整形外科と災害外科
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73 巻, 1 号
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  • ―片側THAにおける検討―
    吉本 将和, 濵井 敏, 小西 俊己, 山手 智志, 川原 慎也, 佐藤 太志, 山口 亮介, 原 大介, 宇都宮 健, 北村 健二, 本村 ...
    2024 年 73 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】脚長・オフセットがforgotten joint score(FJS)-12を含めた患者立脚型アウトカムに影響するか否かを明らかにすること.【対象】当科の初回THAで,対側健常な203例203股を対象とした.術前後の単純X線画像評価と術後の患者立脚型評価(FJS-12,Oxford hip score: HS,満足度)を行い,脚長・オフセットが及ぼす影響について多変量解析した.【結果】FJS-12が有意に低スコアを示す因子は,術後の脚長が健側より長いこと,術前の重度大転子高位例であった.脚長はOHS,満足度には有意な影響を認めず,オフセットは全てに有意な影響を認めなかった.【考察】THAの際に,安定性に懸念がある場合は過延長になるよりも,オフセットを延長する方が,FJS-12への負の影響は少ないと考えられた.

  • 當山 全哉, 仲宗根 哲, 翁長 正道, 鷲﨑 郁之, 伊藝 尚弘, 國吉 さくら, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【要旨】80歳男性.4年前にバイク事故にて右大腿骨転子貫通骨折を受傷し,髄内釘で骨接合術が行われた.術後5ヵ月後で偽関節の診断となり,人工骨頭置換術(MOD-Centaur®stem,京セラメディカル社)が行われた.しかし,徐々にステムの沈下を認め,術後3年9ヵ月でステム緩みと診断され,当科に紹介された.受診時,右股関節は外旋しており,歩行時痛を伴った.JOAスコアは67点であった.画像ではステムは内反,後捻し,ステム先端は外側へ穿破しかかっていた.血液検査では炎症所見に乏しく,穿刺培養は陰性で,ステムの緩みと診断した.手術は側臥位で行った.ステムを抜去し,カップ(G7 OsteoTi,Zimmer-Biomet社)を設置した後にセメントロングステム(CRC,Zimmer-Biomet社)を用いた人工股関節再置換術を行った.抜去ステムにはbone in-growthは認めなかった.術翌日より歩行訓練を開始し,術後3週で自宅へ退院した.術後3年でカップやステムの緩みなく,JOAスコア93点と疼痛なく経過良好であった.

  • 福島 俊, 岩田 慎太郎, 小林 英介, 小倉 浩一, 尾崎 修平, 関田 哲也, 石原 新, 戸田 雄, 村松 脩大, 鮒田 貴也, 川井 ...
    2024 年 73 巻 1 号 p. 10-13
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】下肢の骨腫瘍を広範切除した場合,腫瘍用人工関節置換術は一般的な再建方法である.当科で1990年代に行われた下肢腫瘍用人工関節置換術について,その長期成績を検討した.【方法】当科で1990年1月から1999年7月まで,下肢長管骨原発の骨腫瘍に対して行われた腫瘍用人工関節置換術の症例を対象とした.各症例の臨床経過について,後方視的に検討した.【結果】男性15名,女性13名の計28例,初回手術時年齢は中央値16歳だった.組織は骨肉腫25例,軟骨肉腫2例,骨巨細胞腫1例だった.初回術式は人工膝関節23例,人工骨頭が4例,大腿骨全置換術が1例だった.経過観察期間は中央値222.5か月であり,11例(39.3%)で切断術や再置換術を要した.転帰は原病死8例,腫瘍なし生存19例,他病死1例だった.【考察】当科の1990年代の下肢腫瘍用人工関節置換術の成績は諸家の報告と比較し遜色のない結果だった.年代別の治療成績の改善の有無も検討課題である.

  • 安達 淳貴, 城野 修, 西井 章裕, 吉兼 浩一, 大江 健次郎, 岩田 真一郎
    2024 年 73 巻 1 号 p. 14-16
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】Naviswiss®を用いたTHAのカップの設置角度の精度を調査し,K-wireを腸骨に打ち込んだ従来法と比較した.【方法】対象は2021年3月から2023年2月の期間に当院でTHAを施行した55症例を対象とし,K-wireを用いた25症例(以下K群)とNaviswiss®を用いた30症例(以下N群)に分類し,カップの術中目標設置角と術直後のレントゲンでのradiographic inclination,radiographic anteversionの絶対誤差を求め,両群間で比較した.【結果】絶対誤差はΔradiographic inclination(以下ΔRI)ではK群4.4±2.8°,N群2.5±2.4°,p=0.01であり,Δradiographic anteversion(以下ΔRA)ではK群4.8±5.0°,N群2.1±2.1°,p=0.02であった.ΔRI,ΔRAともにN群が優位に精度が高かった.【考察】本研究の結果は他のポータプルナビゲーションの報告と比較して同等の精度であった.術前Functional Pelvic Plane(FPP)と術後レントゲン撮影時のFPPが異なることや,カップを打ち込む際や,スクリュー挿入時のカップの移動が絶対誤差の要因と考えられた.

  • 樋口 富士男, 吉光 一浩, 古森 元崇, 山内 豊明
    2024 年 73 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    目的:寛骨臼の変形を伴う例や低侵襲性人工股関節全置換術に用いたスパイク付き寛骨臼シェルの有用性を報告する.症例:2001年8月から2014年10月までの間にTrilogyスパイクシェル(以下,T)を1466手術に用いた.このシェルには螺子孔がなかったので,当時のナカシマメディカル社に依頼して螺子孔のあるスパイクシェル(以下,N)を作成してもらい2013年8月より975手術に用いた.結果:寛骨臼コンポーネントに関連した術後合併症は,Tで脱臼が20(1.3%),シェルの弛緩が5例(0.3%)で,Nは,脱臼が5(0.5%),シェルの弛緩が1(0.1%)であった.再置換術が必要だったのは,Tで4(0.3%),Nで1(0.1%)股関節であった.無輸血手術を希望された29手術は,全例患者の希望に添えた手術ができた.結論:このシェルは,固定が正確で容易で,骨盤内の出血リスクも合併症も少なかった.

  • 神崎 貴仁, 滝田 裕之, 本田 祐造
    2024 年 73 巻 1 号 p. 21-23
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】近年高齢者の人工骨頭置換術(以下BHA)ではセメント使用が推奨されており,セメントBHAではステム挿入時の前捻の自由度が高い.今回我々は術中ステム前捻角を測定する器具(角度計)を使用し,測定した術中前捻角と術後CTで測定したステム前捻角を比較した.【対象】2022年4月~2023年3月までに施行した35股(右23股,左12股),平均年齢85.5歳(67-103),男性9例,女性26例であった.ステムはpolished taper typeを使用し,全例Conjoined tendon Preserving Posteriorアプローチ,第三世代のセメントテクニックで行った.ステム前捻は術後CTで評価し,ステム頸部軸とSurgical epicondal axis(SEA)のなす角度を術後前捻角と定義した.【結果】術中,術後前捻角の平均誤差は4.6±2.6°(0.2-9.9°)であり,誤差5°以内の症例が66%で誤差10°以上の症例はなかった.【結語】角度計は術中の前捻角の評価に有用であると考える.

