肩)とした.手術時平均年齢は74.2歳,平均経過観察期間は24.9カ月であった.ROM(屈曲・外旋・内旋),JOAスコア,合併症を調査した.結果は,屈曲(術前/術後)(50°/138°),外旋(20°/35°),内旋(JOAスコアを用いて点数化)(2.6点/4.6点),JOAスコアは(術前/術後)(44.1点/82.6点)であり,合併症は認めなかった.RSAは良好なROM,機能改善が得られ,有用な術式と思われた.

  • 高須 博士, 水内 秀城, 屋良 卓郎, 石橋 正二郎, 徳丸 達也, 倉員 太志, 上原 航
    2023 年 72 巻 3 号 p. 498-501
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】稀とされる肩関節下方脱臼を2例経験したため報告する.【症例】症例1:76歳男性.転倒受傷後の左肩関節痛にて受診し,左上肢は挙上位の状態で動作時痛を認めた.画像上,大結節骨折を伴う肩関節下方脱臼を認め,上腕骨頭の後上方は関節窩に陥入していた.肩関節を牽引内旋して上腕骨の陥入を解除後,Kocherの手技で整復した.症例2:77歳女性.転倒受傷後の右肩関節痛にて受診し,右上肢は下垂位の状態で動作時痛を認めた.画像上,大結節骨折を伴う肩関節下方脱臼を認め,大結節は関節窩に陥入していた.上腕を長軸方向遠位へ牽引して大結節の陥入を解除後,肩関節を外転し整復した.2例ともに整復後の大結節骨折の転位は2mmであったため保存加療を選択した.【考察】肩関節下方脱臼は,肩関節脱臼全体の0.5%の発生頻度で稀である.前方脱臼と同様の整復では医原性骨折を来す可能性があり,正確な診断と状況に応じた整復が重要である.

  • 呉屋 亮太, 緒方 宏臣, 山下 武士, 堀川 朝広, 平井 奉博, 今村 悠哉, 髙島 佑輔
    2023 年 72 巻 3 号 p. 502-504
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    てんかん発作に伴い,さまざまな骨折や脱臼が発生する.今回,てんかん発作に伴い発生した両側性の肩関節前方脱臼骨折の症例を経験した.併存疾患にてんかん・軽度知的障害がある25歳男性がてんかん発作のために当院脳神経内科に入院された.入院時から両肩痛がみられていたことから,入院後3日目に単純CTで両肩関節前方脱臼骨折の診断となり当科紹介となった.両側ともに大結節骨折のみであり,肩甲骨関節窩・上腕骨頭の骨欠損は軽度であった.全身麻酔下に透視下整復した後は再脱臼もみられず,保存療法により短期的な成績は良好である.

  • 齋藤 文寿, 三宅 智, 柴田 光史, 小林 駿介, 松永 慶, 伊﨑 輝昌, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】肩甲骨関節窩前縁骨折に対する鏡視下骨接合術の治療成績の報告は多くない.【目的】本研究の目的は,肩甲骨関節窩前縁骨折に対する鏡視下骨接合術の治療成績を明らかにすることである.【方法】対象は,2010年4月から2020年4月までの間に当院および福岡リハビリテーション病院で手術を行い,術後2年以上連続して経過観察可能であった肩甲骨関節窩前縁骨折24例24肩(手術時平均年齢:45.8歳,男:女=16:8,関節窩に占める骨片サイズ:34.4%)とした.関節可動域,臨床スコア(JOA Score,:JSS-SIS score)および骨癒合率を後ろ向きに調査した.【結果】術後2年時の挙上,外転,外旋はそれぞれ163.3°,163.3°,63.1°,JOA Scoreは98.1点,JSS-SIS scoreは95.5点であった.術後の関節不安定性はなかった.CT検査では全例骨癒合していた.【まとめ】肩甲骨関節窩前縁骨折に対する鏡視下骨接合術の治療成績は良好であった.

