日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
総説
慢性膵炎の合併症と長期予後
大槻 眞
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2006 年 103 巻 10 号 p. 1103-1112

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抄録

慢性膵炎患者が医療機関を受診する最も頻度が高い原因は腹痛であるが,腹痛を慢性膵炎の合併症とするには問題がある.慢性膵炎の合併症は機能的合併症だけではなく,器質的合併症があり,さらに膵内に生ずる合併症と膵の周辺臓器に及ぶ合併症などがある.膵内の主な器質的合併症としては,膵石灰化(膵石),膵仮性嚢胞,膵癌があり,膵外合併症としては,膵性胸·腹水や胆道·消化管狭窄,消化管出血,膵以外の悪性腫瘍などがある.機能的合併症としては,消化不良と糖尿病がある.アルコール性慢性膵炎では非アルコール性慢性膵炎に比べ,膵石灰化,膵仮性嚢胞,糖尿病などの合併症の発症頻度が高い.慢性膵炎患者における膵癌発症率は一般人口の2倍から26倍までの報告がある.慢性膵炎の成因に関係なく罹病期間が長くなると膵癌が発症するが,膵癌が発症するまでには30∼40年慢性炎症が続く必要がある.慢性膵炎の進展を阻止するには禁酒を守らせるなどの患者教育が重要である.

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© 2006 (一財) 日本消化器病学会
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