  • 兼田 慎太郎, 河野 裕介, 岩崎 賢優, 土持 兼信, 畑中 敬之, 大森 裕己, 江口 大介, 木戸 麻理子, 衛藤 凱, 土屋 邦喜
    2024 年 73 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】非転位型大腿骨頚部骨折での単純X線学的指標,特に後捻角と再手術の関係を検討すること.【対象と方法】2018年10月から2022年3月に当院で骨接合術を施行した上記骨折中,1年以上経過観察できた38例38関節を対象とした.男性7例,女性31例,手術時平均年齢は77歳,平均フォローアップ期間は1.4年であった.手術は原則in situで固定され,内固定材料は手術時期に応じてHansson pin 9例,Twin hook 23例,DHS 6例であった.再手術群と非再手術群でX線学的指標を比較した.統計はStudent’s t-testもしくはFisher’s exact testを用い,p<0.05を有意とした.【結果】6例(16%)に再手術を要し,原因はLate segmental collapse 1例(3%),偽関節5例(13%)であった.再手術群/非再手術群でGarden分類(Stage I/II): 2/4 vs 13/19(p=1.00),Garden alignment index: 171度 vs 170度(p=0.76),後捻角: 11.6度 vs 3.2度(p=0.007)と再手術群で後捻角が有意に大きかった.後捻角毎の再手術率は,10度未満で10%(3/31),10-20度で33%(2/6),20度以上で100%(1/1)であった.【結論】再手術例は有意に後捻角が大きかった.

  • 柳田 隆宏, 土持 兼之, 藤原 悠子
    2024 年 73 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】大腿骨転子部の不顕性骨折は主にMRIで診断されるが,ペースメーカーを留置している患者や,認知症や不穏等で安静を維持できない患者への実施が制限される.我々は,主にMRIを実施することができない症例に対して,Dual Energy CT(以下DECT)を用いて骨髄浮腫を描出することで,大腿骨転子部不顕性骨折の診断の一助としてきたので報告する.【対象・方法】2020年8月から2023年2月までに当院にてDECTで大腿骨転子部不顕性骨折診断を行った8例を対象とした.整形外科医がPlane CTを読影して骨折の及ぶ範囲を確認し,その範囲とDECTの骨髄浮腫像の比較を行った.【結果】整形外科医が読影しても発見できてなかった部位の変化をDECTで確認可能であった.【まとめ】MRIを施行することが困難な患者に対し,DECTが大腿骨転子部不顕性骨折の診断の一助となり得る可能性が示唆された.

  • 小禄 純平, 衣笠 清人, 松浦 一平, 篠崎 智香子
    2024 年 73 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    ハンソン・イノベーション社製Hansson DC Nail®(以下,DC Nail)は① ヘッドエレメントがtwin hookであること,②twin hook挿入部下縁にノッチを作成することでAdvanced Dynamization(以下,AD),つまり骨軸方向へ圧迫力をかけられること,③ 遠位横止めスクリューがshort nailと同位置で280~380mmの選択肢をもつSuperior Lock Nail(以下,SL Nail)がラインナップされている,といった特徴をもつ新しいインプラントである.今回,DC Nailを用いて大腿骨転子部骨折の治療を行なった11例(short nail 8例,SL Nail 3例)の治療成績を評価した.男性1例,女性10例,手術時年齢は平均86.1歳(69~99歳),術後平均観察期間は6.4か月(3~7か月).平均スライディング量は1.8mm(0~4mm)でカットアウトや術中骨折などの合併症の発生はなかった.DC Nailは大腿骨転子部骨折における有用なインプラントであると思われた.

  • 古谷 武大, 小宮山 敬祐, 浜崎 晶彦, 美浦 辰彦, 藤村 謙次郎, 園田 和彦, 久保 祐介, 白﨑 圭伍, 松本 洋太, 原 俊彦
    2024 年 73 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】大腿骨転子部骨折の術後は早期荷重が原則であるが,骨性支持が期待できない場合に術後免荷の検討をせざるを得ない症例が存在する.当院で免荷を行った症例についてその影響を検討すること.【方法】2022年1月~2022年12月に当科で骨接合術を施行した大腿骨近位部骨折のうち,髄内釘を使用し術後2週のレントゲンを施行し得た56例57関節(手術時平均年齢84歳)を対象とした.術前骨折型は,中野3D-CT分類を使用し,Sliding量はレントゲンでの簡易評価を行った.【結果】免荷症例は7例で,免荷期間は平均5.1(2-8)週であった.Sliding量(免荷群/荷重群)は術後1週で0.77/1.58(p=0.033),術後2週で1.27/2.65(p=0.016)といずれも免荷群で少ない傾向となった.一方で入院期間は22.2/34(p=0.034)と免荷群で長かった.【結論】免荷によりSliding量は減少するが,入院期間は長くなる可能性がある.

  • 鶴 翔平, 原田 岳, 渡邊 哲也, 太田 浩二, 大崎 佑一郎, 石田 彩乃, 木原 大護, 橋詰 惇, 山下 彰久
    2024 年 73 巻 1 号 p. 40-42
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    インプラント周囲骨折や大腿骨骨折に対してポリエチレン製ケーブルを使用し,ケーブル直下の骨の骨萎縮が高頻度に生じることが報告されている.ポリエチレン製ケーブル使用例で偽関節を生じた症例を経験し,今回インプラント周囲骨折を含む大腿骨骨折で使用した33例について術後骨萎縮及び骨癒合の関係性について検討する.症例は男性7例,女性26例であり,骨折部位は大腿骨インプラント周囲骨折21例,転子下骨折10例,骨幹部骨折2例で,セメント使用例が7例であった.骨萎縮を生じた症例は24例であり,転子下骨折(100%),セメント非使用例(85%)が骨萎縮の頻度が有意に高い結果であった(p<0.05).一方で骨萎縮と骨癒合(偽関節15%)には関連はなかった(p=0.29).これまでの諸家の報告と同様に骨萎縮は高頻度生じるが,骨癒合との関連性は認められず,骨萎縮が生じた場合も経過をみることが可能であると考えられる.

  • 松本 洋太, 久保 祐介, 園田 和彦, 浜崎 晶彦, 美浦 辰彦, 藤村 謙次郎, 小宮山 敬祐, 白﨑 圭伍, 古谷 武大, 原 俊彦
    2024 年 73 巻 1 号 p. 43-45
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨骨幹部骨折術後経過において,骨癒合が完了する前に外来受診が途絶えた割合(ドロップアウト率)と偽関節率を調査した.【対象と方法】2013年1月から2021年12月までに当科にて大腿骨骨幹部骨折に対し,骨接合術を行った16歳以上の62患者63肢を対象とした.性別,年齢,骨折型,開放骨折の有無,術後ドロップアウト率,骨癒合までの期間,偽関節率を調査した.【結果】男性34例,女性28例,平均年齢51.7歳,ドロップアウト率は27.0%(17症例),骨癒合までの平均期間は12.5か月,偽関節率は23.9%(11肢)であった.【結語】偽関節をきたしやすい大腿骨骨幹部骨折において術後ドロップアウト率が27%と高いことは問題である.「骨折難治症例カンファレンス」で骨癒合が得られていない症例を整形外科内で情報共有し,治療方針の意見交換することは,偽関節率の低下やドロップアウト予防につながるため有用であると考えられた.