  • 清水 黎玖, 小宮 紀宏, 髙村 優希, 大森 治希, 土居 雄太, 眞島 新, 平林 健一, 松下 優, 馬場 覚, 塚本 伸章, 林田 ...
    2023 年 72 巻 3 号 p. 509-512
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】陳旧性肩関節脱臼は受傷後3週以上経過したものと定義される.画一的な治療法はなく保存的治療を推奨する報告も散見される.今回,陳旧性肩関節前方脱臼骨折に対し,観血的整復を行った1症例を報告する.【症例】74歳,男性.砂利道で転倒し受傷.左肩痛を自覚し受傷後31日で前医を受診.初診時,左肩関節可動域(ROM)は屈曲30°,外転30°,外旋0度,内旋不可.日本整形外科学会肩関節疾患治療判定基準(JOA score)25点.画像検査で左肩前方脱臼,大結節骨折,肩甲骨関節窩骨折を認めた.手術では周辺軟部組織を十分に剥離することで整復位を得た.術後は4週間のスリングショット固定を行ない,術後23週時で整復位は良好であった.ROM(屈曲60°,外転45°,外旋35°,内旋L2),JOA scoreは66点へ改善.【考察】観血的治療を行い,著明な可動域改善は得られなかったが除痛効果を認め,再脱臼なく経過し日常生活での満足度も高かった.

  • 大西 啓志朗, 村岡 辰彦, 上野 宜功, 谷口 昇
    2023 年 72 巻 3 号 p. 513-517
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】肩関節後方脱臼骨折は肩関節脱臼中0.9%と稀な疾患である.当院にて肩関節後方脱臼骨折に対して観血的整復固定術を施行した3症例の治療成績を報告する.【症例】年齢は52・41・46歳,全例男性であった.受傷機転はバイク事故2例,転落外傷1例と高エネルギー外傷であった.いずれも上腕骨頭関節面前方の陥没骨折を有し,1例は大小結節骨折を含む4part骨折,2例は2part骨折であった.それぞれ,受傷4・5・12日目に手術を行った.全例Deltopectoral approachで進入し,骨頭骨片をjoy stick法にて整復してプレート固定を行った.3例いずれも術後3か月で骨癒合を認め,術後再脱臼は認めなかった.JOA scoreはそれぞれ最終観察時に100,100,97点と良好な結果であった.【結語】肩関節後方脱臼骨折はDeltopectoral approachでの観血的脱臼整復,プレート固定で良好な結果を得ることができる可能性がある.

  • 徳丸 達也, 水内 秀城, 屋良 卓郎, 石橋 正二郎, 高須 博士, 倉員 太志, 上原 航
    2023 年 72 巻 3 号 p. 518-521
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    症例は56歳男性.崖から約30m滑落し受傷.左肘頭脱臼骨折,左近位橈尺関節脱臼,左橈骨頭骨折,左尺骨鈎状突起骨折,左尺骨骨幹部骨折を認めた.末梢の運動・感覚・循環障害は認めず,同日緊急手術にてK-wireを用いた尺骨への髄内挿入ならびに肘頭骨片の上腕骨遠位端への直接固定によって制動性を得た.受傷後6日に内固定術を施行:後方アプローチにて展開し,各々の骨傷に対して骨接合後,内反ストレスによる不安定性は損傷していた輪状靭帯・外側側副靭帯複合体の修復で消失した.外反ストレスでも著明な不安定性を呈しており,内側側副靭帯を追加修復することで良好な制動性が得られた.術後3か月時点で不安定性は認めず,左肘関節可動域は-15~120°を獲得した.重度肘関節外傷では骨傷の解剖学的再建と靭帯再建が必要とされるが,本症例ではBeingessnerのプロトコールに基づき治療戦略を立て良好な治療成績を得ることができた.

