2024 年 73 巻 1 号 p. 84-91
【症例1】9歳10か月女児.発症前はADL自立し,走れた.2か月前より誘因なく歩行困難となり当科へ紹介となった.受診時には歩行不能であった.【症例2】9歳男児.自覚症状はないが,転校を機に受診となった.痙性歩行であるが,小走り可能.筋力低下や感覚障害ははっきりしないが,両側下肢の深部腱反射の亢進を認めたため,脊髄症状が疑われた.2例とも頚椎X線像で環軸椎不安定性,CTで歯突起骨,MRIでは環椎高位の脊髄圧迫と脊髄内の信号変化を認め,環軸椎不安定症による脊髄症と診断した.脊髄症の改善を目的に,環軸椎後方固定術を施行し,術後8週間はハローベスト固定を追加した.現在,術後3年以上経過しCTで骨癒合を認め,頚部の回旋制限を認めるが,ADLは自立し小走りが可能である.ダウン症に伴う環軸椎不安定症は,脊髄症状が明らかである場合と症状が軽くても不安定性の強い症例には固定術が必要であると考えた.