  • 金江 剛, 池村 聡, 笹栗 慎太郎, 中尾 侑貴, 安原 隆寛, 由布 竜矢, 加藤 剛, 泊 真二
    2024 年 73 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【背景】大腿骨頚基部骨折は2011年ガイドラインで定義され,CT検査の進歩により診断精度が向上した.頚基部骨折は回旋不安定性を有し正確に診断し治療法を検討することが求められる.【目的】2021年1月~2023年1月までに当院で手術を行った大腿骨近位部骨折383例を対象とし,全例,X線およびCTで頚基部骨折の頻度を検討した.また,初診時の診断と比較も行った.【結果】大腿骨近位部骨折に占める頚基部骨折の割合は8.3%(34/383例)であった.初診時頚部骨折と診断された中で頚基部骨折が2.3%,転子部骨折には11.9%含まれていた.頚基部骨折に対する治療は骨接合術22例,人工骨頭挿入術12例で,骨接合術を行った2例が偽関節のため再手術となっていた.【結語】報告と同様,当科での検討でも頚基部骨折の術後合併症は,頚部骨折,転子部骨折に比べ高く,X線だけでなくCTを用いて診断,治療法を慎重に決定する必要があることを認識した.

  • 大隈 暁, 畠山 英嗣, 上村 涼太朗, 堀之薗 聡, 岡田 宗大, 杉木 暖
    2024 年 73 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【背景】大腿骨頚基部骨折は,骨頭骨片の術後回旋転位,それに伴う整復位損失,過度のslidingを生じる.【目的】上記骨折に対する骨接合後の骨頭骨片の回旋転位を,TFNA cement augmentationとCM nailで比較する.【対象】2019年1月から2022年11月に上記骨折に対し,DepuySynthes TFNA cement augmentation(T群)もしくは,ZimmerBiomet CM nail(C群)を使用し骨接合した25例(全て術翌日から荷重制限なし).T群4例,C群21例,平均年齢は82.3歳.【方法】福田らの分類で術後整復位を評価,術直後と術後2週の単純X線の正面像,又は,側面像で整復位が変化したものを骨頭骨片の回旋転位ありと定義した.【結果】骨頭骨片回旋転位をT群では0/4例,C群では7/21例で認め,C群で回旋転位が有意に多かった(p=0.014)【結論】大腿骨頚基部骨折において,TFNA cement augmentationは,CM nailより有意に骨頭骨片の回旋転位を制御できる.

  • ―48時間の壁を越えるには
    松下 隆義, 村岡 辰彦, 上野 宜功, 長谷 亨, 武村 秀孝, 竹内 潤, 田中 雄基, 山下 学, 市川 理一郎, 水島 正樹, 松尾 ...
    2024 年 73 巻 1 号 p. 54-56
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】高齢者大腿骨近位部骨折早期手術の必要性は論をまたず,早期手術加算が算定可能となったが施行は容易ではない.【目的】当院の大腿骨近位部骨折治療の現状を把握し改善点をさぐること.【方法】2022年4月-2023年3月に当院で加療を行った大腿骨近位部骨折632例のうち,75歳未満・受傷日不明・保存加療を除外した490例を対象とし,手術待機期間,受傷後48時間以内に手術できなかった症例の理由を調査した.【結果】受傷-手術は平均4.0日,受傷-手術(48時間以内)は150例(30.6%)であった.来院-手術は平均2.7日,来院-手術(48時間以内)は236例(48.2%)であった.受傷後48時間以上経過した理由としては,手術枠,来院時48時間経過,合併症の順であった.【結語】受傷48時間以内手術のためには当院来院まで,当院来院から手術までの両方を短縮しなければならない.

  • 橋詰 惇, 山下 彰久, 原田 岳, 渡邊 哲也, 太田 浩二, 大崎 佑一郎, 石田 彩乃, 木原 大護, 鶴 翔平
    2024 年 73 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    当院では過去10年間で背側脱出を4例経験したので報告する.症例概要:平均65(33-84)歳,男3女1例.30代~80代.症状は腰痛,下肢痛,下肢のしびれ,排尿困難であった.病変高位はL4/5 3例,L3/4 1例であった.いずれも膀胱直腸障害を認め,早期にヘルニア摘出術を施行した(うち1例は後方進入椎体間固定術を併用した).術後は下肢痛,しびれは全例で軽快した.膀胱直腸障害は3例で早期に消失したが1例は遺残した.硬膜管背側脱出型のヘルニアは重篤な麻痺症状や膀胱直腸障害を呈することが多い.硬膜外膿瘍や血腫との鑑別が重要であり,治療においては早期診断と早期ヘルニア摘出による硬膜管の除圧が重要となる.

  • ―FED-interlaminar法との相違点―
    泉 貞有, 井口 明彦, 今村 隆太, 濱田 貴広, 中村 公隆, 吉兼 浩一, 有薗 剛
    2024 年 73 巻 1 号 p. 60-62
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】MED法は低侵襲手術であるが,L5/S1ヘルニアに対するMED法で骨掘削が必要な症例の特徴を術前の腰椎正面Xpを評価して明らかにすること.【対象と方法】2009年から2022年まで,L5/S1ヘルニアに対するMED法を施行した207例を対象とした.術前の腰椎正面Xpでinterlaminar window(以下,ILw)の横径&高さ,腰椎MRIでヘルニアの位置・大きさを評価した.ドリルで骨掘削例(D群)とドリル使用なし例(N群)の2群に分けて比較した.【結果】MED法では骨掘削例(D群)は93.2%(193/207例)であり,FED法の7.1%(25/351例)と比較して有意に多かった.ILwの横径&高さはD群では平均27.3mm&10.9mm,N群では平均28.7mm&11.4mmであり両群間に有意差を認めなかった.【考察】MED法ではFED法と異なり,ILwの横径や高さは骨掘削の有無を規定する因子ではなかった.しかし,ILwが大きい症例(横径27mm以上かつ高さ11mm以上)ではドリル使用頻度は少なかった.MED法ではworking spaceや視野確保のためにILwの骨掘削を行っていると考えられた.

  • 中谷(高橋) 桜子, 仲里 翔太, 伊佐 智博, 金城 聡, 森山 朝裕, 大湾 一郎, 赤嶺 良幸, 親富祖 徹
    2024 年 73 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】デノスマブ投与による血清カルシウム(Ca)値の低下が,腎機能あるいは骨吸収活性の程度と関連がないかを検討した.【方法】骨粗鬆症に対しデノスマブを開始した男性5人,女性22人,平均78歳を対象とした.デノスマブ投与前後の補正Ca値の差をCa変化量とし,Ca変化量とeGFRあるいはTRACP-5bとの相関,eGFRとTRACP-5bとの相関を検討した.さらに,Ca変化量を目的変数,年齢,eGFR,TRACP-5bを説明変数として多変量解析を行った.【結果】補正Ca値は9.4 mg/dlから8.8 mg/dlへと有意に減少した.Ca変化量はeGFRと相関係数r=-0.49,TRACP-5bとr=0.69の相関を認めた.eGFRとTRACP-5b間には相関は認められなかった.多変量解析よりeGFRとTRACP-5bは血清Ca値低下の独立したリスク因子であると考えられた.【考察】腎機能低下だけでなく,骨吸収活性が亢進している患者ではデノスマブ投与後の低Ca血症に注意が必要と考えられた.