  • 大元 文香, 田中 孝明, 三宮 将典, 井ノ口 崇, 小田 和孝, 西井 幸信
    2023 年 72 巻 3 号 p. 522-524
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    当院では高齢者の上腕骨遠位部骨折に対して創外固定を用いた治療も行なっている.2016年2月~2022年2月,当院で手術加療を施行した65歳以上の高齢者78例のうち初期治療において創外固定を選択した13例を対象とした.合併症,手術侵襲(手術時間および術中出血量)及び治療成績(可動域)について検討した.合併症は創外固定ピンの破損2例,感染1例,偽関節2例であった.手術時間・出血量ともプレート固定をした群に比較して有意に低侵襲であった.最終診察時(術後6ヶ月)の肘関節は屈曲では有意差を認めなかったが,伸展で創外固定群が伸展制限を認めた.高齢者の上腕骨遠位部骨折に対して創外固定を用いた治療は,手術侵襲が低く軟部組織状態が不良な症例に対しても早期に手術が可能であった.高齢者の上腕骨遠位部骨折に対する創外固定は,治療選択肢の一つになりうると考えられる.

  • 高橋 洋平, 安部 幸雄, 山下 陽輔, 藤澤 武慶, 武藤 正記, 片岡 秀雄
    2023 年 72 巻 3 号 p. 525-527
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    手指PIP関節ロッキングの報告は少なくその原因は様々である.外傷によりPIP関節ロッキングを発症した1例を経験したので報告する.症例は16歳男性.柔道の練習中に左環指を過伸展させ受傷し,PIP関節の伸展が不能となり受傷3日後に当科受診となった.環指PIP関節の可動域は他動で伸展-30°,屈曲90°であり,PIP関節橈側の圧痛と尺側への側方動揺性を認めた.MRIではPIP関節内に軟部組織の嵌頓を認めた.受傷後7日目に手術を行なった.側索と断裂したRCLがPIP関節内に嵌頓しており,これらを整復することで完全伸展が可能となった.基節骨頭の背側で中央索と側索間が断裂しており,一時的に基節骨頭が脱臼した,PIP関節の掌側脱臼であったと考えられた.PIP関節ロッキングの原因は種子骨の嵌頓や伸筋腱と骨棘のインピンジ,滑膜性骨軟骨腫などの報告があるが,外傷に起因するものは稀である.損傷部位の推察にはMRIが有用であった.

  • 太田 克樹, 古江 幸博, 後藤 剛, 川嶌 眞人, 田村 裕昭, 永芳 郁文, 本山 達男, 佐々木 聡明, 渡邊 裕介, 半田 和佳, ...
    2023 年 72 巻 3 号 p. 528-530
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    母指MP関節垂直位固定の1例を経験したので報告する.症例は30歳男性.壁を殴って受傷し右母指が伸ばせなくなり,当院を受診した.右母指MP関節は90°屈曲位で固定され,自動伸展不能であった.単純X線写真では明らかな骨傷はなく,基節骨が掌側に亜脱臼していた.無麻酔下に牽引伸展させ,容易に整復可能であった.整復後は自動運動可能となり,不安定性は認めず,経過良好である.中手骨頭が平坦で,可動域が少ないことが発症リスクであるとされ,屈曲強制力が加わることで,基節骨が中手骨頭掌側隆起を乗り越え亜脱臼し,側副靱帯が緊張することがロッキングのメカニズムと考えられており,本症例も,中手骨頭が平坦な形状であり,MP関節可動域が狭く,同様の発生機序であると考察された.

  • 加世田 圭一郎, 村山 隆, 矢崎 雄一郎, 大迫 浩文, 今林 正典, 中村 優子, 佐々木 裕美, 有島 善也, 小倉 雅, 谷口 昇
    2023 年 72 巻 3 号 p. 531-535
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【抄録】2010年から2022年の間に当院を含めた2施設で手術治療を行なった尺側CM関節脱臼骨折13例の治療成績を検討した.手術は全例Kirschner鋼線(以下K鋼線)固定を用い,田崎分類type3,4の3例でheadless screwによる固定を追加した.最終観察時の関節症性変化(以下OA変化),疼痛,関節可動域,握力健側比を調査した.1例で関節面の不整が残った.1例でpower grip時の疼痛が残った.全例で可動域制限はなかった.握力健側比は平均91%だった.低侵襲手術によるCM関節の安定化と有鉤骨遠位関節面の解剖学的整復により,良好な成績を得られたものと考えた.13例の治療成績,特に有鈎骨体部骨折を伴う3例について文献的考察を加え報告する.

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