2005 年 102 巻 5 号 p. 544-551
鉄は,赤血球のヘモグロビン合成,各種細胞内の酸化還元反応,細胞の増殖・アポトーシスなどに関与する重要な金属である.鉄イオンは,2価と3価を行き来するが,その過程でROS(Reactive Oxygen Species)を産生し,特に2価の自由鉄が過剰に存在すると極めて毒性が強く,細胞障害の原因となる.C型慢性肝炎では,肝細胞に鉄過剰蓄積があり,過剰蓄積した鉄を介したフリーラジカルにより肝細胞障害,さらに,DNA障害による発がん過程の進行が示唆されている.C型慢性肝炎に対する瀉血療法は,1994年にはじめてHayashiらが報告し,その後国内外でその有用性が確認されている.瀉血療法は直接的な抗ウイルス効果は認めないが,血清ALT値を有意に改善させ,IFN療法無効例・適応外症例において有効な治療法である.