  • 飯田 倫太郎, 廣田 高志, 村岡 邦秀, 田中 秀明, 山本 卓明
    2024 年 73 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】手根管症候群(CTS)に対し鏡視下手根管開放術(ECTR)を行い,術中に採取した横手根靱帯の病理所見から最終的に多発性骨髄腫(MM)の診断に至った1例を経験したので報告する.【症例】約1年前からの両手のしびれを主訴に当科を受診,両側母指~環指橈側のしびれと知覚障害を認め,手根管入口部でのTinel徴候が両側陰性,Phalen test両側陽性,神経伝導速度検査では正中神経の運動神経終末潜時は右9.4ms,左9.1msと遅延を認め,両側CTSの診断でECTRを行った.術中に採取した横手根靱帯の病理所見はCongo-red染色が陽性でありアミロイド沈着を認めた.術後精査にて免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比の高値,尿中Bence-Jones蛋白を認めALアミロイドーシスが疑われた.血液内科にて骨髄穿刺が行われMMの診断に至った.【まとめ】手根管開放術を契機に診断されたMMの1例を経験した.手術における病理組織検査は全身性アミロイドーシスの早期診断に繋がることが示唆された.

  • 駒井 傑, 末永 賢也, 平田 正伸, 川口 雅之, 清原 壮登, 有薗 奬, 田山 尚久
    2024 年 73 巻 1 号 p. 71-72
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    大腿骨骨幹部骨折術後偽関節でプレート破綻を来した症例を経験し,当院の過去の大腿骨近位部骨折患者で似たような症例を検索したところ,骨粗鬆症治療の介入率が低いことが判明した.当院では大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療介入についてパスの作成を検討しており,当院の大腿骨近位部骨折後の骨粗鬆症治療介入の現状について調査し報告することとした.

  • 田邊 史, 寺原 幹雄, 村角 恭一, 井㞍 幸成, 河村 一郎, 冨永 博之, 谷口 昇
    2024 年 73 巻 1 号 p. 73-75
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】頚部神経根症に対しエコー下腕神経叢ブロックを施行してきたのでその治療成績を報告する.【方法】対象はブロック後3ヶ月以上経過した57名(平均年齢58歳,男38名,女19名).罹患神経根を調査し,治療成績は直前,直後,1ヶ月後,3ヶ月後のNRSで評価し,3ヶ月後NRSが3以下良好群,4以上不良群に分けて検討した.【結果】罹患神経根はC5根が5例,C6根が20例,C7根が9例,単一根に同定できない例が23例であった.NRSはブロック前7.1が直後1.8と直後から有意に改善した.3ヶ月後良好群は43例(75%),手術移行例は7例(12%)であった.良好/不良群では直後NRS(1.4/3.1),1ヶ月後NRS(2.2/5.9),年齢(56/64)で有意差を認めた.ヘルニア例の方が頚椎症例よりも有意に良好群が多かった.【考察】エコー下腕神経叢ブロックは神経幹,血管,肋骨が判読でき安全かつ簡便で,早期除痛が期待できる有用な治療法のひとつと考えられた.

  • ―片側固定 vs 両側固定―
    杉田 敏明, 飯田 圭一郎, 小早川 和, 幸 博和, 川口 謙一, 松本 嘉寛, 中島 康晴
    2024 年 73 巻 1 号 p. 76-83
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】環軸椎後方固定術(Magerl法)では片側固定にBrooks法などの後方ワイヤリングを併用することで固定性は十分とされているが,片側固定の手術成績ついての報告は限られており十分な検討は行われていない.【対象と方法】当院でMagerl法を施行し1年以上経過観察可能であった26例(片側固定11例,両側固定15例)について調査を行った.片側固定と両側固定の偽関節率について調査した.偽関節例については患者背景(年齢,既往,環軸椎不安定性),スクリュー設置位置を癒合例と比較し,その要因を検討した.【結果】偽関節率は片側固定27%(3/11),両側固定0%(0/15)で片側固定が高かった(p=0.03).偽関節は片側固定でのみ生じており,偽関節例は癒合例と比較しスクリュー設置位置が不良であった.【結論】Magerl法は骨癒合の面からは両側固定が望ましく,片側固定では良好なスクリュー設置が重要と考えられた.

  • 安水 眞惟子, 我謝 猛次, 寺西 裕器, 杉浦 由佳, 渡嘉敷 卓也, 金城 健, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 1 号 p. 84-91
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【症例1】9歳10か月女児.発症前はADL自立し,走れた.2か月前より誘因なく歩行困難となり当科へ紹介となった.受診時には歩行不能であった.【症例2】9歳男児.自覚症状はないが,転校を機に受診となった.痙性歩行であるが,小走り可能.筋力低下や感覚障害ははっきりしないが,両側下肢の深部腱反射の亢進を認めたため,脊髄症状が疑われた.2例とも頚椎X線像で環軸椎不安定性,CTで歯突起骨,MRIでは環椎高位の脊髄圧迫と脊髄内の信号変化を認め,環軸椎不安定症による脊髄症と診断した.脊髄症の改善を目的に,環軸椎後方固定術を施行し,術後8週間はハローベスト固定を追加した.現在,術後3年以上経過しCTで骨癒合を認め,頚部の回旋制限を認めるが,ADLは自立し小走りが可能である.ダウン症に伴う環軸椎不安定症は,脊髄症状が明らかである場合と症状が軽くても不安定性の強い症例には固定術が必要であると考えた.

  • 菅野 真未, 髙村 和幸, 柳田 晴久, 山口 徹, 中村 幸之
    2024 年 73 巻 1 号 p. 92-94
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児の鎖骨偽関節は,外傷性偽関節や先天性偽関節症などがあるが,いずれも頻度は稀である.今回,小児の鎖骨外傷性偽関節が疑われた1例に対する手術加療を経験したので報告する.【症例】3歳10か月女児.右鎖骨部の突出に気付かれ,外観上の問題から手術を希望され当科紹介初診.明らかな外傷歴はなく右鎖骨部に膨隆を触知し圧痛などは認めなかった.画像上,右鎖骨遠位骨幹部偽関節を認め,偽関節手術を施行した.偽関節部は瘢痕化した線維性組織が充満しており,鎖骨骨折後の外傷性偽関節であった可能性が高いと考えられた.偽関節部を新鮮化しK-wire 2本で固定し,腸骨骨移植を施行した.術後骨癒合は良好であった.【考察】術前に外傷性鎖骨偽関節と先天性鎖骨偽関節症の鑑別は困難であった.先天性鎖骨偽関節症では偽関節部は軟骨で覆われているため,本症例は外傷性鎖骨偽関節の可能性が高いと判断した.

