2024 年 73 巻 3 号 p. 525-528
橈骨頭に発生した骨軟骨腫により後骨間神経麻痺を生じた稀な症例を経験したので報告する.【症例】39歳女性,5か月前から誘引なく左母指伸展障害が出現したため,近医より当科紹介となった.徒手筋力検査は左母指伸展2,示指伸展3と筋力低下を認めたが,中指環指小指の伸展筋力と手関節背屈筋力は保たれており,知覚障害は認めなかった.動的腱固定効果では母指,示指ともに伸展可能であった.単純Xp,MRIで橈骨頭に骨性隆起を認め,この骨性隆起による後骨間神経麻痺と考えた.骨性隆起病変を切除したところ,病理所見で骨軟骨腫と診断された.後骨間神経麻痺は術後1か月頃より徐々に改善し,術後6か月で軽快した.【結論】橈骨頭に発生した骨軟骨腫により後骨間神経麻痺を生じた1例を経験した.後骨間神経麻痺は骨軟骨腫の切除により速やかに改善した.占拠性病変による後骨間神経麻痺に対しては手術加療が望ましいと考えられた.