2023 年 72 巻 4 号 p. 808-812
長時間の臥床によるコンパートメント症候群の報告は少ない.コンパートメント症候群は筋区画内圧の上昇により神経障害や筋組織の障害を生じ,しばしば不可逆的な障害を来すため,迅速な診断,治療が求められる.飲酒後ならびに抗精神病薬内服後の長時間の臥床によって生じた前腕コンパートメント症候群を2例報告する.症例はそれぞれ発症後同日,2日後に受診した.前腕の腫脹,疼痛,手指の自動運動不能の所見を認め,コンパートメント症候群を疑い,直ちにコンパートメント内圧を測定した.前腕区画内圧の上昇を認め,同日緊急で減張切開術を施行した.靴紐縫合やNPWT療法を施行し徐々に創を縫縮させ,最終的に植皮せず創閉鎖を得た.2例とも職場復帰している.飲酒後の長時間臥床によりコンパートメント症候群が生じる可能性があることを念頭に置き,治療することが重要だと考える.