  • 生田 拓也, 小笠原 正宣, 壷井 広大, 佐藤 翔太, 長田 宗大
    2024 年 73 巻 1 号 p. 95-97
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    脛骨近位端骨折において後外側骨片の整復および固定を必要とする骨折型に対して腓骨を骨切りして手術を行ったので報告した.症例は3例で,性別/年齢はそれぞれ女性70歳,女性76歳,男性38歳であった.AO分類に従うといずれもB3で後外側に骨片の転位を伴っていた.また1例においては骨幹部の骨折を併発していた.腓骨頭部を骨切りして脛骨後外側を展開し整復固定を行った.全例において骨癒合が得られたが,1例においては関節面の陥没が残存した.Hohlの評価基準によると解剖学的評価は,優,良可が1例ずつ,機能的評価は優1例,良2例であった.後外側に転位した骨片を整復固定する必要がある骨折型において,本法は抜釘を行う場合に煩雑であるという問題点は存在したが,脛骨後方外側骨片の整復および固定には有用な方法である.

  • 伊藤 輝, 伊東 孝浩, 千住 隆博, 上田 幸輝, 内村 大輝, 水城 安尋
    2024 年 73 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【背景】内側楔状開大式脛骨粗面下骨切り術(Open Wedge Distal Tibial Osteotomy;OWDTO)の合併症の一つとして脛骨粗面での骨折がある.今回,術後に脛骨粗面だけでなく関節面に及ぶ骨折を生じた症例を経験したので報告する.【症例】63歳男性.168cm,90kg.右変形性膝関節症に対しOWDTOを施行した.術後3日目でせん妄症状が出現し,患側に全荷重負荷がかかった.X線で脛骨粗面から関節面に至る骨折を認め,術後10日で脛骨粗面部の骨接合を追加した.後療法は通常より遅らせた.【考察】脛骨粗面より関節面に及ぶ骨折は過去に報告を認めない.本症例ではAPスクリューの挿入位置不良と,術後早期の全荷重負荷が脛骨粗面骨折を引き起こし,かつ脛骨粗面部の厚みは十分であったため結果的に関節面に至る骨折となったと考える.【結語】OWDTO後に,脛骨粗面より関節面に及ぶ稀な骨折を経験した.APスクリューの挿入位置と術後早期の過度な荷重が今回の骨折に影響している可能性が示唆された.

  • 堀川 朝広, 樽美 備一, 富野 航太, 今村 悠哉, 平井 奉博, 山下 武士, 緒方 宏臣
    2024 年 73 巻 1 号 p. 103-105
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    当科では単顆型人工膝関節置換術(UKA)において脛骨インプラントは機能軸に対して3°内反設置を目指しており手術手技は脛骨骨切りに基づくgap techniqueを用いている.【目的】脛骨骨軸を指標にした従来法(マニュアル法)とポータブルナビゲーションを用いた脛骨骨切りにおいて内反骨切りの正確性を比較すること.【対象と方法】2020年4月から2023年3月までに施行したUKA 26膝を従来法(M群)16膝とポータブルナビゲーションを用いた群(P群)10膝に分けX線学的に脛骨インプラントの設置角度を測定した.【結果】M群の平均内反角度は2.50°に対してP群では0.98°と低値を示した.また3°以上のoutlierはM群ではみられなかったがP群では3膝(30%)みられた.【考察】UKAにおいて正確な骨切りは肝要である.ポータブルナビゲーションにおいて目標の脛骨骨切り内反角度を得るためには足関節中心位置の設定に工夫が必要と考えられた.

  • 石原 和明, 森田 恭史, 福永 幹, 北島 潤弥, 小薗 敬洋, 栗原 典近
    2024 年 73 巻 1 号 p. 106-108
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    2017年4月から2022年3月で転移性脊椎腫瘍128名を対象とし,カルテレビューにて原発巣,治療内容等について調べた.対象の平均年齢70.6歳,男性82名,女性46名が対象であった.上位3つの原発巣は肺癌56例,乳癌17例,腎癌12例,多発性骨髄腫12例であった.治療内容としては,手術療法が2例(後方固定)放射線療法が69例,骨修飾薬が41例(ゾメタ18例,ランマーク23例),整形外科の介入は43%の55例であった.今回整形外科の転移性脊椎腫瘍に対する介入率43%であった.また,当院の課題としてスクリーニングの拡張と院内の仕組みづくりが挙げられた.キャンサーボードの設立はこれらの解決策となりうる可能性がある.

  • 山家 健作, 赤堀 圭一, 尾﨑 まり, 永島 英樹
    2024 年 73 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【症例】16歳女性,高校1年生.腓骨近位骨肉腫に対する治療のため9カ月間入院した.入院後より,病室で分身ロボット「OriHime」を利用したライブ遠隔授業に参加し試験も受けた.進級に必要な単位を取得し留年することなく2年生に進級した.【考察】以前は悪性腫瘍などで長期入院が必要な高校生は留年や退学を余儀なくされていた.平成27年に学校教育法施行規則の一部が改正・施行され,病気療養のため長期間欠席する高校生が学校以外の場所でメディアを利用して行う授業(遠隔授業)を受けることができるようになり進級,卒業も可能となった.本手法は進級,卒業を可能とするばかりではなく,学校や友人とのつながりを維持し治療にも前向きに取り組めるなど心理面での利点も多いと考えられる.近年の通信環境の発達で本手法の導入が容易となってきているが,学校側の協力や体制整備も必要であり今後の課題である.

  • ―エコー所見を含めた自然経過―
    田口 学
    2024 年 73 巻 1 号 p. 112-115
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】特発性前骨間神経麻痺の病因,自然経過などは未だに不明な点が多く,「神経束のくびれ」は麻痺の原因の1つと考えられている.今回,神経束のくびれを伴う特発性前骨間神経麻痺1症例の超音波画像検査(以下エコー)所見を含めた自然経過を報告する.【症例】51歳,女性.数日前に缶の蓋を開けるときに左手に力が入らないことに気づいたために受診した.しびれや知覚鈍麻は認めなかった.左母指IP関節屈曲は可能(MMT4)だが,左示指DIP関節屈曲が不能(MMT0)であった.エコー所見では,肘屈曲皮線の近位2cmに正中神経の神経束にくびれを認めた.母指屈曲が可能であることから保存療法を希望されたため,臨床症状及びエコーによる経時的観察をおこなった.発症後11ヶ月で麻痺の回復兆候を認め,34ヶ月では左示指DIP関節屈曲はMMT5まで回復した.エコー所見では,くびれ率は発症後1ヶ月:0.73,発症後34ヶ月:0.53と改善,中枢の神経束腫大部の太さも発症後1ヶ月:2.2mm,発症後34ヶ月:1.8mmと改善したがまだ残存していた.【結語】麻痺の回復とくびれの改善には関連があると思われるが,麻痺が完全回復したにもかかわらず神経束のくびれや腫大は残存しており,時間的なラグが存在すると思われた.

  • 田中 稔一郎, 吉田 健治, 田中 康嗣, 松原 庸勝, 長野 絵里子, 中村 英智, 平岡 弘二
    2024 年 73 巻 1 号 p. 116-119
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【症例】41歳,男性.既往歴:SLE.主訴:両側中指弾発現象.現症:屈曲時に両側中指EDCが尺側へ脱臼し右は疼痛があった.手指伸筋腱脱臼のRayan&Murray分類TypeⅢと診断し,右に対して手術を施行した.術中所見は中指EDCが尺側へ完全に脱臼し,示指EDCとEIPはsplitしEDCが橈側へ偏位した.中指をWheeldon法で修復し,示指はEDC/EIP間を縫合した.術後2日目よりROM訓練を開始したが,術後2週で再脱臼し再手術を行った.Kangらの方法に準じて腱移植を行った.術後2日目よりROM訓練を開始した.術後11ヶ月,伸筋腱の再脱臼や可動域制限は認めていない.【考察】リウマチ性疾患による中指伸筋腱脱臼は,軟部脆弱性があり再脱臼の原因となる可能性がある.脆弱化した軟部組織に縫合する方法では強度不良と考えられ,軟部組織の強度に依存しない強固な修復を行うことが重要と考えられた.

  • 中沢 不二雄
    2024 年 73 巻 1 号 p. 120-122
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    尺骨遠位端骨折は大抵橈骨遠位端骨折に合併し,橈骨遠位端骨折が適切に整復固定されると,尺骨遠位端骨折は保存的に加療されうる.今回当院における橈骨遠位端骨折手術に合併した尺骨遠位端骨折の治療成績を検討した.2014-2022年,当院橈骨遠位端骨折手術1542例に合併した茎状突起骨折を含む尺骨遠位端骨折760例.尺骨遠位端骨折の内,茎状突起単独骨折722例中33例手術が施行され2例に偽関節を生じた.一方茎状突起単独骨折を除く尺骨遠位端骨折は224例で,治療は尺骨に対し手術無し60例,鋼線固定術71例,プレート固定術93例であった.茎状突起単独骨折を除く尺骨遠位端骨折224例中骨癒合遷延例は22例21名に見られ,手術無し5例,鋼線固定術6例,プレート固定術11例であった.尺骨遠位端骨折骨癒合遷延例21名は,男3名平均年齢61.0歳,女18名平均年齢84.6歳で,高齢女性が多かった.

  • 田中 一成, 島内 卓, 巣山 みどり, 髙橋 祐介, 酒井 隆士郎, 野口 康男, 江口 正雄, 酒井 健次
    2024 年 73 巻 1 号 p. 123-127
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】比較的まれな坐骨結節剥離骨折の1例を経験したので報告する.【症例】15歳男子.運動会のリレー競技で走り始めに左臀部に轢音を感じ,疼痛にて走行不能となった.同日当院を受診.左股関節・膝関節屈曲位にてtoe touch歩行.左坐骨に圧痛があり,X線にて左坐骨結節が剥離しており2cmの転位を認めた.受傷後9日目に観血的骨接合術を施行した.腹臥位にて坐骨外側に10cmの縦切開を加えアプローチした.骨片はcannulated cancellous screw 3本で固定した.術後は段階的に荷重を増やす予定としていたが患者コンプライアンス悪く,術後2週で全荷重歩行し,術後12週で全力走を行っていた.X線では骨折部の転位なく経過した.【まとめ】坐骨結節剥離骨折に対する治療法は,一定のコンセンサスは得られていないが,本症例では手術療法で良好な経過が得られた.文献的考察を加えて報告する.

  • 土居 満, 田口 憲士, 太田 真悟, 西野 雄一郎, 朝永 育, 池永 仁, 尾﨑 誠
    2024 年 73 巻 1 号 p. 128-130
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】フレイルチェストを伴う多発肋骨骨折に対する早期内固定の有用性はこれまでにも報告されている.当院では2017年より骨接合術を開始し,現在では症例によってはフレイルチェストを伴わない多発肋骨骨折に対しても手術を行っている.適応と考える症例には早期手術を目指しており,その結果について報告する.【対象】2017年9月から2022年12月までに当院で手術を施行した肋骨骨折患者20名.2021年3月までのKANIプレート使用期間を前期,それ以降のMatrixRib使用期間を後期とした.結果男性8例,女性12例で平均年齢は73.3歳であった.フレイルチェスト14例,多発肋骨骨折6例であった.使用したインプラントは10例ずつであった.手術待機日数は前期で3.3日,後期で2.2日と後期が早い傾向にはあったが有意差は認めなかった.【まとめ】肋骨骨折に対する早期内固定を行っており,今後は有効性や適応をさらに検討し症例を重ねていく必要があると思われた.

  • 井上 三四郎
    2024 年 73 巻 1 号 p. 131-133
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【症例の概要】症例は5例である.年齢は70~85歳(中央値82歳),男性1人女性4人であった.5例中3例は休日時間外受診であり,3例とも当直医が初療にあたった.5例中2例は平日時間内受診であった.2例のうち1例は救急救命科医と一緒に初療にあたった.もう1例の初療医は開業医(整形外科医)であり,当院の整形外科医および救急救命医に引き継いだ.当直医が整形外科医であった1例以外は,初療医が暫定診断を下し整形外科医に引き継いだ.4人の暫定診断名は脊椎圧迫骨折3例と下肢麻痺1例であった.【結語】整形外科医は大動脈解離について学ぶ必要がある.

  • 冨田 伸次郎, 貝田 英二, 宮崎 洋一, 宮路 剛史, 浅原 智彦
    2024 年 73 巻 1 号 p. 134-135
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    当院における大腿骨近位部骨折の治療状況につき報告する.対象は2021年に当院で施行された65歳以上の大腿骨近位部骨折手術症例92例94骨折である.48時間以内手術例35例(以下早期群)と48時間を超えた手術例59例(以下待機群)で検討を行った.平均年齢と性別では早期群86.9歳で男性4例・女性31例,待機群85.1歳で男性9例・女性50例であった.手術方法では人工骨頭置換術,short femoral nail,sliding hip screwの順で早期群では9例,24例,2例で,待機群では33例,21例,5例であった.48時間以内に手術施行不可の理由では(重複あり),手術体制26例,受診の遅れ18例,休祭日16例,全身感染症3例,DOACの中止2例,その他3例であった.退院時の自宅復帰率では早期群28.6%,待機群22.0%であった.QOL向上のため早期手術を行うことが有効と示唆された.

  • 金城 英樹, 山口 浩, 当真 孝, 呉屋 五十八, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 1 号 p. 136-139
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】腱板断裂に対する大胸筋腱移行術後の腱板修復状態を直視下に確認した報告はない.上腕骨近位部骨折に対する骨接合術の際に,大胸筋腱移行術後の腱板修復状態を直視下に確認できた1例を経験したので報告する.【症例】4年前,左肩腱板広範囲(肩甲下筋・棘上筋・棘下筋)断裂に対して腱板修復および大胸筋腱移行術を施行した.1年前自宅で転倒,左肩を強打し受傷した.翌日当科を受診し,単純X線像で上腕骨近位部骨折(Neer分類2-part)を認めた.順行性横止め髄内釘を用いて骨接合を施行した.手術時,上方アプローチを用いて腱板へ到達.移行した大胸筋は肉眼的には正常部分の腱板と同様な乳白色組織に覆われていた.術後1年2カ月で術後MRI上腱板連続性を認め,関節可動域(R/L)屈曲140°/110°,外旋70°/60°,内旋L1/L1,JOAスコア87点であった.【結語】大胸筋腱移行術後の腱板修復状態を直視で確認することができた.移行した大胸筋は肉眼的には正常部分の腱板と同様な乳白色組織に覆われていた.

  • 樽美 備一, 山下 武士, 高島 佑輔, 堀川 朝広, 平井 奉博, 今村 悠哉, 富野 航太, 緒方 宏臣
    2024 年 73 巻 1 号 p. 140-143
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】上腕骨解剖頚骨折を伴う肩関節脱臼骨折は単純X線検査のみでは診断困難な事が多く,徒手整復を行い転位が拡大する症例も存在する.今回同様の症例を経験したので報告する.【症例1】74歳,女性.転倒し左肩を受傷され前医を受診.解剖頚骨折に気づかず徒手整復され解剖頚骨折の転位が拡大し当院紹介.後日リバース型人工関節置換術を施行し,術後1年,問題なく日常生活を送っている.【症例2】94歳,女性.転倒し右肩を受傷.前医へ救急搬送され解剖頚骨折に気づかず徒手整復され解剖頚骨折の転位が拡大し当院紹介.緊急で観血的脱臼整復術を施行し,後日リバース型人工関節置換術を施行.術後10ヶ月,問題なく日常生活を送っている.【結語】整復時骨折のリスクを評価後,骨折(転位)の可能性を説明し,リスクが高い症例では精査を検討する必要があり,徒手整復を行う際は適切な徐痛,鎮静下で愛護的な徒手整復を行うことが重要と考える.

  • 吉川 誉士郎, 山口 浩, 呉屋 五十八, 当真 孝, 森山 朝裕, 西田 康太郎
    2024 年 73 巻 1 号 p. 144-147
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    併存症のある高齢者に発生した上腕骨骨頭骨折に対して保存療法を行った2例について報告する.【症例1】74歳,女性.自宅で転倒,右肩を強打し受傷.既往に心房細動があり,保存療法を選択した.スリング・バストバンド固定を6週,6週以降スリング固定,仮骨確認後の8週より肩関節可動域(ROM)訓練を開始.受傷後5カ月,単純X線像で変形癒合を認め,受傷後30カ月のROMは屈曲140度,外旋60度,内旋L1,JOA scoreは86点であった.【症例2】75歳,女性.段差に躓き,右腕で体重を支えながら転倒し受傷.コントロール不良の糖尿病があり保存療法を選択.外転装具固定を8週,仮骨確認後の10週よりROM訓練を開始した.受傷後16カ月,単純X線像で変形癒合を認め,受傷後16カ月のROMは屈曲120度,外旋30度,内旋L3,JOA scoreは83点であった.【結語】2例とも比較的良好な結果が得られた.

  • 蛯原 宗大, 濱田 貴広, 中村 公隆, 井口 明彦, 泉 貞有, 今村 隆太, 井上 隆広, 井上 逸人, 黒木 陽介, 有薗 剛
    2024 年 73 巻 1 号 p. 148-151
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】一般に上腕骨小結節骨折は,4part fracture等の上腕骨近位端骨折や肩関節後方脱臼の際にみられ,単独骨折は稀であるとされている.我々は,単独での上腕骨小結節剥離骨折の1例を経験し,手術的に加療したので報告する.【症例】63歳女性.自転車走行中に転倒し左上腕部を受傷した.受傷翌日当院受診し,受傷後6日目に,全身麻酔下での骨接合術を行った.三角筋大胸筋アプローチにより進入し,上腕を外旋させ骨折部を展開した.内旋位で整復位良好となりCCSにワッシャーを用いて固定した.術後は4週間外旋15度までの制限とし,その後から制限なくROM訓練を開始した.術後4ヶ月で骨癒合は得られ,外旋は45度まで可能であった.【考察】上腕骨小結節骨折は比較的稀な骨折であり,受傷時の単純レントゲンのみでは見逃されやすく,陳旧例となったのちに診断されることもあり注意を要する.本症例ではCCSで十分な安定性が得られ,良好な成績が得られた.

  • 高橋 洋平, 安部 幸雄, 伊藤 洋輝, 藤澤 武慶, 武藤 正記, 淺野 圭, 片岡 秀雄
    2024 年 73 巻 1 号 p. 152-155
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    緒言:投球動作による上腕骨骨幹部骨折は自家筋力による骨折として代表的である.当科で経験した投球骨折の2例を報告する.症例1:27歳男性.草野球チームのピッチャーで右投げ.投球時,コッキングの瞬間に礫音とともに右上腕に激痛を生じた.単純X線撮影で右上腕骨骨幹部遠位1/3の螺旋骨折を認めた.神経血管損傷を疑う所見はなかった.受傷後5日でLocking plateでの骨接合を行なった.術後17週で骨癒合し術後6か月で野球に復帰した.症例2:25歳男性.草野球チームのピッチャーで左投げ.投球時,腕を振り下ろす瞬間に礫音とともに左上腕に激痛を生じた.単純X線撮影で左上腕骨骨幹部中央から遠位1/3にかけて屈側に第3骨片を伴う斜骨折を認めた.受傷後4日でLocking plateでの骨接合を施行し,術後20週で骨癒合した.考察:2例の骨折部位,骨折型の違いは骨折を生じた投球フェイズやフォームの違いによるものと考えられた.

  • 土持 兼之, 藤原 悠子, 柳田 隆宏, 坂本 幸成
    2024 年 73 巻 1 号 p. 156-160
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    ビスホスホネート製剤(以下BP製剤)長期投与中に生じた比較的稀な非定型尺骨骨幹部骨折の1例を経験し,第141回西日本整形・災害外科学会学術集会にて報告した.術後経過観察中偽関節の診断にて腸骨移植を併用した再手術が必要となったので追加報告する.BP製剤内服歴19年,77歳女性,屋外歩行中転倒し,右前腕を打撲し受傷.受傷後18日目に当院紹介初診.非定型骨折の診断にてBP製剤内服中止とし,ロッキングプレートで内固定を行った.また超音波骨折治療およびテリパラチド連日投与開始した.経過観察中偽関節の診断にて術後14ヶ月で自家骨移植を用いたロッキングプレートによる内固定を行った.またテリパラチド継続及び超音波骨折治療再開した.再手術術後6ヶ月で骨癒合得られた.自家骨移植を併用した内固定で比較的短期間で骨癒合得られたことから,初回手術時に自家骨移植を併用した内固定を考慮すべきだったと考える.

  • 岡部 成倫, 吉田 史郎, 北川 光, 脇田 将嗣, 草場 宜宏, 赤塚 孝太, 岡崎 真悟, 戸次 将史, 森山 弘朗, 井手 洋平, 神 ...
    2024 年 73 巻 1 号 p. 161-164
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    観血的脱臼整復が必要であったMonteggia骨折の1例を経験したので報告する.症例は6歳 女性.スケボー中に転倒し左手をついて前医を受診した.Monteggia骨折の診断で当院へ紹介となった.鎮静下に徒手整復を試みたが整復は困難で,観血的に整復を行う方針とした.外側アプローチで長橈側手根伸筋と腕橈骨筋の間に橈骨頭が穿孔し外側に脱臼しており,筋膜を近位に切離延長し橈骨頭を整復した.整復後に亜脱臼がみられ輪状靭帯が関節に嵌頓していたため,輪状靭帯を縦切し橈骨頭を整復した.尺骨は粉砕しており,Kwire 2本を髄内釘として整復した.術後5ヶ月で骨癒合が認められ抜釘を行い,肘関節の可動域は伸展10°,屈曲150°回内80°回外90°であり脱臼の再発はない.亜脱臼位のMonteggia骨折は断裂していない輪状靭帯により整復が困難になっている可能性が考えられる.輪状靭帯の陥入の可能性を念頭に置き,橈骨頭の完全な整復位が得られているかを慎重に評価する必要がある.

  • 山本 雅俊, 千住 隆博, 伊藤 輝, 亀山 みどり, 伊東 孝浩, 上田 幸輝, 内村 大輝, 水城 安尋
    2024 年 73 巻 1 号 p. 165-169
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    当院では高齢者肘頭骨折に対し,強固な固定を目的にプレート固定を行ってきたが,術後に近位骨片の再転位proximal cutout(以下PC)を生じた2例を報告する.症例1:71歳,男性.Mayo分類Type2A.ALPS Plate(Biomet)で固定.術後2週でPCを認め,VA-LCP Olecranon Plate(Synthes)を用い再固定.術後1ヶ月で表層感染し洗浄デブリドマンを行い,最終的に骨癒合した.症例2:76歳,女性.Mayo分類Type1A.VA-LCP Olecranon Plateで固定.術後1週でPCを認め,VA-LCP Proximal Olecranon Plateを用い再固定した.術後3週で,プレート遠位部で骨折し,プレート追加固定後骨癒合した.【考察】術後再転位のリスクとして,骨脆弱性,近位骨片の薄さ,骨片内の骨折が考えられた.上記症例の場合,伸展制限や皮膚トラブルのリスクを踏まえた上でより近位までスクリュー挿入可能なプレートを選択するか,あるいは破断強度の高い縫合糸を用いた上腕三頭筋の補助縫合,Tension band Wiring(TBW)やCannulated Cancellous Screw(CCS)の併用も考慮する必要があると考えられた.

  • 鈴木 真由佳, 原 正光, 戸次 大史, 櫻庭 康司, 津嶋 秀俊, 藤原 稔史, 中島 康晴, 福士 純一
    2024 年 73 巻 1 号 p. 170-173
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    2020年の関節リウマチ診療ガイドラインでは,人工足関節全置換術(total ankle arthroplasty,TAA)は足関節固定と同等レベルの推奨とされているが,実臨床においては足関節固定術が第一選択とされることが多い.当院ではRA足関節障害に対し外側侵入型TAA(TM ankle)を用いた治療を行なっており,今回この使用経験について報告する.2019~2022年に関連施設でTAAを行ったRA患者6例6足を対象に,足関節可動域,術後合併症,JSSFスコアについて検討した.術後最終経過観察時のJSSFは術前より有意に改善していた.可動域の合計は平均29.2°であった.合併症は2名で外果プレートに感染を生じたが,人工関節そのものに感染は至らず,またインプラントのゆるみは発生していない.RA足関節障害に対し外側進入型TAAを施行し,短期ではあるが良好な成績を得ており,今後足関節固定術に変わる手術法として期待できると考える.

  • 古賀 幹朗, 蓑川 創, 野村 智洋, 坂本 哲哉, 小阪 英智, 柴田 陽三, 伊﨑 輝昌
    2024 年 73 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    距骨下関節脱臼は,全外傷性脱臼中約1%程度と報告され稀な外傷である.今回我々は,距骨後方突起骨折を伴った距骨下関節脱臼の症例を経験したので報告する.症例は32歳,男性.1mほどの高さのユンボから飛び降りて左足を受傷.単純X線,CTで距骨後方突起骨折を伴った内側型の距骨下関節脱臼を認めた.徒手整復が困難な場合もあるため,円滑に観血的整復術に移行できるように,受傷同日,腰椎麻酔下での非観血的整復術を行った.しかし,整復後のCTで,距骨後方突起の骨折部の転位が4mm残存していたため,後内側展開でDTJ mini screwを用いて二期的に骨接合術を施行した.最終経過観察時の単純X線と単純CTでは,骨癒合は良好であり,関節症性変化は認めなかった.機能障害もなく,術後成績も良好であり,積極的に解剖学的整復を目指す骨接合術が望ましいと考えた.

  • 武村 秀孝, 村岡 辰彦, 松下 隆義, 田中 雄基, 山下 学, 竹内 潤, 松山 順太郎, 松尾 卓見, 上野 宜功, 米盛 公治
    2024 年 73 巻 1 号 p. 178-180
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    当院での踵骨骨折に対する外側小皮切でのスクリュー固定術の治療成績について検討した.対象は外側小皮切でスクリュー固定を行った10例11足(男8足,女3足,平均年齢63歳)とした.主要評価項目を創部合併症の有無,術後のSAFE-Qスコア,術前後のBöhler角.副次評価項目を関節面の整復保持,手術待機日数,手術時間,合併症として調査を行った.結果,創部合併症を認めた症例はなかった.平均Böhler角は術前7度,術術直後22.4度,術後3カ月20.1度,術後6カ月17.5度であった.平均SAFE-Qは3カ月74.5点,6カ月86.9点であった.平均手術待機日数は6.4日,平均手術時間は80.7分,手術合併症は再手術症例の1足であった.踵骨骨折の手術療法において,外側小皮切によるスクリュー固定は軽度の整復損失はあるものの,創部合併症なく,短期臨床成績は良好であった.

  • 有薗 奨, 川口 雅之, 平田 正伸, 清原 壮登, 駒井 傑, 田山 尚久, 末永 賢也
    2024 年 73 巻 1 号 p. 181-183
    発行日: 2024/03/25
    公開日: 2024/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】受傷機転のない両側アキレス腱断裂は比較的稀である.今回その1例を経験したので報告する.【症例】75歳男性.既往は2型糖尿病,高血圧,慢性皮膚疾患.起床時より左足関節痛を認め,左アキレス腱断裂の診断にて近医より紹介となった.翌日,右足関節痛の訴えあり右アキレス腱にも断裂所見を認めた.外科的加療の方針としたが,HbA1c 9.5%と血糖コントロール不良であったため血糖管理を行い,受傷後20日で両側アキレス腱縫合術を施行した.陳旧性断裂の所見であったが,腱の短縮は認めなかったため端々縫合を行った.腱断端の組織学的所見は明らかな炎症所見のないfibro-tendinous tissueを呈していた.術後4週はシーネ固定にて免荷とし,以降アキレス腱装具装着のうえ部分荷重を開始している.【結語】受傷機転のない両側アキレス腱断裂の1例を経験したので報告した.

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